マンション管理Q&A
マンション管理組合関係
Q.自身のマンションで収益向上の取り組みにつき提案しているのですが、管理会社からは「税務申告も考慮する必要がございますので、税務申告が必要になります。収益に対しておおよそ20%、税理士報酬は弊社の協力会社でも55,000円が発生します。」とネガティブな発言が出てます。
他の管理組合でも税務申告されているものなんでしょうか。
A.
管理会社からの助言の通りに管理組合の収益事業に関しては原則的に納税しなくてはなりません。収益事業の収益がありながら納税していないことが発覚すれば、過去の遡りだけではなく追徴課税も課される可能性もあるかと思います。収益事業を開始する場合には税理士などに納税業務を委託し、しっかりと納税するようにして下さい。
但し、駐車場の空き区画を数カ月間だけ一時貸出しをするような場合(管理組合側からの募集ではなく、貸主側からの要望の場合)には、非課税となるなどの一部例外もありますので、管理会社やマンション管理士などに相談してみて下さい。
Q.増圧給水ポンプの水漏れに伴う修理で管理会社から見積を頂いてます。もっと修理費を安くするか、全ユニット交換しかないと思ってますが、管理会社が勧める会社でいいか疑問があります。
また、防犯カメラも16年目を迎えていてかなり砂嵐状態になっていて交換の提案を管理会社から受けてます。
他社の見積り取得をした方が良いのか?良いのであれば取得の方法などについて教えてもらえると嬉しいのですが。
A.基本的に高額な修繕費用が発生する場合は、人命に関わり早急に修理する設備などでない限りは、必ず相見積書を管理組合側が自ら取得することをお勧めしています。
業者はインターネットを活用して該当マンション周辺の業者を探してホームページより問合せして見積りを取得する流れが多いです。
ただし、多くの業者は現地調査を打診してきます。そのため、管理組合側で取得する相見積もりに対して管理会社の担当者に立ち会い依頼をするわけにはいきませんので、現地調査の立ち会いをする必要もでてきます。
複数社への相見積りの場合は、一旦概算見積もりを提示してもらい、概算見積もりで比較検討して依頼する業者を選定してからその選定業者のみに現地調査をしてもらうなどの対応も良いかと思います。
最後に、どのような相見積もりでも管理会社の担当者に任せることは禁物です。
それなりの労力と時間は管理組合側が費やすこととなりますのでご留意ください。
Q1.マンション管理組合にて損害保険の更新時期になり、見積書が出てきたのですが、個人賠償責任保険と施設賠償責任保険が含まれています。
マンション管理組合として施設賠償責任保険は必要かと思いますが、個人賠償責任保険まで入るのは一般的なのでしょうか。
各社価格には違いがありますが、個人賠償責任保険の保険料は施設賠償責任の3~4倍になっています。
一般的には区分所有者毎に火災保険や施設賠償責任保険への加入していると思うので、上記の個人賠償責任保険は要らないのでは?という疑問があります。
A1.
個人賠償保険は基本的には区分所有者や居住者が個別に加入していれば必要ないように思います。
ただし、個人で加入していなかった場合に、ケースは非常にまれだとは思いますが、もめることはあるかもしれません。そもそも保険はもしものためのものですので。
管理組合が加入する損害保険は個人で加入する保険と適用条件が異なり、かなり限定的なこともあるのでよく理解して加入することが適切です。特に地震保険はかなり高額でありながら非常に限定的なので注意が必要です。
逆に今後も理事としてご自身が積極的に活動するようであれば、管理組合役員賠償特約(役員が訴えられた場合の弁護士費用や情報漏えいしてしまったような時の対応費用が補償される特約)には加入しておくことをお勧めします。
また、水害は年々増えてきているので、水害の危険性がある地域のマンションでは水害リスクに対応した保険に加入することも検討した方が良いかと思います。
最後に、管理組合から建物管理を委託している建物管理会社は損害保険の代理店となっていることも多いため、管理会社担当者の提案を鵜呑みにせず、管理組合(理事会)側が内容をしっかりと把握して加入することが大切だと思います。
Q2.多面的なコメントありがとうございました。
管理会社の担当者曰く、上の階が無保険状態で揉めるのを避けるためという説明をしてきました。
仮に水濡れの補償をするとして、1,000万/戸は妥当な金額なのでしょうか。。。
クロス貼り替えは満額出るとしても、家財は経年劣化や減耗分が減価されて補償されるのが一般的という認識です。
最悪は下階の被害を受けた側が、火災保険が水売れ補償特約付きであれば、そちらで補填して貰うことで折り合い付けられそうに思いますし。
さすがに上下階の両方が無保険状態というのは、ワンルームマンションにおいて、まず無いと思うのですが。。。
A2.保険金額が妥当な金額かどうかはそれぞれのマンションの建物(設備)、居住者の属性、考え方などによっても異なると思いますので、個人賠償補償にかかわらず、私の方からご質問者様のマンションの妥当な各保険金額を明確に答えることは難しいです。(過去の履歴や管理組合の収支状況、立地の環境などにより妥当と思われる金額をご検討されるのが良いかと思います)
私見としては、賃貸している区分所有者の多いワンルームマンションほど無保険状態の可能性が高くなるのではないかと思います。これまでも理事として管理費などを滞納者している外部区分所有者と対峙してきましたが、中には自身の住戸の家賃収入に関することでさえもよく把握しておらずにいつの間にか口座の残高が不足していて(賃貸管理会社が非常に悪質だったことが原因)長期間管理費等を滞納してしまっていた人など考えられないような無関心な区分所有者の方もおられました。
また、管理会社の担当者は日々の業務だけでもかなり疲労している方が多く、それに無保険者への対応などがプラスして発生すると更に業務が増えるため、そのような対応を避けるためにも保険をかけて頂きたいと提案してきたのだと思います。(管理会社がある程度対応しても解決しない場合は、最終的には管理組合側自身が対応することになります)
昨今では、自身の管理組合側のことしか考えてくれないような管理組合からは撤退する建物管理会社も多くなってきているため、管理会社の担当者の業務を軽減してあげる(その姿勢だけでも見せてあげる)ことは、管理組合のためにもつながることにもなります。
つきましては、管理会社の担当者のためになるようであれば、加入することを検討してあげるのも良いのではないかとも思います。
Q.先日に管理組合から「役員は輪番表に基づいて選出しているにもかかわらず該当の区分所有者の連絡が取れないなどで役員就任の承認が得られず、役員の欠員が生じていて、このままではマンションの資産価値の低下を招きます。」とのことで、理事会制度を廃止してマンション管理者方式を採用する提案のアンケートが来ました。マンション管理士、弁護士、管理会社などの専門業者に管理者就任を委託するとあるのですが、よくある事なのでしょうか?
A.
理事のなり手不足は、昨今の多くのマンション管理組合において非常に深刻な問題の一つとなっています。
管理組合としての理想はあくまで理事会制度ですが、特に住戸を賃貸をしていて外部に居住している区分所有者が多い分譲マンションにおいては、区分所有者以外の専門家に管理者を委託する第三者管理者方式が現実的と考えます。
ただし、第三者管理者方式には大きな懸念事項もあります。
それは管理を受託している管理会社が管理者に就任する場合には、管理者就任のための費用は特に必要ないとの提案がくる可能性も十分に考えられるのですが、管理を受託している管理会社が管理者に就任すると自社の利益を優先するために過剰な設備交換や補修作業、管理委託費の値上げなど自社に有利な利益相反行為となるような提案が安易になされ、修繕積立金だけではなく管理費も値上げとなる可能性も高くなるということです。
また、管理会社以外の外部のマンション管理士などに管理者就任を委託すると、それ相応の費用が発生します。
管理会社でも外部のマンション管理士などでも管理者を委託するとこれまで以上に管理組合の支出は増えることは避けられないものと想定できますが、管理会社が管理者に就任した場合は現在の理事会制度と比較してマンションの資産価値の向上や居住者の利便性が向上するような提案や、コスト削減されるような提案が増えることはあまり期待できないでしょう。
一方、外部のマンション管理士などが管理者に就任した場合は、管理会社の業務自体は変わりませんので、それにプラスしてマンション管理士として様々なマンションの資産価値や居住者の利便性が向上するような提案や、コスト削減が実現されるなどプラスアルファの提案が増えることが大いに期待できます。
結果的にマンション管理士へ管理者委託費用を支払ったとしても、大きなコスト削減により委託費用以上の支出削減につながったり、効果を得られることも考えられます。
また、管理組合から管理を受託している管理会社の日々の業務の適正もマンション管理士は判断することができますので、もしも管理会社がずさんな管理や一般的なマンションと比較して高額な管理委託費用をとっている場合は是正することもできるでしょう。
注意していただきたいこととしては、マンション管理士によってはマンションの現地にもほとんど訪問せずに管理会社の重箱の隅をつついて粗ばかりを探し、それを指摘して管理会社に是正をすることがマンション管理士の主な役割だと思っているのではないかと感じられるマンション管理士もいると耳にするようなこともあります。
管理会社は決して敵対する関係ではなく、管理組合、管理会社そして外部のマンション管理士など全員が良好な関係を築き、連携して管理活動に取り組むことが適切と考えています。
そのため外部のマンション管理士が管理者に就任した際には、管理組合側から管理会社に業務委託契約の範囲を超えた過度な要求などがあがった場合には、それを抑えるような管理組合と管理会社の壁となり、潤滑油のような存在になることも必要なのです。
外部のマンション管理士に委託する場合にはどのような業務をしてもらうのか委託契約する前に明確に決めた上で、その内容に見合った費用で委託契約することをお勧めします。
最後に理事会制度から管理者方式への移行についてまとめると、管理者方式を採用する際には管理規約の改正や使用細則の制定など多くの時間を割いて検討を要することが必要です。
そして、冒頭でもお話ししたように管理組合としての理想はあくまで理事会制度ですが、理事のなり手不足が懸念される分譲マンションにおいては、区分所有者以外の専門家が管理者に就任する第三者管理者方式が中長期的にマンションの適切な管理を維持し、資産価値の向上や居住者の方たちの暮らしや利便性を向上させていくためには現実的と考えられるでしょう。
Q.理事を務めているマンションで修繕積立金の改定を検討しているのですが、管理規約の別表に修繕積立金の金額が記載されているため、総組合員数および議決権の4分の3以上の賛成が必要な特別決議事項となると管理会社から言われています。別表があるとやはり特別決議となってしまうのでしょうか?
A.
修繕積立金や管理費等の改定は標準管理規約上は普通決議事項とされています。
また、別表は規約の一部とも解されますが、過去の判例によると別表に修繕積立金の金額が記載されているからといって必ず特別決議が必要となるわけではありません。
この件についての判例は「判決 平成14年11月5日 神戸地方裁判所 平成14年(レ)第90号管理費等請求控訴事件(原審 神戸簡易裁判所平成13年(ハ)第1419号)」をご参照下さい。
要約すると、規約条文から管理費(修繕積立金)等の改定が特別決議事項ではなく、普通決議事項と解されるものであれば、別表があったとしても普通決議事項と解されるというものです。
より具体的に要約してみると
① 規約条文に管理費等の改定は総会の決議事項とだけ記載されている
② 規約条文に4分の3以上の総会決議が必要と記載されている事項には管理費等の改定事項が記載されていない
上記①②のどちらも当てはまる場合は、規約条文より管理費等の改定は特別決議事項ではなく、普通決議事項と解されるため管理費及び修繕積立金の別表があったとしても、管理費等の改定は普通決議事項と考えて良いと思われます。
但し、マンションによって規約の表現が微妙に異なる場合も想定されるため専門家にしっかりと相談することをお勧めします。
また、相談する際には、管理を委託している管理会社の担当者だけではなく、マンション管理業協会や第三者のマンション管理士など複数の箇所、専門家へ相談し、意見を求めることが有益かと思います。
Q.マンション屋上などに管理組合の収益を得るために携帯基地局を設置できないでしょうか?
A.総会決議により設置することは可能です。
携帯基地局の設置予定場所の形状または効用の著しい変更(大がかりな工事による形状の変更など)を伴う場合には総組合員数及び総議決権の4分の3以上の賛成が必要な特別決議が必要となります。そうでない場合は、総会出席の組合員数及び議決権数の過半数の賛成で決する普通決議での決議が必要となります。
また、携帯基地局設置による収入は収益事業にあたるため、税金を納める必要もでてきます。(税理士などに委託するなどの検討も必要です)
そして、携帯基地局の設置を要望するマンション管理組合は多いですが、管理組合側より直接に各携帯電話会社(キャリア)に打診することは難しいです。
現在では、携帯基地局の設置を要望する管理組合などからの要望を取りまとめ、各携帯電話キャリアに情報提供している会社などがあるので、その会社経由で打診することが望ましいと思われます。
Q.マンション敷地内に管理組合の収益を得るために電動キックボードステーションの設置ができないでしょうか?
A.総会決議により設置することは可能です。
電動キックボードステーションなどの設置予定場所の形状または効用の著しい変更(大がかりな工事による形状の変更や駐輪場だった場所を電動キックボードステーション設置場所に変更するなど)を伴う場合には総組合員数及び総議決権の4分の3以上の賛成が必要な特別決議が必要となります。そうでない場合は、総会出席の組合員数及び議決権数の過半数の賛成で決する普通決議での決議が必要となります。
また、電動キックボードステーション設置による収入は収益事業にあたるため、税金を納める必要もでてきます。(税理士などに委託するなどの検討も必要です)
そして、電動キックボードステーションの使用方法及び管理方法などの詳細を決めて、使用細則を制定することが望ましいと考えます。
Q.管理組合としてマンション一棟でのインターネット回線を敷設し、インターネット接続サービス契約ができないでしょうか?
A.総会決議によりインターネット回線を敷設し契約することは可能です。
インターネット回線敷設に伴う形状または効用の著しい変更(大がかりな敷設工事による形状の変更など)を伴う場合には総組合員数及び総議決権の4分の3以上の賛成が必要な特別決議が必要となります。そうでない場合は、総会出席の組合員数及び議決権数の過半数の賛成で決する普通決議での決議が必要となります。
また、インターネット接続サービス使用料を管理組合の管理費から支出するためには、予算へ計上し、総会決議を経て支出することが必要です。
もし、新たにインターネット接続費用のために管理費を増額する場合には管理費改定の総会決議が必要となります。(規約で別段の定めがない場合には普通決議の決議となります)
Q. マンション敷地内に管理組合の収益を得るために自動販売機を設置できないでしょうか?
A.総会決議により設置することは可能です。
自動販売機の設置予定場所の形状または効用の著しい変更(大がかりな工事による形状の変更や駐輪場だった場所を自動販売機の設置場所に変更したため、駐輪場がなくなってしまう場合などが考えられます)を伴う場合には総組合員数及び総議決権の4分の3以上の賛成が必要な特別決議が必要となります。そうでない場合は、総会出席の組合員数及び議決権数の過半数の賛成で決する普通決議での決議が必要となります。
また、自動販売機設置による収入は収益事業にあたるため、税金を納める必要もでてきます。(税理士などに委託するなどの検討も必要です)
Q. 現在無料で使用しているマンション敷地内の駐輪場を有料にできないのでしょうか?
A. 総会決議により有料にすることは可能です。
管理規約の改正が必要となると思われます。総組合員数及び総議決権の4分の3以上の賛成が必要な特別決議となります。
また、駐輪場の設備を新たに設置する場合に、形状または効用の著しい変更(大がかりな工事による形状の変更など(金額の高さは関係ありません))を伴う場合には総組合員数及び総議決権の4分の3以上の賛成が必要な特別決議が必要となります。そうでない場合は、総会出席の組合員数及び議決権数の過半数の賛成で決する普通決議での決議が必要となります。
そして、駐輪場使用料の徴収方法など実際の管理方法の詳細を決めて、使用細則を制定することが望ましいとも考えます。
Q. 電子ブレーカー となるものをマンションの管理会社から提案がありました。管理組合で導入されているところはございますか?
A.2~3年前に2つのマンションで電子ブレーカーを理事である私の主導で導入しました。
いづれのマンションも年間10万円以上の電気代の削減効果が見込めたため、昨今の電気代高騰している中でも他マンションに比べて電気代が抑えられています。
電子ブレーカーはマンション共用部の動力系の設備の電気代を削減できるため、給水ポンプ、機械式駐車場、エレベーターなどが多くあればあるほど削減効果は高くなります。
削減効果が少しでもあるのであれば導入することをお勧めしますが、複数の業者の相見積もりを取得して検討した方が良いと思います。
Q. 電動キックボードの駐車場貸し出しは実際のところクレーム等どうでしょうか?
A. 電動キックボードは、規制も緩和されてきているので、建管も提携して設置するところは増えてきています。
クレームに関しては正直、何をしても一定数出てくるものだと思うので、ある程度想定しておいた方が良いかと。電動キックボードに関することに限らず、真摯に向き合っていく必要はありますね。
Q. 管理者のなり手がいないので「建物管理会社が管理者・理事長もします」という物件があるのですが、それはいいのでしょうか、悪いのでしょうか。
A. 一概に悪いとは言えないです。管理のプロが代表になってやっていくので、それなりにいい管理はされるかと思います。管理会社の方も、理事で厳しい方がいるとかなり疲弊してしまいますので、管理会社の方が管理者になるとやりやすくなっていくんですよね。管理会社が管理者になるに伴い、管理委託費を安くしてくれるところもあります。
ただ、管理会社が管理者になると、相見積もりをして比較検討されていくことは、ほぼ期待できませんので、工事費や管理費の削減は、あまり望めないかもしれません。
Q. 建物管理会社がお膳立てをすることで、理事長がそのまま建物管理会社の意思を通してしまい、そのまま施工も行われてしまう。なんてこともあると思いますが、どうすればいいのでしょうか?
A. 建物管理は専門性が高いので、理事長自身や組合員の中で考えがあっても「建物管理会社の人がこういえばこうだろう」みたいな部分があるかと思います。なので、少しでも詳しい人が内部にいるのであればその方に相談する。
また、内部に詳しい方がいらっしゃらなければ、第三者のマンション管理士などの専門家に意見を求めたり、自治体の制度(年何回までは無料でマンション管理について相談を受けますよ)というものなどがあれば、それを利用するのもいいかもしれません。
とにかく、建物管理会社は頼りにしながらも、言う事を全て信用するのではなく、時には疑ってみて、管理組合側(理事会側)が主体的に管理活動に取り組むことが大切です。
Q. 管理人目線では改善箇所も見えやすいが、遠方オーナーであれば管理改善にどういった貢献ができるでしょうか。また、それが賃貸へのリターンにどれくらい寄与するでしょうか。
A. 遠方であったとしても、役員に就任して理事会をオンラインで開催し出席することで管理改善に貢献できると考えます。
賃貸にどれくらいのリターンがあるかに関しては、明確な数値では表しかねます。ですが、地道に適正な管理を丁寧に行っていくことで、マンション居住者の快適な暮らしにもつながるため、退居率の低減や退居者がでても早期に入居者がみつかるなど賃貸オーナーにとってプラスに働くことが十分に考えられるでしょう。
また、的確な管理活動をすることにより管理組合の収支改善(支出削減、収益UPなど)により、将来的に修繕積立金が値上げせざるを得ないような場合には値上げ幅を抑えることができ、それがキャッシュフローにも良い影響を与えることは間違いないものと想定できます。
Q. 管理会社との上手い付き合い方について、意識している所を教えてください。
A. 建物管理会社に対して普段から私が意識していることは次の4つです。
① 建物管理会社フロント(担当者)トの方とは、理事になっても近からず、遠からずの程よい距離感で接すること
② 委託業務範囲を超えた無理なことを多く依頼しないこと(管理組合(理事会側)が主体的に動くこと)
③ 建物管理会社フロントの方の業務軽減や建物管理会社のコスト削減になるような取り組みを積極的に取り入れること(理事会のオンライン化、理事会の議事録(備忘録)の作成、各書面や掲示物の紙の削減など)
④ 建物管理会社フロントが困っている事象が発生したら、理事会側が積極的に改善するよう努める(建物管理会社任せにしない)
Q.修繕積立金、管理費などが値上する場合。その時の対策、対応について教えて下さい。
A.まず、管理費の値上げと修繕積立金の値上げは分けて考える必要があります。
♦ 管理費値上げ時の対応と対策
・管理費の値上げ理由の確認
① 建物管理会社の委託費用値上げのための管理費の値上げの場合
→・現在の管理委託内容の見直しで値上げを回避できないか検討(例えば、管理人の勤務体制、定期清掃回数、管理会社フロント(担当者)の業務内容(理事会出席条件)の見直しなど)
※ 但し、無理な削減によりマンション全体の管理、管理組合の運営に大きな悪影響を与える変更はお勧めできません。
→建物管理会社の委託内容の見直しができないような場合は、値上げを受け入れる。または他の建物管理会社へ変更の検討をすることが考えられます。
※ 但し、現在建物管理会社は人手不足などの理由もあり年々事業から撤退しています。そのため最近では建物管理会社が委託を受ける管理組合を選定するような流れにもなりつつあります。無理な要求は建物管理会社の撤退につながりますので注意する必要はあります。
② 管理費の徴収金額が低額であったり、駐車場の空き区画の増加、電気代など固定費の高騰などにより年間の管理費会計の収支がマイナスとなったことによる値上げの場合
→ ・上記①を検討してみる
・駐車場の空き区画による駐車場収入の減少の場合 → 外部貸出を検討してみる(管理規約の改正の必要となる可能性あり)
・電気代の高騰 → 共用部の電力系の電気代を削減する電気ブレーカーの導入やLED照明などを検討してみる
・その他、管理組合の収益をあげるための方法(駐車場やオートバイ置場の増設、電動キックボードステーションの設置など)を検討する。
※ 但し、駐車場やオートバイ置場の収入などの使用料の収入は管理組合の会計では、管理費会計ではなく、修繕積立金会計に繰り入れることが適正とされています。
そのため、本来は管理費の徴収金額は使用料収入に頼ることなく、管理費会計の年間収支がマイナスにならない金額を管理費として徴収することが適正となります。
♦ 修繕積立金の値上げ時の対応と対策
・マンション竣工時から適正な修繕積立金額が徴収されているマンションは国内には存在しないと考えて下さい。
そのため、管理費の値上げとは異なり、中長期的にマンション全体の適切な維持管理を維持していくためには修繕積立金の値上げは不可欠です。
竣工時から何十年も値上げされていないようなマンションであれば、適正な金額に値上げするために現在の金額から十倍以上の値上げをしなければいけないこともあると想像できます。
正確には精密な長期修繕計画書を作成して、的確な修繕積立金の金額を試算し、値上げすることが大切です。
また、竣工時からの修繕積立金の値上げを回避することは、よほどの要因(携帯基地局の賃貸などを含めた多額の事業収入がある場合など)がない限りほぼ不可能でしょう。
しかし、値上げ幅を低減することは可能で、上記の管理費の値上げ対策で記述しました①②のような改善をし、管理費会計がプラスになればその剰余金を修繕積立金へ繰り入れることで修繕積立金の値上げ幅を低減できます。
因みに国交省から公表されている、延べ床面積5,000㎡未満のマンションで適正な修繕積立金の目安金額は下記の通りです。(機械式駐車場がある場合はプラスαとなります)
・平均額:335円/㎡・月
・事例の3分の2が包含される幅:235円/㎡・月 ~ 430円/㎡・月
※ 値上げされていない期間が長いマンションほど金額が高くなることが想定され、中には430円/㎡・月以上が必要なマンションもでてくるでしょう。
最後に上記の改善は管理組合から委託をする建物管理会社のフロント(担当者)へ依頼するだけではほぼ改善しないと考えて下さい。
真剣に改善したい場合には、理事会主導で改善に取り組む必要がありますが、場合によっては多大な労力を要することも少なくありません。
また、管理活動には専門知識や経験が必要な場面は多々ありますので、建物管理会社と異なるマンション管理士などへの相談をする、時には費用を支出して委託するなどして改善することも有益です。
地方自治体の区役所などでは、区の補助活動として、マンション管理士などの専門家を無料で管理組合に派遣するなどの制度を設けている場合も多いので、そのような制度を使うことも有益かと思います。
Q. 管理費の削減ではなく、収益を獲得できる案はありますか?
A. 駐車場の区画増設、規約変更による外部の貸し出しがあげられます。
また、少し難易度は上がります(管理組合側からの要望で設置できる見込みは薄いです)が携帯電話基地局の設置も有効ではないでしょうか。
バイク置き場はスペースをあまり必要としないので、マンション敷地内の空きスペースがあればバイク置場を作り、サブリースなどで貸出しをしたり、キッチンカーを敷地内に有料で止めさせてあげたり、様々あるかと思います。
Q. 管理会社が入っていてもゴミ庫が荒れることはありますでしょうか。あるとすれば、どういったことが原因として考えられますか。
A. 荒れることは当然あり、そのようなマンションを私は実際に数多く見てきています。
入居者が全く分別をしてくれなかったり、管理人がそこまで几帳面ではなかったり、原因は様々です。
ゴミ庫が荒れる問題だけに関わらず、生活音、共用部への私物放置など居住者間のトラブルなど管理会社に連絡して対応依頼しただけでは全く改善していかないものだと思っていただいた方が賢明です。マンションの管理活動をしていく主体は管理会社でなく、管理組合です。その中でも理事会が中心となって方針を決めていき、管理組合員全員で管理をしていくという意識を持って活動していくことが大切で、本来あるべき姿でもあります。
管理会社は管理委託契約書の中に記載されている業務の範囲内のみで管理を実施する管理組合の補助的な機関だと理解してください。
マンション賃貸関係
Q.賃貸していたマンションで賃借人が亡くなってしまいました。原因は自然死ということだったのですが特殊清掃を実施しました。今後の賃借人の募集をする時に人が亡くなったことを告知しなければいけないのでしょうか?
A.
2021年10月に国土交通省より「人の死の告知に関するガイドライン」が公表されています。
その中身を要約すると、原則的に自然死の場合には告知の義務はないと記載されていますが、特殊清掃をした場合には3年間は告知しなければならないと記載されています。
詳細につきましては、国土交通省のホームページにて「人の死の告知に関するガイドライン」がダウンロードできますので、そちらをご参照下さい。
Q.現在賃貸で住んでいるマンションを家賃約1年分の立ち退き料を支払うので約3ヵ月で退去して欲しいと打診がありました。家賃1年分頂けるのであれば良い条件だと思っているのですがどう思うでしょうか?
A.家賃1年分の立ち退き料が支払われるのであれば一見すると良い条件のように感じますが、転居に伴うリスクは多くあります。
まず、約3ヵ月での退去という点が非常に気にかかります。
特に11月~12月の2ヵ月間は引っ越し閑散期となり、良い物件を見つけて転居することは非常に困難になると想定できます。
逆に引っ越し繁忙期である2月下旬~4月上旬になると良い物件が見つかりやすくなります。
そのため、もし仮に12月末日までの退去期限の場合には妥協した物件へ転居したものの、気に入らずに再度転居した場合には、家賃1年分の立ち退き料だけでは2回分の転居費用が捻出できず、赤字になる可能性が十分に考えられます。(一般的に1回の引っ越し費用は家賃5~6カ月分、約100万円程度かかるともよく言われます)
また、現在賃貸で居住しているお部屋と同等または同等水準以上の物件へ転居しようとした際に現在の家賃では見つからずに家賃を上げなければ賃借できない可能性も十分に考えられます。
家賃上昇分はそのお部屋に賃貸で居住し続ける限り際限なく損失が膨らんでいくため十分に考慮する必要があります。
ただし、そろそろ賃貸住まいを辞めて購入することを検討していた方や、現在のマンションに不満があり転居を考えていた方にとっては、良い話、良い条件となることも十分考えられます。
私の結論としては、個人によって状況が異なるため、一概に1年分の家賃の立ち退き料が損なのか得なのかの判断はできません。
もし、相談者様が現在のお住まいに不満がなく、今後も賃貸しようと考えていたのであれば、退去期限を延ばす。2回目の引っ越しも前提とし、今後数年間の家賃上昇分のリスクも考慮した立ち退き料を支払ってもらうよう交渉をすることをお勧めします。
因みに借地借家法の法律では、賃貸人は正当な理由があったとしても、賃貸人から賃貸借契約を終了するためには、契約満了日の1年前~6ヶ月前までに賃借人へ契約を更新しない旨を通知しなければいけないことが定められています。(正当な理由があれば立ち退き料を支払わなくても良いという訳ではありません)
Q.現在賃貸している家賃の値上げをしたいのですができないでしょうか?
A.賃貸借契約書において増額請求を認めない旨の特約条項がなければ増額請求(家賃値上げ)を打診することは可能です。
しかし、相手側である賃借人が家賃値上げに合意しない場合は、強制的に値上げすることはできず裁判上で争うことになります。
また、借家借地法により賃貸人の正当な理由なしに賃貸借契約を解約して賃借人に立ち退きさせることはできません。
裁判になると費用も労力もかかると思いますのでよく考えて決断して下さい。
Q. 賃貸で築30年ぐらいのマンションに住んでいますが、台所の排水口から臭気が漂っているのが気になります。
管理組合主導での排水管の清掃作業は毎年実施しています。
それでも臭気が漂う原因としては何が考えられるでしょうか?
A. すぐに思い当たる原因としては、次の3つがあげられます。
① 雑排水管は、マンション内の全ての各住戸と共用部の配管がつながっているため、自身の住戸の排水管は清潔に保たれていても他配管が著しく汚染されている。
② トラップ(臭気を防ぐための排水管の仕掛け)が正常に機能していない。
③ 一般的に排水管の交換周期は30年~40年が適切とされています。排水管の腐食などが既に進行しており、交換する必要がある。
また、排水管交換の注意点としては、各住戸の床下の配管は共用部分ではなく、専有部分となっていることがほとんどのため各住戸の所有者の負担で交換することになります。
ただし、長期修繕計画に専有部分の配管交換工事を盛り込むことや、管理組合が専有部分の配管工事を共用部分の工事と一体化して工事実施できるよう管理規約を改正することで管理組合の負担(修繕積立金の中からの負担)で交換できることはあります。
マンション購入関係
Q.先日に中古マンションを購入したのですが、購入後に修繕積立金が段階的に大幅に値上げになることがわかりとても驚き、ショックを受けました。
中古マンションを購入する前に事前に修繕積立金の値上げを予測することは可能なのでしょうか。
A.事前に予測することは可能です。
マンション購入前に「重要事項調査報告書」や「総会議案書などに記載されている管理組合会計の収支報告書」などをみることで、大規模修繕工事の時期を予測して、それに向けて適切な修繕積立金額が貯蓄されていけるのかなどがおおよそわかります。
また、5~7年ごとに見直しが適切とされている「長期修繕計画書」があるとより明確にわかります。
そして、もし適切な修繕積立金が貯蓄されていない場合には、今後に修繕積立金をどれくらい値上げしなければいけないかを予測することができます。
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