近年、多くのマンションで管理会社からの管理委託費用の値上げ要請が相次いでいます。
昨今の社会情勢により、管理会社側も経営の見直しを迫られていると思われます。
値上げの主な要因として、物価上昇、人件費の高騰、管理業界の人手不足などがあげられます。
管理組合としては、単純に値上げを受け入れるべきなのか、それとも交渉やコスト削減の余地があるのかを慎重に判断する必要があるでしょう。
本記事では、管理委託費用の値上げの背景を整理し、管理組合が取るべき対応策を検討する際の参考にすることができます。
管理会社が値上げを求める理由とは?
管理会社が値上げを要請する理由には、大きく分けて以下の3つの要因が考えられます。
管理組合としては、管理会社の主張を鵜呑みにせず、値上げの根拠を詳細に確認することが重要です。
管理員の人件費は、最低賃金の上昇や人手不足の影響を受けて増加しています。
特に、管理員の担い手が減る中で、新規採用者の確保が難しく、給与水準を引き上げざるを得ない状況です。
また、管理会社のフロント担当者の担い手不足も深刻で、全体的な人件費の負担が増しています。
清掃用具や備品類、修繕資材、各設備の点検・保守費用など、マンション管理に関わるさまざまな費用が上昇しています。
これら費用が管理委託費用に含まれている場合には管理会社も管理組合への値上げせざるを得ない状況になってきています。
日本国内の管理会社はここ13年連続で減少しており、事業継続するための改善を求められています。
そのため適正な利益を確保するために、一律の値上げではなく、管理業務内容および委託費用の見直しを各管理組合に求める管理会社が増えています。
管理組合が取るべき対応策
昨今の日本国内の経済状況を踏まえると、管理会社からの値上げ要請は、やむを得ない側面もあると言えるかもしれません。
しかし、管理会社からの管理委託費の値上げは、管理組合の管理費の値上げにも直結するため、管理組合全体にとって重大な問題となります。
衣食住をはじめ多くの生活必需品が値上がりし、すでに家計に大きな影響を受けている管理組合員の方も少なくないでしょう。
そのため、可能な限り管理会社からの値上げを回避、または最小限に抑えるための対策を講じていくことが重要です。
以下では、管理組合として検討すべき対策について解説します。
まずは「根拠」と「内訳」を精査する
値上げ要請があった場合、まずは管理会社に対し、値上げの具体的な理由や積算根拠を示す詳細な資料(見積書、内訳明細書など)を提示してもらいましょう。
その資料をもとに、以下の点を精査します。
1.値上げ理由の妥当性
人件費や最低賃金の上昇、物価高騰など、社会的な要因であれば理解できる部分もありますが、それが妥当な範囲かを確認します。
2.内訳の精査
人件費、一般管理費、その他経費など、値上げ分の内訳を詳細に確認し、不当な上乗せがないか、近隣相場とかけ離れていないかを精査します。
「交渉」と「業務見直し」を検討する
値上げの根拠と内訳を精査した上で、管理組合としての方針を固め、交渉の準備を進めます。
ただ値上げを受け入れるだけでなく、以下の対策を講じることで、より適正な価格での契約を目指せる可能性が高まります。
値上げ自体はやむを得ないと判断した場合でも、組合の財政状況を説明し、一度に大幅な値上げを受け入れるのではなく、複数年にわたる「段階的な値上げ」が可能か交渉します。
2.業務見直しによるコスト削減
値上げ幅を相殺・抑制するために、現在の管理業務そのものを見直す「コスト削減」を同時に提案することも有効です。
①管理員・清掃業務の見直し
・管理員の勤務形態を見直し、勤務時間を短縮したり、常駐型から巡回型へ変更したりできないか検討します。
・清掃の回数や業務範囲が過剰でないかを見直し、仕様(頻度・項目)を削減します。
②業務の自主管理化(管理組合への移管)
・管理会社に委託している業務のうち、管理組合(役員や居住者の有志)でも対応可能な業務はないか検討します。
例えば、「掲示板の管理・清掃」「共用部の簡易な巡回」「電球交換」などを自主管理に切り替えることで、その分の業務を委託仕様から外し、コスト削減を図ります。
③契約形態の変更(分離発注)
エレベーター保守や消防設備点検などの設備保守業務を、管理会社を通さずに管理組合から専門業者へ直接発注する形態(分離発注)に変更し、中間マージンを削減できないか検討します。
管理会社の負担軽減
オンライン理事会を導入する、あるいは理事会の開催時間や曜日を固定するなど、管理会社(担当者)の業務負担を軽減する提案も、間接的なコスト抑制に繋がる場合があります。
単に値上げを拒否するだけでは、関係が悪化したり、管理の質が低下したりする恐れがあります。
まずは実態を把握し、必要な業務・不要な業務を仕分けるなど、適切な見直しを管理会社と協議していくことで、コストの適正化と品質の維持を両立できる可能性が高まります。
管理会社の変更も選択肢の一つに
管理会社から大幅な値上げを要求され、交渉しても折り合いがつかない・・・
そのような場合、管理会社を変更することも一つの最終的な選択肢です。
相見積もりで「市場価格」を知る
ずは複数の他社から相見積もりを取得し、現在の管理条件と比較検討してみましょう。
ただし、ここで注意が必要です。
おっしゃる通り、昨今は業界全体で人件費や最低賃金、物価が高騰しています。
そのため、相見積もりを取っても、新しい会社の提示額が、現在の契約額(値上げ前)よりも高くなるケースは珍しくありません。
「変更すれば安くなるはず」という前提で話を進めると、期待外れの結果になる可能性があります。
相見積もりの「本当の目的」
では、値上がりする可能性があるのになぜ相見積もりを取るのでしょうか。
近年の相見積もりの目的は、単純なコスト削減(現在の金額より安くすること)以上に、以下の2点を見極めるという重要な意味を持っています。
1.現管理会社から提示された「値上げ額」が、市場価格と比べて妥当か
2.どうせ値上がりするのであれば、より管理品質の高い会社は他にないか
この「値上げ額の妥当性検証」と「同価格帯での品質比較」こそが、現在の相見積もりの主な目的と言えます。
比較・評価のポイント
これらを踏まえた上で、相見積もりを以下の点に着目して評価しましょう。
単純な金額の比較だけでなく、提示された業務内容(仕様)に見合った適正価格であるかを評価します。
「安い」見積もりは、必要な業務が仕様から漏れている可能性もあります。
2.管理品質の比較
新しい会社が提案する業務仕様や、担当者の対応、他物件での実績・評判などから、現在の管理の質を維持、あるいは向上できるかを見極めます。
3.契約内容の妥当性評価
契約書案や重要事項説明書の内容を精査し、業務の範囲や責任(管理組合側・管理会社側)が明確か、管理組合にとって一方的に不利な条項が含まれていないかを確認します。
管理会社の変更は、理事会での検討や比較だけでなく、総会での決議も必要となる「一大イベント」です。
選定や引き継ぎには多大な手間と時間がかかるため、現行の管理会社との交渉を尽くした上での、最終的な選択肢として慎重に判断しましょう。
まとめ
管理会社からの管理委託費の値上げ要請は、昨今の社会情勢を踏まえると、ある程度やむを得ない側面があります。
しかし、管理組合としては、値上げの根拠を確認するとともに、必要以上の負担増を防ぐため、コスト削減の検討や効率的な管理の実施、さらに管理会社との交渉を通じて、適正な価格での契約維持に努めることが求められます。
単に「値上げは仕方がない」と受け入れるのではなく、冷静に交渉し、管理組合の利益を守る姿勢が重要です。
こうした適切な対応により、マンション全体の運営コストを最適化し、組合員の負担を最小限に抑えることが可能になります。
マンション管理士などの外部専門家を活用するなど管理組合として主体的に対応していくことが、長期的な適切なマンション管理の維持につながるでしょう。
本記事も読んでいただきどうもありがとうございました。
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