標準管理規約

標準管理規約(管理「総則」 )

マンションなどの共同住宅では、各居住者が自分勝手に生活してしまうと廊下やゴミ置場をはじめ、マンション館内全体が荒れてしまったり、居住者間のトラブルが絶えないようなマンションとなってしまいます。

このようなことを防ぐため、分譲マンションを購入すると、そのマンションの区分所有者で構成される団体(規約上で「管理組合」と呼ばれることになる団体)へ強制的に加入をすることとなり、法律の定めにしたがってマンションを管理していくことになります。

その代表的な法律が分譲マンションなど区分所有建物の各所有者の権利やマンション全体の管理方法などを定めた「区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)」と呼ばれる法律になります。

しかし、居住者の属性や家族構成、立地、築年数、設備・・・などなど、世界に1つとして同じマンションなど存在しません。

そのため、区分所有法だけでは居住者の方たちの適切な暮らしや的確な建物の維持・管理をしていくことには無理が生じてしまいます。

そこで、区分所有法ではそれぞれの区分所有マンションにおいて独自のルールを定めるための規約を制定することを認めています。(ただし、規約で定められないこともあります。)

そして、その規約の標準的な見本を国土交通省が作成しており、公表されているものが「標準管理規約」と呼ばれるものです。

本記事では、2021年に改正された最新の標準管理規約(単棟型)における「管理(総則)」について学び、理解を深めることができます。

区分所有者の責務(第20条)

標準管理規約第20条では「区分所有者は、対象物件について、その価値及び機能の維持増進を図るため、常に適正な管理を行うよう努めなければならない。」と定められています。

敷地及び共用部分等の管理(第21条)

専用使用権を有する者の責任(第21条1項)

標準管理規約第21条1項では「敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。ただし、バルコニー等の保存行為(区分所有法第18条第1項ただし書の「保存行為」をいう。以下同じ。)のうち、通常の使用に伴うものについては、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければならない。」と定められています。

共用部分と構造上一体となった部分の管理(第21条2項)

標準管理規約第21条2項では「専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行うことができる。」と定められています。

区分所有者による敷地及び共用部分等の保存行為(第21条3項)

標準管理規約第21条3項では電磁的方法が利用可能ではない場合と可能な場合の2パターンの規定が存在します。

(ア)電磁的方法が利用可能ではない場合

(第21条3項)
区分所有者は、第1項ただし書の場合又はあらかじめ理事長に申請して書面による承認を受けた場合を除き、敷地及び共用部分等の保存行為を行うことができない。ただし、専有部分の使用に支障が生じている場合に、当該専有部分を所有する区分所有者が行う保存行為の実施が、緊急を要するものであるときは、この限りでない。

(イ)電磁的方法が利用可能な場合

(第21条3項)
区分所有者は、第1項ただし書の場合又はあらかじめ理事長に申請して書面又は電磁的方法による承認を受けた場合を除き、敷地及び共用部分等の保存行為を行うことができない。ただし、専有部分の使用に支障が生じている場合に、当該専有部分を所有する区分所有者が行う保存行為の実施が、緊急を要するものであるときは、この限りでない。

専有部の修繕等の規定の準用(第21条4項)

標準管理規約第20条4項では「前項の申請及び承認の手続については、第17条第2項、第3項、第5項及び第6項の規定を準用する。ただし、同条第5項中「修繕等」とあるのは「保存行為」と、同条第6項中「第1項の承認を受けた修繕等の工事後に、当該工事」とあるのは「第21条第3項の承認を受けた保存行為後に、当該保存行為」と読み替えるものとする。」と定められています。

区分所有者による規定違反の保存行為の負担(第21条5項)

標準管理規約第20条5項では「第3項の規定に違反して保存行為を行った場合には、当該保存行為に要した費用は、当該保存行為を行った区分所有者が負担する。」と定められています。

理事長による緊急時の保存行為(第21条6項)

標準管理規約第20条6項では「理事長は、災害等の緊急時においては、総会又は理事会の決議によらずに、敷地及び共用部分等の必要な保存行為を行うことができる。」と定められています。

【マンション標準管理規約(単棟型)第21条関係コメント】
① 第1項及び第3項は、区分所有法第18条第1項ただし書において、保存行為は、各共有者がすることができると定められていることに対し、同条第2項に基づき、規約で別段の定めをするものである。

② 駐車場の管理は、管理組合がその責任と負担で行う。

③ バルコニー等の管理のうち、管理組合がその責任と負担において行わなければならないのは、計画修繕等である。

④ 本条第1項ただし書の「通常の使用に伴う」保存行為とは、バルコニーの清掃や窓ガラスが割れた時の入替え等である。

⑤ バルコニー等の経年劣化への対応については、③のとおり管理組合がその責任と負担において、計画修繕として行うものである。
ただし、バルコニー等の劣化であっても、長期修繕計画作成ガイドラインにおいて管理組合が行うものとされている修繕等の周期と比べ短い期間で発生したものであり、かつ、他のバルコニー等と比較して劣化の程度が顕著である場合には、特段の事情がない限りは、当該バルコニー等の専用使用権を有する者の「通常の使用に伴う」ものとして、その責任と負担において保存行為を行うものとする。なお、この場合であっても、結果として管理組合による計画修繕の中で劣化が解消されるのであれば、管理組合の負担で行われることとなる。

⑥ バルコニー等の破損が第三者による犯罪行為等によることが明らかである場合の保存行為の実施については、通常の使用に伴わないものであるため、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。
ただし、同居人や賃借人等による破損については、「通常の使用に伴う」ものとして、当該バルコニー等の専用使用権を有する者がその責任と負担において保存行為を行うものとする。

⑦ 第2項の対象となる設備としては、配管、配線等がある。配管の清掃等に要する費用については、第27条第三号の「共用設備の保守維持費」として管理費を充当することが可能であるが、配管の取替え等に要する費用のうち専有部分に係るものについては、各区分所有者が実費に応じて負担すべきものである。
なお、共用部分の配管の取替えと専有部分の配管の取替えを同時に行うことにより、専有部分の配管の取替えを単独で行うよりも費用が軽減される場合には、これらについて一体的に工事を行うことも考えられる。その場合には、あらかじめ長期修繕計画において専有部分の配管の取替えについて記載し、その工事費用を修繕積立金から拠出することについて規約に規定するとともに、先行して工事を行った区分所有者への補償の有無等についても十分留意することが必要である。

⑧ 第3項ただし書は、例えば、台風等で住戸の窓ガラスが割れた場合に、専有部分への雨の吹き込みを防ぐため、割れたものと同様の仕様の窓ガラスに張り替えるというようなケースが該当する。
また、第5項は、区分所有法第19条に基づき、規約で別段の定めをするものである。
承認の申請先等は理事長であるが、承認、不承認の判断はあくまで理事会の決議によるものである(第54条第1項第五号参照)。

⑨ 区分所有法第26条第1項では、敷地及び共用部分等の保存行為の実施が管理者(本標準管理規約では理事長)の権限として定められている。第6項では、災害等の緊急時における必要な保存行為について、理事長が単独で判断し実施できることを定めるものである。災害等の緊急時における必要な保存行為としては、共用部分等を維持するための緊急を要する行為又は共用部分等の損傷・滅失を防止して現状の維持を図るための比較的軽度の行為が該当する。後者の例としては、給水管・排水管の補修、共用部分等の被災箇所の点検、破損箇所の小修繕等が挙げられる。この場合に必要な支出については、第58条第6項及びコメント第58条関係⑤を参照のこと。

⑩ 災害等の緊急時において、保存行為を超える応急的な修繕行為の実施が必要であるが、総会の開催が困難である場合には、理事会においてその実施を決定することができることとしている(第54条第1項第十号及びコメント第54条関係①を参照。)。
しかし、大規模な災害や突発的な被災では、理事会の開催も困難な場合があることから、そのような場合には、保存行為に限らず、応急的な修繕行為の実施まで理事長単独で判断し実施することができる旨を、規約において定めることも考えられる。更に、理事長をはじめとする役員が対応できない事態に備え、あらかじめ定められた方法により選任された区分所有者等の判断により保存行為や応急的な修繕行為を実施することができる旨を、規約において定めることも考えられる。
なお、理事長等が単独で判断し実施することができる保存行為や応急的な修繕行為に要する費用の限度額について、予め定めておくことも考えられる。

⑪ 第6項の災害等の緊急時における必要な保存行為の実施のほか、平時における専用使用権のない敷地又は共用部分等の保存行為について、理事会の承認を得て理事長が行えるとすることや、少額の保存行為であれば理事長に一任することを、規約において定めることも考えられる。その場合、理事長単独で判断し実施することができる保存行為に要する費用の限度額について、予め定めておくことも考えられる。

窓ガラス等の改良(第22条)

管理組合の責任と負担(第22条1項)

標準管理規約第22条1項では「共用部分のうち各住戸に附属する窓枠、窓ガラス、玄関扉その他の開口部に係る改良工事であって、防犯、防音又は断熱等の住宅の性能の向上等に資するものについては、管理組合がその責任と負担において、計画修繕としてこれを実施するものとする。」と定められています。

区分所有者による工事の実施(第22条2項)

標準管理規約第22条2項では電磁的方法が利用可能ではない場合と可能な場合の2パターンの規定が存在します。

(ア)電磁的方法が利用可能ではない場合

(第22条2項)
区分所有者は、管理組合が前項の工事を速やかに実施できない場合には、あらかじめ理事長に申請して書面による承認を受けることにより、当該工事を当該区分所有者の責任と負担において実施することができる。

(イ)電磁的方法が利用可能な場合

(第21条3項)
区分所有者は、管理組合が前項の工事を速やかに実施できない場合には、あらかじめ理事長に申請して書面又は電磁的方法による承認を受けることにより、当該工事を当該区分所有者の責任と負担において実施することができる。

専有部の修繕等の規定の準用(第22条3項)

標準管理規約第22条3項では「前項の申請及び承認の手続については、第17条第2項、第3項、第5項及び第6項の規定を準用する。ただし、同条第5項中「修繕等」とあるのは「第22条第2項の工事」と、同条第6項中「第1項の承認を受けた修繕等の工事」とあるのは「第22条第2項の承認を受けた工事」と読み替えるものとする。」と定められています。

【マンション標準管理規約(単棟型)第22条関係コメント】
① 窓枠、窓ガラス及び玄関扉(玄関扉にあっては、錠及び内部塗装部分を除く。以下「開口部」という。)については、第7条第2項第二号及び第三号において専有部分に含まれないこととされていること、専有部分に属さない「建物の部分」については、第8条に基づく別表第2において共用部分とされていることから、開口部は共用部分として扱うこととなる。

② また、区分所有法は、その形状又は効用の著しい変更を伴わない共用部分の変更について、集会の普通決議により決することを定めている。

③ 第1項は、防犯、防音又は断熱等の住宅の性能の向上のため行われる開口部の改良工事については、原則として、他の共用部分と同様に計画修繕の対象とすべき旨を規定したものである。

④ 第2項は、開口部の改良工事については、治安上の問題を踏まえた防犯性能の向上や、結露から発生したカビやダニによるいわゆるシックハウス問題を改善するための断熱性の向上等、一棟全戸ではなく一部の住戸において緊急かつ重大な必要性が生じる場合もあり得ることに鑑み、計画修繕によりただちに開口部の改良を行うことが困難な場合には、専有部分の修繕等における手続と同様の手続により、各区分所有者の責任と負担において工事を行うことができるよう規定したものである。承認の申請先等は理事長であるが、承認、不承認の判断はあくまで理事会の決議によるものである(第54条第1項第五号参照)。

⑤ また、第2項及び第3項は、マンションでは通常個々の専有部分に係る開口部(共用部分)が形状や材質において大きく異なるような状況は考えられないことから、当該開口部の改良工事についてもその方法や材質・形状等に問題のないものは、施工の都度総会の決議を求めるまでもなく、専有部分の修繕等における手続と同様の手続により、各区分所有者の責任と負担において実施することを可能とする趣旨である。承認申請の対象範囲、審査する内容等の考え方については、別添2を参照されたい。

⑥ 「共用部分のうち各住戸に附属する窓枠、窓ガラス、玄関扉その他の開口部に係る改良工事であって、防犯、防音又は断熱等の住宅の性能の向上等に資するもの」の工事の具体例としては、防犯・防音・断熱性等により優れた複層ガラスやサッシ等への交換、既設のサッシへの内窓又は外窓の増設等が考えられる。

⑦ 本条の規定のほか、具体的な工事内容、区分所有者の遵守すべき事項等詳細については、細則に別途定めるものとする。その際、上述の別添2の内容についても、各マンションの実情に応じて、参考にするとともに、必要に応じて、専門的知識を有する者の意見を聴くことが望ましい。

⑧ 申請書及び承認書の様式は、専有部分の修繕に関する様式に準じて定めるものとする

必要箇所への立入り(第23条)

専有部分又は専用使用部分への立入り請求(第23条1項)

標準管理規約第23条1項では「前2条により管理を行う者は、管理を行うために必要な範囲内において、他の者が管理する専有部分又は専用使用部分への立入りを請求することができる。」と定められています。

立入り拒否の禁止(第23条2項)

標準管理規約第23条2項では「前項により立入りを請求された者は、正当な理由がなければこれを拒否してはならない。」と定められています。

(第23条3項)

標準管理規約第23条3項では「前項の場合において、正当な理由なく立入りを拒否した者は、その結果生じた損害を賠償しなければならない。」と定められています。

立入り拒否による損害賠償(第23条4項)

標準管理規約第23条4項では「前3項の規定にかかわらず、理事長は、災害、事故等が発生した場合であって、緊急に立ち入らないと共用部分等又は他の専有部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがあるときは、専有部分又は専用使用部分に自ら立ち入り、又は委任した者に立ち入らせることができる。」と定められています。

【マンション標準管理規約(単棟型)第23条第4項関係コメント】
① 第4項の緊急の立入りが認められるのは、災害時等における共用部分に係る緊急的な工事に伴い必要な場合や、専有部分における大規模な水漏れ等、そのまま放置すれば、他の専有部分や共用部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがある場合に限られるものである。

② 第4項の規定の実効性を高めるため、管理組合が各住戸の合い鍵を預かっておくことを定めることも考えられるが、プライバシーの問題等があることから、各マンションの個別の事情を踏まえて検討する必要がある。

原状回復義務(第23条5項)

標準管理規約第23条5項では「立入りをした者は、速やかに立入りをした箇所を原状に復さなければならない。」と定められています。

災害、事故等が発生した場合や、緊急に立ち入らないと共用部分等又は他の専有部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがあるときに専用使用部分に立ち入った場合でも、原状回復費用をその専有部分に居住する人や区分所有者が支払わなければならないようなことは定められていません。

損害保険(第24条)

管理組合による損害保険契約(第24条1項)

標準管理規約第24条1項では「区分所有者は、共用部分等に関し、管理組合が火災保険、地震保険その他の損害保険の契約を締結することを承認する。」と定められています。

区分所有法においては、損害保険の契約を締結することは「集会の決議が必要」と定められています。(区分所有法第18条4項より)

理事長の保険請求及び受領の代理権(第24条2項)

標準管理規約第24条2項では「理事長は、前項の契約に基づく保険金額の請求及び受領について、区分所有者を代理する。」と定められています。

区分所有者法第26条2項では、「管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第⼗⼋条第四項(第⼆⼗⼀条において準⽤する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険⾦額並びに共⽤部分等について⽣じた損害賠償⾦及び不当利得による返還⾦の請求及び受領についても、同様とする。」と規定されており、損害保険契約の締結とは異なり管理者が区分所有者を代理することが定められています。

まとめ

標準管理規約における管理「総則」についてご理解頂けたでしょうか。

マンションでは一見すると専有部分と思われるところが共用部分であったり、逆に共用部分であると思われるようなところが専有部分とされているところなどが複数あります。

そして、修繕工事など実施しようと計画しているところが、区分所有者が各自で修繕工事が実施できるのか、管理組合が実施するのか、理事長の承認が必要なのかなど様々なルールが標準管理規約によって定められています。

しかしこのような規定を全て日頃から頭に入れていくことは難しいですし、その時に分厚い管理規約を見て確認することも大変だと思います。

もし、皆さんが自身の住戸である専有部分の修繕工事などを実施する際には、管理組合から管理を委託している建物管理会社に問い合せて修繕工事などを実施しようと思っていることを事前に伝えることをお勧めします。

恐らく建物管理会社の担当者から修繕工事の実施の可否および実施するための届け出など指示がもらえるはずです。

マンション内のルールを守って適切なマンションライフを送れるように心がけましょう。

本記事も読んでいただきどうもありがとうございました。

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