標準管理規約

標準管理規約(総会②)

マンションなどの共同住宅では、各居住者が自分勝手に生活してしまうと廊下やゴミ置場をはじめ、マンション館内全体が荒れてしまったり、居住者間のトラブルが絶えないようなマンションとなってしまいます。

このようなことを防ぐため、分譲マンションを購入すると、そのマンションの区分所有者で構成される団体(規約上で「管理組合」と呼ばれることになる団体)へ強制的に加入をすることとなり、法律の定めにしたがってマンションを管理していくことになります。

その代表的な法律が分譲マンションなど区分所有建物の各所有者の権利やマンション全体の管理方法などを定めた「区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)」と呼ばれる法律になります。

しかし、居住者の属性や家族構成、立地、築年数、設備・・・などなど、世界に1つとして同じマンションなど存在しません。

そのため、区分所有法だけでは居住者の方たちの適切な暮らしや的確な建物の維持・管理をしていくことには無理が生じてしまいます。

そこで、区分所有法ではそれぞれの区分所有マンションにおいて独自のルールを定めるための規約を制定することを認めています。(ただし、規約で定められないこともあります。)

そして、その規約の標準的な見本を国土交通省が作成しており、公表されているものが「標準管理規約」と呼ばれるものです。

本記事では、2021年に改正された最新の標準管理規約(単棟型)における「総会②」について学び、理解を深めることができます。

総会の会議及び議事(第47条)

総会の定足数(第47条1項)

標準管理規約第47条1項では「総会の会議(WEB会議システム等を用いて開催する会議を含む。)は、前条第1項に定める議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない。」と定められています。

総会の定足数は過半数ではなく、半数以上です。

総会議事の決議要件(第47条2項)

標準管理規約第47条2項では「総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。」と定められています。

出席組合員の議決権の過半数で決する決議のことを「普通決議」と呼んでいます。

区分所有法上では、定足数の定めはなく、普通決議は区分所有法第39条1項にて「集会の議事は、この法律⼜は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する。」と定められています。

特別の総会議事の決議要件(第47条3項)

標準管理規約第47条3項では「次の各号に掲げる事項に関する総会の議事は、前項にかかわらず、組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上で決する。」と定められています。

第47条3項第一~五

一 規約の制定、変更又は廃止
二 敷地及び共用部分等の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの及び建築物の耐震改修の促進に関する法律第25条第2項に基づく認定を受けた建物の耐震改修を除く。)
三 区分所有法第58条第1項、第59条第1項又は第60条第1項の訴えの提起
四 建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧
五 その他総会において本項の方法により決議することとした事項

出席組合員の議決権の過半数で決する決議以外のことを「特別決議」と呼んでいます。

建替え決議の決議要件(第47条4項)

標準管理規約第47条4項では「建替え決議は、第2項にかかわらず、組合員総数の5分の4以上及び議決権総数の5分の4以上で行う。」と定められています。

マンション敷地売却決議の決議要件(第47条5項)

標準管理規約第47条5項では「マンション敷地売却決議は、第2項にかかわらず、組合員総数、議決権総数及び敷地利用権の持分の価格の各5分の4以上で行う。」と定められています。

出席組合員とみなされる定義(第47条6項)

標準管理規約第47条6項では電磁的方法が利用可能ではない場合と可能な場合の2パターンの規定が存在します。

(ア)電磁的方法が利用可能ではない場合

(第47条6項)
前5項の場合において、書面又は代理人によって議決権を行使する者は、出席組合員とみなす。

(イ)電磁的方法が利用可能な場合

(第47条6項)
前5項の場合において、書面、電磁的方法又は代理人によって議決権を行使する者は、出席組合員とみなす。

規約の制定、変更又は廃止決議にともなう特別の影響を及ぼす組合員の承諾(第47条7項)

標準管理規約第47条7項では「第3項第一号において、規約の制定、変更又は廃止が一部の組合員の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。この場合において、その組合員は正当な理由がなければこれを拒否してはならない。」と定められています。

敷地及び共用部分等の変更にともなう特別の影響を及ぼす組合員の承諾(第47条8項)

標準管理規約第47条8項では「第3項第二号において、敷地及び共用部分等の変更が、専有部分又は専用使用部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分を所有する組合員又はその専用使用部分の専用使用を認められている組合員の承諾を得なければならない。この場合において、その組合員は正当な理由がなければこれを拒否してはならない。」と定められています。

弁明する機会の付与(第47条9項)

標準管理規約第47条9項では「第3項第三号に掲げる事項の決議を行うには、あらかじめ当該組合員又は占有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。」と定められています。

総会における決議可能な事項(第47条10項)

標準管理規約第47条10項では「総会においては、第43条第1項によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議することができる。」と定められています。

【マンション標準管理規約(単棟型)第47条関係コメント】
① 第1項の定足数について、議決権を行使することができる組合員がWEB会議システム等を用いて出席した場合については、定足数の算出において出席組合員に含まれると考えられる。これに対して、議決権を行使することができない傍聴人としてWEB会議システム等を用いて議事を傍聴する組合員については、出席組合員には含まれないと考えられる。

② 第2項は、議長を含む出席組合員(書面(電磁的方法による議決権の行使が利用可能な場合は、電磁的方法を含む。)又は代理人によって議決権を行使する者を含む。)の議決権の過半数で決議し、過半数の賛成を得られなかった議事は否決とすることを意味するものである。

③ 特に慎重を期すべき事項を特別の決議によるものとした。あとの事項は、会議運営の一般原則である多数決によるものとした。

④ 区分所有法では、共用部分の変更に関し、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議(特別多数決議)で決することを原則としつつ、その形状又は効用の著しい変更を伴わない共用部分の変更については区分所有者及び議決権の各過半数によることとしている(なお、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、区分所有法第17条第2項(第18条第3項において準用する場合を含む。)の規定に留意が必要である。(第8項参照))。
建物の維持・保全に関して、区分所有者は協力してその実施に努めるべきであることを踏まえ、機動的な実施を可能とするこの区分所有法の規定を、標準管理規約上も確認的に規定したのが第47条第3項第二号である。
なお、建築物の耐震改修の促進に関する法律第25条の規定により、要耐震改修認定区分所有建築物の耐震改修については、区分所有法の特例として、敷地及び共用部分等の形状又は効用の著しい変更に該当する場合であっても、過半数の決議(普通決議)で実施可能となっている。

⑤ 第1項に基づき議決権総数の半数を有する組合員が出席する総会において、第2項に基づき出席組合員の議決権の過半数で決議(普通決議)される事項は、総組合員の議決権総数の4分の1超の賛成により決議されることに鑑み、例えば、大規模修繕工事のように多額の費用を要する事項については、組合員総数及び議決権総数の過半数で、又は議決権総数の過半数で決する旨規約に定めることもできる。

⑥ このような規定の下で、各工事に必要な総会の決議に関しては、例えば次のように考えられる。ただし、基本的には各工事の具体的内容に基づく個別の判断によることとなる。

ア)バリアフリー化の工事に関し、建物の基本的構造部分を取り壊す等の加工を伴わずに階段にスロープを併設し、手すりを追加する工事は普通決議により、階段室部分を改造したり、建物の外壁に新たに外付けしたりして、エレベーターを新たに設置する工事は特別多数決議により実施可能と考えられる。

イ)耐震改修工事に関し、柱やはりに炭素繊維シートや鉄板を巻き付けて補修する工事や、構造躯体に壁や筋かいなどの耐震部材を設置する工事で基本的構造部分への加工が小さいものは普通決議により実施可能と考えられる。

ウ)防犯化工事に関し、オートロック設備を設置する際、配線を、空き管路内に通したり、建物の外周に敷設したりするなど共用部分の加工の程度が小さい場合の工事や、防犯カメラ、防犯灯の設置工事は普通決議により、実施可能と考えられる。

エ)IT化工事に関し、光ファイバー・ケーブルの敷設工事を実施する場合、その工事が既存のパイプスペースを利用するなど共用部分の形状に変更を加えることなく実施できる場合や、新たに光ファイバー・ケーブルを通すために、外壁、耐力壁等に工事を加え、その形状を変更するような場合でも、建物の躯体部分に相当程度の加工を要するものではなく、外観を見苦しくない状態に復元するのであれば、普通決議により実施可能と考えられる。

オ)計画修繕工事に関し、鉄部塗装工事、外壁補修工事、屋上等防水工事、給水管更生・更新工事、照明設備、共聴設備、消防用設備、エレベーター設備の更新工事は普通決議で実施可能と考えられる。

カ)その他、集会室、駐車場、駐輪場の増改築工事などで、大規模なものや著しい加工を伴うものは特別多数決議により、窓枠、窓ガラス、玄関扉等の一斉交換工事、既に不要となったダストボックスや高置水槽等の撤去工事は普通決議により、実施可能と考えられる。

⑦ 建替え決議及びマンション敷地売却決議の賛否は、売渡し請求の相手方になるかならないかに関係することから、賛成者、反対者が明確にわかるよう決議することが必要である。なお、第4項及び第5項の決議要件については、法定の要件を確認的に規定したものである。

議決事項(第48条)

標準管理規約第48条では「次の各号に掲げる事項については、総会の決議を経なければならない。」と定められています。

第48条第一~十七

一 規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止
二 役員の選任及び解任並びに役員活動費の額及び支払方法
三 収支決算及び事業報告
四 収支予算及び事業計画
五 長期修繕計画の作成又は変更
六 管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法
七 修繕積立金の保管及び運用方法
八 適正化法第5条の3第1項に基づく管理計画の認定の申請、同法第5条の6第1項に基づく管理計画の認定の更新の申請及び同法第5条の7第1項に基づく管理計画の変更の認定の申請
九 第21条第2項に定める管理の実施
十 第28条第1項に定める特別の管理の実施並びにそれに充てるための資金の借入れ及び修繕積立金の取崩し
十一 区分所有法第57条第2項及び前条第3項第三号の訴えの提起並びにこれらの訴えを提起すべき者の選任
十二 建物の一部が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧
十三 円滑化法第102条第1項に基づく除却の必要性に係る認定の申請
十四 区分所有法第62条第1項の場合の建替え及び円滑化法第108条第1項の場合のマンション敷地売却
十五 第28条第2項及び第3項に定める建替え等に係る計画又は設計等の経費のための修繕積立金の取崩し
十六 組合管理部分に関する管理委託契約の締結
十七 その他管理組合の業務に関する重要事項

議事録の作成、保管等(第49条)

標準管理規約第49条では電磁的方法が利用可能ではない場合と可能な場合の2パターンの規定が存在します。

(ア)電磁的方法が利用可能ではない場合

(第49条1項)
総会の議事については、議長は、議事録を作成しなければならない。

(第49条2項)
議事録には、議事の経過の要領及びその結果を記載し、議長及び議長の指名する2名の総会に出席した組合員がこれに署名しなければならない。

(第49条3項)
理事長は、議事録を保管し、組合員又は利害関係人の書面による請求があったときは、議事録の閲覧をさせなければならない。この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。

(第49条4項)
理事長は、所定の掲示場所に、議事録の保管場所を掲示しなければならない。

(イ)電磁的方法が利用可能な場合

(第49条1項)
総会の議事については、議長は、書面又は電磁的記録により、議事録を作成しなければならない。

(第49条2項)
議事録には、議事の経過の要領及びその結果を記載し、又は記録しなければならない。

(第49条3項)
前項の場合において、議事録が書面で作成されているときは、議長及び議長の指名する2名の総会に出席した組合員がこれに署名しなければならない。

(第49条4項)
第2項の場合において、議事録が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録された情報については、議長及び議長の指名する2名の総会に出席した組合員が電子署名(電子署名及び認証業務に関する法律(平成12年法律第102号)第2条第1項の「電子署名」をいう。以下同じ。)をしなければならない。

(第49条5項)
理事長は、議事録を保管し、組合員又は利害関係人の書面又は電磁的方法による請求があったときは、議事録の閲覧(議事録が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録された情報の内容を紙面又は出力装置の映像面に表示する方法により表示したものの当該議事録の保管場所における閲覧をいう。)をさせなければならない。この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。

(第49条6項)
理事長は、所定の掲示場所に、議事録の保管場所を掲示しなければならない。

【マンション標準管理規約(単棟型)第49条関係コメント】
① 第3項の「利害関係人」とは、敷地、専有部分に対する担保権者、差押え債権者、賃借人、組合員からの媒介の依頼を受けた宅地建物取引業者等法律上の利害関係がある者をいい、単に事実上利益や不利益を受けたりする者、親族関係にあるだけの者等は対象とはならない。

② 電磁的記録の具体例には、磁気ディスク、磁気テープ等のような磁気的方式によるもの、ICカード、ICメモリー等のような電子的方式によるもの、CD-Rのような光学的方式によるものなどによって調製するファイルに情報を記録したものがある。

③ 電子署名及び認証業務に関する法律第2条第1項の電子署名とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるもの)に記録することができる情報について行われる措置であって、次のア)及びイ)のいずれにも該当するものである。

ア)当該情報が当該措置を行ったものの作成に係るものであることを示すためのものであること。

イ)当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。

書面による決議(第50条)

標準管理規約第50条では電磁的方法が利用可能ではない場合と可能な場合の2パターンの規定が存在します。

(ア)電磁的方法が利用可能ではない場合

(50条1項)
規約により総会において決議をすべき場合において、組合員全員の承諾があるときは、書面による決議をすることができる。

(第50条2項)
規約により総会において決議すべきものとされた事項については、組合員全員の書面による合意があったときは、書面による決議があったものとみなす。

(第50条3項)
規約により総会において決議すべきものとされた事項についての書面による決議は、総会の決議と同一の効力を有する。

(第50条4項)
前条第3項及び第4項の規定は、書面による決議に係る書面について準用する。

(第50条5項)
総会に関する規定は、書面による決議について準用する。

(イ)電磁的方法が利用可能な場合

(第50条1項)
規約により総会において決議をすべき場合において、組合員全員の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議をすることができる。ただし、電磁的方法による決議に係る組合員の承諾については、あらかじめ、組合員に対し、その用いる電磁的方法の種類及び内容を示し、書面又は電磁的方法による承諾を得なければならない。

(第50条2項)
前項の電磁的方法の種類及び内容は、次に掲げる事項とする。

一 電磁的方法のうち、送信者が使用するもの
二 ファイルへの記録の方式

(第50条3項)
規約により総会において決議すべきものとされた事項については、組合員の全員の書面又は電磁的方法による合意があったときは、書面又は電磁的方法による決議があったものとみなす。

(第50条4項)
規約により総会において決議すべきものとされた事項についての書面又は電磁的方法による決議は、総会の決議と同一の効力を有する。

(第50条5項)
前条第5項及び第6項の規定は、書面又は電磁的方法による決議に係る書面並びに第1項及び第3項の電磁的方法が行われた場合に当該電磁的方法により作成される電磁的記録について準用する。

(第50条6項)
総会に関する規定は、書面又は電磁的方法による決議について準用する。

まとめ

本記事の標準管理規約における総会②についてご理解頂けたでしょうか。

総会での議案の決議要件は、大きく分類すると「普通決議」と「特別決議」の2つに分けられます。

そのため、特別決議の議案であるにも関わらず普通決議の議案として決議され、特別決議の決議要件に満たなかった場合は、後から無効となるようなことが十分考えられます。

ただし、総会上程される議案のなかには、前例もなく普通決議なのか特別決議なのか明確ではないようなことがでてくることも想定されます。

そのような時には、管理を委託している建物管理会社や、一般社団法人のマンション管理業協会などのマンション専門機関へ確認してみることなどが有益です。

本記事に記載した管理組合総会における正しい決議要件をしっかりと理解して頂き、ご自身のマンションでの適切な暮らしや、資産価値の維持・向上に努めて下さい。

本記事も読んでいただきどうもありがとうございました。

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