マンションなどの共同住宅では、各居住者が自分勝手に生活してしまうと廊下やゴミ置場をはじめ、マンション館内全体が荒れてしまったり、居住者間のトラブルが絶えないようなマンションとなってしまいます。
このようなことを防ぐため、分譲マンションを購入すると、そのマンションの区分所有者で構成される団体(規約上で「管理組合」と呼ばれることになる団体)へ強制的に加入をすることとなり、法律の定めにしたがってマンションを管理していくことになります。
その代表的な法律が分譲マンションなど区分所有建物の各所有者の権利やマンション全体の管理方法などを定めた「区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)」と呼ばれる法律になります。
しかし、居住者の属性や家族構成、立地、築年数、設備・・・などなど、世界に1つとして同じマンションなど存在しません。
そのため、区分所有法だけでは居住者の方たちの適切な暮らしや的確な建物の維持・管理をしていくことには無理が生じてしまいます。
そこで、区分所有法ではそれぞれの区分所有マンションにおいて独自のルールを定めるための規約を制定することを認めています。(ただし、規約で定められないこともあります。)
そして、その規約の標準的な見本を国土交通省が作成しており、公表されているものが「標準管理規約」と呼ばれるものです。
本記事では、2021年に改正された最新の標準管理規約(単棟型)における「理事会」について学び、理解を深めることができます。
理事会(第51条)
理事会の構成(第51条1項)
標準管理規約第51条1項では「理事会は、理事をもって構成する。」と定められています。
役員である監事は理事会のメンバーではありません。
しかし、監事は理事会に出席し、意見を述べることとされています。
理事会の職務(第51条2項)
標準管理規約第51条2項では「理事会は、次に掲げる職務を行う。」と定められています。
一 規約若しくは使用細則等又は総会の決議により理事会の権限として定められた管理組合の業務執行の決定
二 理事の職務の執行の監督
三 理事長、副理事長及び会計担当理事の選任及び解任
【マンション標準管理規約(単棟型)第51条関係コメント】
① 管理組合の業務執行の決定だけでなく、業務執行の監視・監督機関としての機能を理事会が有することを明確化するとともに、第35条第3項の規定に基づく理事長等の選任及び解任を含め、理事会の職務について明示した。
② 理事の互選により選任された理事長、副理事長及び会計担当理事については、本項に基づき、理事の過半数の一致によりその職を解くことができる。ただし、その理事としての地位については、第35条第2項及び第48条第二号に基づき、総会の決議を経なければその職を解くことができない。
招集(第52条)
理事会の招集(第52条1項)
標準管理規約第52条1項では「理事会は、理事長が招集する。」と定められています。
理事による理事会の招集請求(第52条2項)
標準管理規約第52条2項では「理事が○分の1以上の理事の同意を得て理事会の招集を請求した場合には、理事長は速やかに理事会を招集しなければならない。」と定められています。
理事による理事会招集(第52条3項)
標準管理規約第52条3項では「前項の規定による請求があった日から○日以内に、その請求があった日から○日以内の日を理事会の日とする理事会の招集の通知が発せられない場合には、その請求をした理事は、理事会を招集することができる。」と定められています。
理事会の招集手続規定の準用(第52条4項)
標準管理規約第52条1項では「理事会の招集手続については、第43条(建替え決議又はマンション敷地売却決議を会議の目的とする場合の第1項及び第4項から第8項までを除く。)の規定を準用する。この場合において、同条中「組合員」とあるのは「理事及び監事」と、同条第9項中「理事会の承認」とあるのは「理事及び監事の全員の同意」と読み替えるものとする。ただし、理事会において別段の定めをすることができる。」と定められています。
【マンション標準管理規約(単棟型)第52条関係コメント】
各理事は、理事会の開催が必要であると考える場合には、理事長に対し、理事会の目的である事項を示して、理事会の招集を促すこともできる。ただし、理事長が招集しない場合には、第2項の手続により招集を請求することとなる。それでも理事長が招集の通知を発出しない場合には、招集を請求した理事が、理事会を招集できることとなる。
なお、第4項で理事会の招集手続につき第43条を準用しているが、WEB会議システム等を用いて開催する理事会についても同条が準用され、その場合の開催方法の考え方については、コメント第43条第1項関係を参照。
招集(第53条)
理事会開催の要件(第53条1項)
標準管理規約第53条1項では「理事会の会議(WEB会議システム等を用いて開催する会議を含む。)は、理事の半数以上が出席しなければ開くことができず、その議事は出席理事の過半数で決する。」と定められています。
書面又は電磁的方法による理事会の決議(第53条2項)
標準管理規約第53条2項では「次条第1項第五号に掲げる事項については、理事の過半数の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議によることができる。」と定められています。
特別の利害関係を有する理事(第53条3項)
標準管理規約第53条3項では「前2項の決議について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。」と定められています。
理事会議事録規定の準用(第53条4項)
標準管理規約第53条4項では電磁的方法が利用可能ではない場合と可能な場合の2パターンの規定が存在します。
(第53条4項)
議事録については、第49条(第4項を除く。)の規定を準用する。ただし、第49条第2項中「総会に出席した組合員」とあるのは「理事会に出席した理事」と読み替えるものとする。
(第53条4項)
議事録については、第49条(第6項を除く。)の規定を準用する。ただし、第49条第3項中「総会に出席した組合員」とあるのは「理事会に出席した理事」と読み替えるものとする。
【マンション標準管理規約(単棟型)第53条関係コメント】
① 理事は、総会で選任され、組合員のため、誠実にその職務を遂行するものとされている。このため、理事会には本人が出席して、議論に参加し、議決権を行使することが求められる。
② したがって、理事の代理出席(議決権の代理行使を含む。以下同じ。)を、規約において認める旨の明文の規定がない場合に認めることは適当でない。
③ 「理事に事故があり、理事会に出席できない場合は、その配偶者又は一親等の親族(理事が、組合員である法人の職務命令により理事となった者である場合は、法人が推挙する者)に限り、代理出席を認める」旨を定める規約の規定は有効であると解されるが、あくまで、やむを得ない場合の代理出席を認めるものであることに留意が必要である。この場合においても、あらかじめ、総会において、それぞれの理事ごとに、理事の職務を代理するにふさわしい資質・能力を有するか否かを審議の上、その職務を代理する者を定めておくことが望ましい。
なお、外部専門家など当人の個人的資質や能力等に着目して選任されている理事については、代理出席を認めることは適当でない。
④ 理事がやむを得ず欠席する場合には、代理出席によるのではなく、事前に議決権行使書又は意見を記載した書面を出せるようにすることが考えられる。これを認める場合には、理事会に出席できない理事が、あらかじめ通知された事項について、書面をもって表決することを認める旨を、規約の明文の規定で定めることが必要である。
⑤ 理事会に出席できない理事に対しては、理事会の議事についての質問機会の確保、書面等による意見の提出や議決権行使を認めるなどの配慮をする必要がある。
また、WEB会議システム等を用いて開催する理事会を開催する場合は、当該理事会における議決権行使の方法等を、規約や第70条に基づく細則において定めることも考えられ、この場合においても、規約や使用細則等に則り理事会議事録を作成することが必要となる点などについて留意する必要がある。
なお、第1項の定足数について、理事がWEB会議システム等を用いて出席した場合については、定足数の算出において出席理事に含まれると考えられる。
⑥ 第2項は、本来、①のとおり、理事会には理事本人が出席して相互に議論することが望ましいところ、例外的に、第54条第1項第五号に掲げる事項については、申請数が多いことが想定され、かつ、迅速な審査を要するものであることから、書面又は電磁的方法による決議を可能とするものである。
⑦ 第3項については、第37条の2関係を参照のこと。
議決事項(第54条)
理事会の決議事項(第54条1項)
標準管理規約第54条1項では「理事会は、この規約に別に定めるもののほか、次の各号に掲げる事項を決議する。」と定められています。
一 収支決算案、事業報告案、収支予算案及び事業計画案
二 規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止に関する案
三 長期修繕計画の作成又は変更に関する案
四 その他の総会提出議案
五 第17条、第21条及び第22条に定める承認又は不承認
六 第58条第3項に定める承認又は不承認
七 第60条第4項に定める未納の管理費等及び使用料の請求に関する訴訟その他法的措置の追行
八 第67条に定める勧告又は指示等
九 総会から付託された事項
十 災害等により総会の開催が困難である場合における応急的な修繕工事の実施等
十一 理事長、副理事長及び会計担当理事の選任及び解任
理事会決議による資金の借入れ及び修繕積立金の取崩し(第54条2項)
標準管理規約第54条2項では「第48条の規定にかかわらず、理事会は、前項第十号の決議をした場合においては、当該決議に係る応急的な修繕工事の実施に充てるための資金の借入れ及び修繕積立金の取崩しについて決議することができる。」と定められています。
【マンション標準管理規約(単棟型)第54条関係コメント】
① 第1項第十号の「災害等により総会の開催が困難である場合における応急的な修繕工事の実施等」の具体的内容については、次のとおりである。
ア)緊急対応が必要となる災害の範囲としては、地震、台風、集中豪雨、竜巻、落雷、豪雪、噴火などが考えられる。なお、「災害等」の「等」の例としては、災害と連動して又は単独で発生する火災、爆発、物の落下などが該当する。
イ)「総会の開催が困難である場合」とは、避難や交通手段の途絶等により、組合員の総会への出席が困難である場合である。
ウ)「応急的な修繕工事」は、保存行為に限られるものではなく、二次被害の防止や生活の維持等のために緊急対応が必要な、共用部分の軽微な変更(形状又は効用の著しい変更を伴わないもの)や狭義の管理行為(変更及び保存行為を除く、通常の利用、改良に関する行為)も含まれ、例えば、給水・排水、電気、ガス、通信といったライフライン等の応急的な更新、エレベーター附属設備の更新、炭素繊維シート巻付けによる柱の応急的な耐震補強などが「応急的な修繕工事」に該当する。また、「応急的な修繕工事の実施等」の「等」としては、被災箇所を踏まえた共用部分の使用方法の決定等が該当する。
なお、理事会の開催も困難な場合の考え方については、第21条関係⑪を参照のこと。
② 第2項は、応急的な修繕工事の実施に伴い必要となる資金の借入れ及び修繕積立金の取崩しについて、第48条の規定によれば総会の決議事項であるところ、第1項第十号の決議に基づき実施する場合には、理事会で決議することができるとするものである。
③ ①のほかにも、共用部分の軽微な変更及び狭義の管理行為については、大規模マンションなど、それぞれのマンションの実態に応じて、機動的な組合運営を行う観点から、これらのうち特定の事項について、理事会の決議事項として規約に定めることも可能である。その場合には、理事の行為が自己契約、双方代理など組合員全体の利益に反することとならないよう監事による監視機能の強化を図るなどの取組み、理事会活動の事前・事後の組合員に対する透明性の確保等について配慮することが必要である。
専門委員会の設置(第55条)
理事会による専門委員会の設置(第55条1項)
標準管理規約第55条1項では「理事会は、その責任と権限の範囲内において、専門委員会を設置し、特定の課題を調査又は検討させることができる。」と定められています。
理事会への具申(第55条2項)
標準管理規約第55条2項では「専門委員会は、調査又は検討した結果を理事会に具申する。」と定められています。
【マンション標準管理規約(単棟型)第55条関係コメント】
① 専門委員会の検討対象が理事会の責任と権限を越える事項である場合や、理事会活動に認められている経費以上の費用が専門委員会の検討に必要となる場合、運営細則の制定が必要な場合等は、専門委員会の設置に総会の決議が必要となる。
② 専門委員会は、検討対象に関心が強い組合員を中心に構成されるものである。必要に応じ検討対象に関する専門的知識を有する者(組合員以外も含む。)の参加を求めることもできる。
まとめ
本記事記載の標準管理規約「理事会」についてご理解頂けたでしょうか。
管理組合の活動は、理事会が主体的となって活動することがほとんどなので、理事会が機能していないと管理組合全体の活動に大きな影響を与えることは確実です。
逆に理事会が積極的に主体的に活動している管理組合では、管理に無関心な組合員が多いマンションであったとしても的確な管理活動が実施されていることも十分に想定できます。
しかし、理事長の権限や理事会の決議だけで実施できることもありますが、多くの事項は総会の決議がなければ実施できないのが管理組合です。
理事会の活動としての職務と規則をしっかりと理解して、主体的に積極的に活動する理事会をつくっていって下さい。
それが、マンション全体の適切な暮らしと資産価値の維持・向上に直結していきます。
本記事も読んでいただきどうもありがとうございました。