マンションなどの共同住宅では、各居住者が自分勝手に生活してしまうと廊下やゴミ置場をはじめ、マンション館内全体が荒れてしまったり、居住者間のトラブルが絶えないようなマンションとなってしまいます。
このようなことを防ぐため、分譲マンションを購入すると、そのマンションの区分所有者で構成される団体(規約上で「管理組合」と呼ばれることになる団体)へ強制的に加入をすることとなり、法律の定めにしたがってマンションを管理していくことになります。
その代表的な法律が分譲マンションなど区分所有建物の各所有者の権利やマンション全体の管理方法などを定めた「区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)」と呼ばれる法律になります。
しかし、居住者の属性や家族構成、立地、築年数、設備・・・などなど、世界に1つとして同じマンションなど存在しません。
そのため、区分所有法だけでは居住者の方たちの適切な暮らしや的確な建物の維持・管理をしていくことには無理が生じてしまいます。
そこで、区分所有法ではそれぞれの区分所有マンションにおいて独自のルールを定めるための規約を制定することを認めています。(ただし、規約で定められないこともあります。)
そして、その規約の標準的な見本を国土交通省が作成しており、公表されているものが「標準管理規約」と呼ばれるものです。
本記事では、2021年に改正された最新の標準管理規約(単棟型)における「総会➀」について学び、理解を深めることができます。
総会(第42条)
総会の組織(第42条1項)
標準管理規約第42条1項では「管理組合の総会は、総組合員で組織する。」と定められています。
総会の種類(第42条2項)
標準管理規約第42条2項では「総会は、通常総会及び臨時総会とし、区分所有法に定める集会とする。」と定められています。
通常総会の招集(第42条3項)
標準管理規約第42条3項では「理事長は、通常総会を、毎年1回新会計年度開始以後2か月以内に招集しなければならない。」と定められています。
区分所有法では、管理者が集会(通常総会)を開催することは義務づけていますが、開催の時期については言及していません。
臨時総会の招集(第42条4項)
標準管理規約第42条4項では「理事長は、必要と認める場合には、理事会の決議を経て、いつでも臨時総会を招集することができる。」と定められています。
総会の議長(第42条5項)
標準管理規約第42条5項では「総会の議長は、理事長が務める。」と定められています。
【マンション標準管理規約(単棟型)第42条関係コメント】
(第3項関係)
災害又は感染症の感染拡大等への対応として、WEB会議システム等を用いて会議を開催することも考えられるが、やむを得ない場合においては、通常総会を必ずしも「新会計年度開始以後2か月以内」に招集する必要はなく、これらの状況が解消された後、遅滞なく招集すれば足りると考えられる。
(第5項関係)
総会において、議長を選任する旨の定めをすることもできる。
招集手続(第43条)
総会招集の通知期間(第43条1項)
標準管理規約第43条1項では「総会を招集するには、少なくとも会議を開く日の2週間前(会議の目的が建替え決議又はマンション敷地売却決議であるときは2か月前)までに、会議の日時、場所(WEB会議システム等を用いて会議を開催するときは、その開催方法)及び目的を示して、組合員に通知を発しなければならない。」と定められています。
区分所有法においては、区分所有法第35条1項にて「集会の招集の通知は、会⽇より少なくとも⼀週間前に、会議の⽬的たる事項を⽰して、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。」と定められています。
総会招集通知のあて先(第43条2項)
標準管理規約第43条2項では「前項の通知は、管理組合に対し組合員が届出をしたあて先に発するものとする。ただし、その届出のない組合員に対しては、対象物件内の専有部分の所在地あてに発するものとする。」と定められています。
掲示による総会招集通知(第43条3項)
標準管理規約第43条3項では「第1項の通知は、対象物件内に居住する組合員及び前項の届出のない組合員に対しては、その内容を所定の掲示場所に掲示することをもって、これに代えることができる。」と定められています。
議案の要領の通知(第43条4項)
標準管理規約第43条4項では「第1項の通知をする場合において、会議の目的が第47条第3項第一号、第二号若しくは第四号に掲げる事項の決議又は建替え決議若しくはマンション敷地売却決議であるときは、その議案の要領をも通知しなければならない。」と定められています。
(標準管理規約第47条3項)
次の各号に掲げる事項に関する総会の議事は、前項にかかわらず、組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上で決する。
一 規約の制定、変更又は廃止
二 敷地及び共用部分等の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの及び建築物の耐震改修の促進に関する法律第25条第2項に基づく認定を受けた建物の耐震改修を除く。)
三 区分所有法第58条第1項、第59条第1項又は第60条第1項の訴えの提起
四 建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧
五 その他総会において本項の方法により決議することとした事項
建替え決議による総会招集通知(第43条5項)
標準管理規約第43条5項では「会議の目的が建替え決議であるときは、前項に定める議案の要領のほか、次の事項を通知しなければならない。」と定められています。
一 建替えを必要とする理由
二 建物の建替えをしないとした場合における当該建物の効用の維持及び回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに要する費用の額及びその内訳
三 建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容
四 建物につき修繕積立金として積み立てられている金額
敷地売却決議による総会招集通知(第43条6項)
標準管理規約第43条6項では「会議の目的がマンション敷地売却決議であるときは、第4項に定める議案の要領のほか、次の事項を通知しなければならない。」と定められています。
一 売却を必要とする理由
二 次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に定める事項
イ マンションが円滑化法第102条第2項第一号に該当するとして同条第1項の認定(以下「特定要除却認定」という。)を受けている場合 次に掲げる事項
(1) 建築物の耐震改修の促進に関する法律(平成7年法律第123号)第2条第2項に規定する耐震改修又はマンションの建替えをしない理由
(2) (1)の耐震改修に要する費用の概算額
ロ マンションが円滑化法第102条第2項第二号に該当するとして特定要除却認定を受けている場合 次に掲げる事項
(1) 火災に対する安全性の向上を目的とした改修又はマンションの建替えをしない理由
(2) (1)の改修に要する費用の概算額
ハ マンションが円滑化法第102条第2項第三号に該当するとして特定要除却認定を受けている場合 次に掲げる事項
(1) 外壁等の剝離及び落下の防止を目的とした改修又はマンションの建替えをしない理由
(2) (1)の改修に要する費用の概算額
建替え決議・敷地売却決議の総会招集通知期間(第43条7項)
標準管理規約第43条7項では「建替え決議又はマンション敷地売却決議を目的とする総会を招集する場合、少なくとも会議を開く日の1か月前までに、当該招集の際に通知すべき事項について組合員に対し説明を行うための説明会を開催しなければならない。」と定められています。
占有者への掲示による総会招集通知(第43条8項)
標準管理規約第43条8項では「第45条第2項の場合には、第1項の通知を発した後遅滞なく、その通知の内容を、所定の掲示場所に掲示しなければならない。」と定められています。
緊急時による総会招集期間(第43条9項)
標準管理規約第43条9項では「第1項(会議の目的が建替え決議又はマンション敷地売却決議であるときを除く。)にかかわらず、緊急を要する場合には、理事長は、理事会の承認を得て、5日間を下回らない範囲において、第1項の期間を短縮することができる。」と定められています。
【マンション標準管理規約(単棟型)第43条関係コメント】
(第1項関係)
WEB会議システム等を用いて会議を開催する場合における通知事項のうち、「開催方法」については、当該WEB会議システム等にアクセスするためのURLが考えられ、これに合わせて、なりすまし防止のため、WEB会議システム等を用いて出席を予定する組合員に対しては個別にID及びパスワードを送付することが考えられる。
(第3項、第8項関係)
所定の掲示場所は、建物内の見やすい場所に設けるものとする。以下同じ。
(第7項関係)
総会と同様に、WEB会議システム等を用いて説明会を開催することも可能である。
組合員の総会招集権(第44条)
組合員による総会招集請求(第44条1項)
標準管理規約第44条1項では「組合員が組合員総数の5分の1以上及び第46条第1項に定める議決権総数の5分の1以上に当たる組合員の同意を得て、会議の目的を示して総会の招集を請求した場合には、理事長は、2週間以内にその請求があった日から4週間以内の日(会議の目的が建替え決議又はマンション敷地売却決議であるときは、2か月と2週間以内の日)を会日とする臨時総会の招集の通知を発しなければならない。」と定められています。
区分所有法第34条3項では「区分所有者の五分の⼀以上で議決権の五分の⼀以上を有するものは、管理者に対し、会議の⽬的たる事項を⽰して、集会の招集を請求することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。」と定められています。
この定めにより、1/5以上よりも区分所有者からの集会招集を容易にするために、規約で1/7以上や1/10以上などに変更することも可能です。
組合員による総会招集権限(第44条2項)
標準管理規約第44条2項では「理事長が前項の通知を発しない場合には、前項の請求をした組合員は、臨時総会を招集することができる。」と定められています。
組合員による総会招集時の議長(第44条3項)
標準管理規約第44条3項では電磁的方法が利用可能ではない場合と可能な場合の2パターンの規定が存在します。
(第44条3項)
前2項により招集された臨時総会においては、第42条第5項にかかわらず、議長は、総会に出席した組合員(書面又は代理人によって議決権を行使する者を含む。)の議決権の過半数をもって、組合員の中から選任する。
(第44条3項)
前2項により招集された臨時総会においては、第42条第5項にかかわらず、議長は、総会に出席した組合員(書面、電磁的方法又は代理人によって議決権を行使する者を含む。)の議決権の過半数をもって、組合員の中から選任する。
出席資格(第45条)
組合員以外の総会出席者(第45条1項)
標準管理規約第45条1項では「組合員のほか、理事会が必要と認めた者は、総会に出席することができる。」と定められています。
占有者による総会出席時の意見陳述(第45条2項)
標準管理規約第45条2項では「区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者は、会議の目的につき利害関係を有する場合には、総会に出席して意見を述べることができる。この場合において、総会に出席して意見を述べようとする者は、あらかじめ理事長にその旨を通知しなければならない。」と定められています。
【マンション標準管理規約(単棟型)第45条関係コメント】
理事会が必要と認める者の例としては、マンション管理業者、管理員、マンション管理士等がある。
議決権(第46条)
各組合員の議決権の割合(第46条1項)
標準管理規約第46条1項では「各組合員の議決権の割合は、別表第5に掲げるとおりとする。」と定められています。
第46条1項で述べられている「別表第5」とは規約本文の後に「各住戸ごとの議決権割合」を別表第5として記載することを想定し、規定しています。
専有部共有者の議決権(第46条2項)
標準管理規約第46条2項では「住戸1戸が数人の共有に属する場合、その議決権行使については、これら共有者をあわせて一の組合員とみなす。」と定められています。
専有部共有者の議決権行使者の選任(第46条3項)
標準管理規約第46条3項では「前項により一の組合員とみなされる者は、議決権を行使する者1名を選任し、その者の氏名をあらかじめ総会開会までに理事長に届け出なければならない。」と定められています。
書面又は代理人による議決権行使(第46条4項)
標準管理規約第46条4項では「組合員は、書面又は代理人によって議決権を行使することができる。」と定められています。
議決権行使ができる代理人(第46条5項)
標準管理規約第46条5項では「組合員が代理人により議決権を行使しようとする場合において、その代理人は、以下の各号に掲げる者でなければならない。」と定められています。
一 その組合員の配偶者(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)又は一親等の親族
二 その組合員の住戸に同居する親族
三 他の組合員
「一親等の親族」とは、その組合員の親または子供のことを指します。
代理権を証する書面の提出(第46条6項)
標準管理規約第46条6項では「組合員又は代理人は、代理権を証する書面を理事長に提出しなければならない。」と定められています。
電磁的方法による議決権行使(第46条7項及び8項)
電磁的方法が利用可能な場合、標準管理規約第46条7項及び8項を定めることを想定しています。
(第46条7項)
組合員は、第4項の書面による議決権の行使に代えて、電磁的方法によって議決権を行使することができる。
(第46条8項)
組合員又は代理人は、第6項の書面の提出に代えて、電磁的方法によって提出することができる。
【マンション標準管理規約(単棟型)第46条関係コメント】
① 議決権については、共用部分の共有持分の割合、あるいはそれを基礎としつつ賛否を算定しやすい数字に直した割合によることが適当である。
② 各住戸の面積があまり異ならない場合は、住戸1戸につき各1個の議決権により対応することも可能である。
また、住戸の数を基準とする議決権と専有面積を基準とする議決権を併用することにより対応することも可能である。
③ ①や②の方法による議決権割合の設定は、各住戸が比較的均質である場合には妥当であるものの、高層階と低層階での眺望等の違いにより住戸の価値に大きな差が出る場合もあることのほか、民法第252条本文が共有物の管理に関する事項につき各共有者の持分の価格の過半数で決すると規定していることに照らして、新たに建てられるマンションの議決権割合について、より適合的な選択肢を示す必要があると考えられる。これにより、特に、大規模な改修や建替え等を行う旨を決定する場合、建替え前のマンションの専有部分の価値等を考慮して建替え後の再建マンションの専有部分を配分する場合等における合意形成の円滑化が期待できるといった考え方もある。
このため、住戸の価値に大きな差がある場合においては、単に共用部分の共有持分の割合によるのではなく、専有部分の階数(眺望、日照等)、方角(日照等)等を考慮した価値の違いに基づく価値割合を基礎として、議決権の割合を定めることも考えられる。
この価値割合とは、専有部分の大きさ及び立地(階数・方角等)等を考慮した効用の違いに基づく議決権割合を設定するものであり、住戸内の内装や備付けの設備等住戸内の豪華さ等も加味したものではないことに留意する。
また、この価値は、必ずしも各戸の実際の販売価格に比例するものではなく、全戸の販売価格が決まっていなくても、各戸の階数・方角(眺望、日照等)などにより、別途基準となる価値を設定し、その価値を基にした議決権割合を新築当初に設定することが想定される。ただし、前方に建物が建築されたことによる眺望の変化等の各住戸の価値に影響を及ぼすような事後的な変化があったとしても、それによる議決権割合の見直しは原則として行わないものとする。
なお、このような価値割合による議決権割合を設定する場合には、分譲契約等によって定まる敷地等の共有持分についても、価値割合に連動させることが考えられる。
④ 特定の者について利害関係が及ぶような事項を決議する場合には、その特定の少数者の意見が反映されるよう留意する。
⑤ 総会は管理組合の最高の意思決定機関であることを踏まえると、代理人は、区分所有者としての組合員の意思が総会に適切に反映されるよう、区分所有者の立場から見て利害関係が一致すると考えられる者に限定することが望ましい。第5項は、この観点から、組合員が代理人によって議決権を行使する場合の代理人の範囲について規約に定めることとした場合の規定例である。また、総会の円滑な運営を図る観点から、代理人の欠格事由として暴力団員等を規約に定めておくことも考えられる。なお、成年後見人、財産管理人等の組合員の法定代理人については、法律上本人に代わって行為を行うことが予定されている者であり、当然に議決権の代理行使をする者の範囲に含まれる。
⑥ 書面による議決権の行使とは、総会には出席しないで、総会の開催前に各議案ごとの賛否を記載した書面(いわゆる「議決権行使書」)を総会の招集者に提出することである。他方、代理人による議決権の行使とは、代理権を証する書面(いわゆる「委任状」。電磁的方法による提出が利用可能な場合は、電磁的方法を含む。)によって、組合員本人から授権を受けた代理人が総会に出席して議決権を行使することである。
このように、議決権行使書と委任状は、いずれも組合員本人が総会に出席せずに議決権の行使をする方法であるが、議決権行使書による場合は組合員自らが主体的に賛否の意思決定をするのに対し、委任状による場合は賛否の意思決定を代理人に委ねるという点で性格が大きく異なるものである。そもそも総会が管理組合の最高の意思決定機関であることを考えると、組合員本人が自ら出席して、議場での説明や議論を踏まえて議案の賛否を直接意思表示することが望ましいのはもちろんである。しかし、やむを得ず総会に出席できない場合であっても、組合員の意思を総会に直接反映させる観点からは、議決権行使書によって組合員本人が自ら賛否の意思表示をすることが望ましく、そのためには、総会の招集の通知において議案の内容があらかじめなるべく明確に示されることが重要であることに留意が必要である。
⑦ 代理人による議決権の行使として、誰を代理人とするかの記載のない委任状(いわゆる「白紙委任状」)が提出された場合には、当該委任状の効力や議決権行使上の取扱いについてトラブルとなる場合があるため、そのようなトラブルを防止する観点から、例えば、委任状の様式等において、委任状を用いる場合には誰を代理人とするかについて主体的に決定することが必要であること、適当な代理人がいない場合には代理人欄を空欄とせず議決権行使書によって自ら賛否の意思表示をすることが必要であること等について記載しておくことが考えられる。
⑧ WEB会議システム等を用いて総会に出席している組合員が議決権を行使する場合の取扱いは、WEB会議システム等を用いずに総会に出席している組合員が議決権を行使する場合と同様であり、区分所有法第39条第3項に規定する規約の定めや集会の決議は不要である。ただし、第三者が組合員になりすました場合やサイバー攻撃や大規模障害等による通信手段の不具合が発生した場合等には、総会の決議が無効となるおそれがあるなどの課題に留意する必要がある。
① 委任状や議決権行使書に決められた様式はなく、組合員の賛否の意思がわかるものであれば有効とされる
② 本人の署名がれば押印がなくても有効とされる
③ 委任状や議決権行使書が事前に提出されていても総会に出席した時は、総会での意思が優先される
まとめ
本記事における管理組合総会についてご理解頂けたでしょうか。
管理組合総会は最高意思決定機関とも呼ばれる管理組合にとって最も大切な管理活動と言っても過言ではありません。
しかし、総会招集の手続きなど適正に行われていなければ、せっかく総会を開催して賛否が決まった議案も無効になってしまいます。
また、議決権行使書や委任状も適正に提出しなければ無効票として扱われてしまいます。
管理組合総会はご自身の所有するマンションを適切に管理・維持していくためには非常に重要なものとなりますので、本記事の内容をしっかりと理解して、正しい総会の開催と決議ができるように心がけて下さい。
本記事も読んでいただきどうもありがとうございました。