標準管理規約

標準管理規約(総則)

マンションなどの共同住宅では、各居住者が自分勝手に生活してしまうと廊下やゴミ置場をはじめ、マンション館内全体が荒れてしまったり、居住者間のトラブルが絶えないようなマンションとなってしまいます。

このようなことを防ぐため、分譲マンションを購入すると、そのマンションの区分所有者で構成される団体(規約上で「管理組合」と呼ばれることになる団体)へ強制的に加入をすることとなり、法律の定めにしたがってマンションを管理していくことになります。

その代表的な法律が分譲マンションなど区分所有建物の各所有者の権利やマンション全体の管理方法などを定めた「区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)」と呼ばれる法律になります。

しかし、居住者の属性や家族構成、立地、築年数、設備・・・などなど、世界に1つとして同じマンションなど存在しません。

そのため、区分所有法だけでは居住者の方たちの適切な暮らしや的確な建物の維持・管理をしていくことには無理が生じてしまいます。

そこで、区分所有法ではそれぞれの区分所有マンションにおいて独自のルールを定めるための規約を制定することを認めています。(ただし、規約で定められないこともあります。)

そして、その規約の標準的な見本を国土交通省が作成しており、公表されているものが「標準管理規約」と呼ばれるものです。

本記事では、2021年に改正された最新の標準管理規約(単棟型)における「総則」について学び、理解を深めることができます。

総則とは「全体に共通して適用される原則」や「基本となる規則」のことです。

目的(第1条)

標準管理規約第1条では「この規約は、○○マンションの管理又は使用に関する事項等について定めることにより、区分所有者の共同の利益を増進し、良好な住環境を確保することを目的とする。」と定められています。

標準管理規約には規定を解釈するコメントが付されています。
そのコメントを参考にすることで、自身の管理組合で規定すべきか、すべきではないかの判断材料にもなります。

【マンション標準管理規約(単棟型)全般関係コメント(一部抜粋)】
① マンションが重要な居住形態となっている中で、マンションの快適な居住環境を確保するため、区分所有者は、具体的な住まい方のルールを定めておくことが重要であるとともに、社会的には、マンションを社会的資産として、その資産価値を保全することが要請されている。
このような状況の中で、管理組合はマンションを適正に管理するよう努め、国は情報提供等の措置を講ずるよう努めなければならない旨の適正化法の規定を踏まえ、国は、管理組合が、各マンションの実態に応じて、管理規約を制定、変更する際の参考として、このマンション標準管理規約及びマンション標準管理規約コメントを作成し、その周知を図るものである。

・・・

④ この標準管理規約で示している事項については、マンションの規模、居住形態等それぞれのマンションの個別の事情を考慮して、必要に応じて、合理的に修正し活用することが望ましい。なお、別に定められる公正証書による規約と一覧性をもたせることが望ましい。

上記コメントには記載していませんが、全般関係コメント③では、管理組合が外部のマンション管理士等の専門家が理事長に就任するなど、外部の専門家を活用することを想定したコメントが記載されています。
昨今の理事のなり手不足やマンション管理の高度化、困難化を考えると今後増々外部のマンション管理の専門家の役割が大きくなることが考えられます。

定義(第2条)

標準管理規約第2条では「この規約において、次に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。」と定められています。

標準管理規約第2条第一号~十一号

一 区分所有権 建物の区分所有等に関する法律(昭和37年法律第69号。以下「区分所有法」という。)第2条第1項の区分所有権をいう。

二 区分所有者 区分所有法第2条第2項の区分所有者をいう。

三 占有者 区分所有法第6条第3項の占有者をいう。

四 専有部分 区分所有法第2条第3項の専有部分をいう。

五 共用部分 区分所有法第2条第4項の共用部分をいう。

六 敷地 区分所有法第2条第5項の建物の敷地をいう。

七 共用部分等 共用部分及び附属施設をいう。

八 専用使用権 敷地及び共用部分等の一部について、特定の区分所有者が排他的に使用できる権利をいう。

九 専用使用部分 専用使用権の対象となっている敷地及び共用部分等の部分をいう。

十 電磁的方法 電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって次に定めるものをいう。

 イ 送信者の使用に係る電子計算機と受信者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織を使用する方法であって、当該電気通信回線を通じて情報が送信され、受信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該情報が記録されるもの

 ロ 磁気ディスクその他これに準ずる方法により一定の情報を確実に記録しておくことができる物をもって調製するファイルに情報を記録したもの(以下「電磁的記録」という。)を交付する方法

十一 WEB会議システム等 電気通信回線を介して、即時性及び双方向性
を備えた映像及び音声の通信を行うことができる会議システム等をいう。

【マンション標準管理規約(単棟型)第2条関係コメント】

① 電磁的方法の具体例には、電子メールの送信やウェブサイト(ホームページ)への書込みの利用、CD-R等の交付による方法等がある。

② 電磁的方法の一部のみ利用可能な管理組合は、電磁的方法の利用状況に応じた規約を制定することが望ましい。例えば、電子メールの送受信やウェブサイト(ホームページ)への書込みは利用できないが、CD-R等に記録されている内容の読込み及び表示は可能な場合、第十号においてイは規定しないことが望ましい。

規約及び総会の決議の遵守義務(第3条)

区分所有者の規約及び総会の決議の遵守(第3条1項)

標準管理規約第3条1項では「区分所有者は、円滑な共同生活を維持するため、この規約及び総会の決議を誠実に遵守しなければならない。」と定められています。

同居者への規約及び総会の決議の遵守(第3条2項)

標準管理規約第3条2項では「区分所有者は、同居する者に対してこの規約及び総会の決議を遵守させなければならない。」と定められています。

対象物件の範囲(第4条)

標準管理規約第4条では「この規約の対象となる物件の範囲は、別表第1に記載された敷地、建物及び附属施設(以下「対象物件」という。)とする。」と定められています。

第4条で述べられている「別表第1」とは、規約本文の後に「マンションの敷地や建物及び付属施設など」の詳細情報を別表第1として記載することを想定し、規定しています。

規約及び総会の決議の効力(第5条)

区分所有者の承継人に対する規約及び総会決議の効力(第5条1項)

標準管理規約第5条1項では「この規約及び総会の決議は、区分所有者の包括承継人及び特定承継人に対しても、その効力を有する。」と定められています。

【マンション標準管理規約(単棟型)第5条関係コメント】
包括承継は相続、特定承継は売買及び交換等の場合をいう。
賃借人は、占有者に当たる。

規約及び総会決議に対する占有者の義務(第5条2項)

標準管理規約第5条2項では「占有者は、対象物件の使用方法につき、区分所有者がこの規約及び総会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負う。」と定められています。

マンションに賃貸で居住している占有者が規約及び総会の決議に基づいて負う義務は、対象物件の使用方法についてのみです。

たとえば、賃貸人である区分所有者が管理組合へ管理費や修繕積立金などを滞納していたとしても、賃借して居住している人(占有者)には全く責任は生じません。

管理組合(第6条)

管理組合の構成(第6条1項)

標準管理規約第6条1項では「区分所有者は、区分所有法第3条に定める建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体として、第1条に定める目的を達成するため、区分所有者全員をもって○○マンション管理組合(以下「管理組合」という。)を構成する。」と定められています。

【マンション標準管理規約(単棟型)第6条関係コメント】
管理組合は、「建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体」(区分所有法第3条)であって、マンションの管理をより円滑に実施し、もって区分所有者の共同の利益の増進と良好な住環境の確保を図るため構成するものであり、区分所有者全員が加入するものである。区分所有法によれば、区分所有者の数が2名以上の管理組合は法人となることができるが、この規約では管理組合を法人とはしていない。したがって、ここにいう管理組合は権利能力なき社団である。
管理組合は、区分所有者全員の強制加入の団体であって、脱退の自由がないことに伴い、任意加入の団体と異なり、区分所有者は全て管理組合の意思決定に服する義務を負うこととなることから、管理組合の業務は、区分所有法第3条の目的の範囲内に限定される。ただし、建物等の物理的な管理自体ではなくても、それに附随し又は附帯する事項は管理組合の目的の範囲内である。各専有部分の使用に関する事項でも、区分所有者の共同利益に関する事項は目的に含まれる。その意味で、区分所有法第3条の「管理」概念は、専有部分の使用方法の規制、多数決による建替え決議など、団体的意思決定に服すべき事項も広く包摂するといえる。
なお、管理組合内部における意思決定や業務執行についての統制も、法と規約に基づき行われることが要請されていることに留意する必要がある。

標準管理規約第6条1項の規定は、区分所有者法第3条「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し・・・」の規定を引用し、その団体の名称を「管理組合」ということを定義しています。

※ 区分所有法の条文の文言には、「管理組合法人」という文言は記述されていますが、「管理組合」という文言は記述されていません。

管理組合の事務所(第6条2項)

標準管理規約第6条2項では「管理組合は、事務所を○○内に置く。」と定められています。

管理組合の業務、組織等の定め(第6条3項)

標準管理規約第6条3項では「管理組合の業務、組織等については、第6章に定めるところによる。」と定められています。

「第6章 管理組合」では、管理組合の業務、組織等の規定が第30条 ~ 第55条まで規定されています。

まとめ

標準管理規約の入り口である総則の規定についてご理解頂けたでしょうか。

標準管理規約は、区分所有法ではカバーしきれないマンションごとに異なる状況を踏まえてルールを定めることができるものです。

そのため、区分所有法で認められている範囲で標準管理規約では区分所有法とは異なる規定をすることができます。

また、区分所有法の規定を引用したり、重複して規定されているような規定もでてきますので、混乱しないようにしっかりと理解することが大切です。

標準管理規約を見本にしながらご自身のマンションにあった的確な規約を定めて、より良いマンションにしていきましょう。

本記事も読んでいただきどうもありがとうございました。

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