標準管理規約

標準管理規約(用法)

マンションなどの共同住宅では、各居住者が自分勝手に生活してしまうと廊下やゴミ置場をはじめ、マンション館内全体が荒れてしまったり、居住者間のトラブルが絶えないようなマンションとなってしまいます。

このようなことを防ぐため、分譲マンションを購入すると、そのマンションの区分所有者で構成される団体(規約上で「管理組合」と呼ばれることになる団体)へ強制的に加入をすることとなり、法律の定めにしたがってマンションを管理していくことになります。

その代表的な法律が分譲マンションなど区分所有建物の各所有者の権利やマンション全体の管理方法などを定めた「区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)」と呼ばれる法律になります。

しかし、居住者の属性や家族構成、立地、築年数、設備・・・などなど、世界に1つとして同じマンションなど存在しません。

そのため、区分所有法だけでは居住者の方たちの適切な暮らしや的確な建物の維持・管理をしていくことには無理が生じてしまいます。

そこで、区分所有法ではそれぞれの区分所有マンションにおいて独自のルールを定めるための規約を制定することを認めています。(ただし、規約で定められないこともあります。)

そして、その規約の標準的な見本を国土交通省が作成しており、公表されているものが「標準管理規約」と呼ばれるものです。

本記事では、2021年に改正された最新の標準管理規約(単棟型)における「用法」について学び、理解を深めることができます。

専有部分の用途(第12条)

標準管理規約第12条の専有部分の用法では、住宅宿泊事業(民泊)を可能とする場合と禁止する場合の2パターンの規定が存在します。

(ア)住宅宿泊事業を可能とする場合

(第12条1項)
区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。

(第12条2項)
区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用することができる。

(イ)住宅宿泊事業を禁止する場合

(第12条1項)
区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。

(第12条2項)
区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用してはならない。

【マンション標準管理規約(単棟型)第12条関係コメント】
① 住宅としての使用は、専ら居住者の生活の本拠があるか否かによって判断する。したがって利用方法は、生活の本拠であるために必要な平穏さを有することを要する。

② 住宅宿泊事業法第2条第3項に規定する住宅宿泊事業については、第2項のように、可能か禁止かを明記することが望ましい。また、旅館業法第3条第1項の簡易宿所の許可を得て行う「民泊」については、旅館業営業として行われるものであり、通常は第1項の用途に含まれていないと考えられるため、可能としたい場合には、その旨を明記することが望ましい。
旅館業法や住宅宿泊事業法に違反して行われる事業は、管理規約に明記するまでもなく、当然に禁止されているとの趣旨である。
さらに、「区分所有者は、その専有部分を、宿泊料を受けて人を宿泊させる事業を行う用途に供してはならない。」のような規定を置くこともあり得る。

③ マンションによっては、一定の態様の住宅宿泊事業のみを可能とすることも考えられ、その場合は規約に明記すべきである。
多数の区分所有者等による共同生活の場であり、その共同生活の維持のための法的手段が区分所有法上特に設けられているというマンションの特性に鑑みれば、個別のマンションの事情によっては、例えば、住宅宿泊事業者が同じマンション内に居住している住民である等のいわゆる家主居住型の住宅宿泊事業に限り可能とするケースも考えられる。

【いわゆる家主居住型の住宅宿泊事業のみ可能とする場合の例】
第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。

2 区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業(同法第11条第1項2号に該当しないもので、住宅宿泊事業者が自己の生活の本拠として使用する専有部分と同法第2条第5項の届出住宅が同一の場合又は同じ建物内にある場合に限る。)に使用することができる。
さらに、個別のマンションの事情によっては、このようないわゆる家主居住型の住宅宿泊事業のうち、住宅宿泊事業者が自己の生活の本拠として使用している専有部分において宿泊させる場合(いわゆる家主同居型)に限り可能とするケースも考えられる。

【いわゆる家主同居型のみ可能とする場合の例】
第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。

2 区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業(同法第11条第1項2号に該当しないもので、住宅宿泊事業者が自己の生活の本拠として使用する専有部分と同法第2条第5項の届出住宅が同一の場合に限る。)に使用することができる。

④ 新規分譲時の原始規約等において、住宅宿泊事業の可否を使用細則に委任しておくこともあり得る。

【住宅宿泊事業の可否を使用細則に委任する場合】
第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。

2 区分所有者が、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用することを可能とするか否かについては、使用細則に定めることができるものとする。

⑤ (イ)の場合において、住宅宿泊事業の実施そのものだけでなく、さらに、その前段階の広告掲載等をも禁止する旨を明確に規定するため、「区分所有者は、前2項に違反する用途で使用することを内容とする広告の掲載その他の募集又は勧誘を行ってはならない。」のような規定を置くこともあり得る。

⑥ 暴力団の排除のため、暴力団事務所としての使用や、暴力団員を反復して出入りさせる等の行為について禁止する旨の規定を追加することも考えられる。

住宅宿泊事業(民泊)を営む場合、人を宿泊させることができる年間日数の上限は180日までとなります。

敷地及び共用部分等の用法(第13条)

標準管理規約第13条では「区分所有者は、敷地及び共用部分等をそれぞれの通常の用法に従って使用しなければならない。」と定められています。

【マンション標準管理規約(単棟型)第13条関係コメント】
「通常の用法」の具体的内容は、使用細則で定めることとする。
例えば、「自転車は、一階の○○に置きます。それ以外の場所に置いてはいけません。」

バルコニー等の専用使用権(第14条)

区分所有者の専用使用権(第14条1項)

標準管理規約第14条1項では「区分所有者は、別表第4に掲げるバルコニー、玄関扉、窓枠、窓ガラス、一階に面する庭及び屋上テラス(以下この条、第21条第1項及び別表第4において「バルコニー等」という。)について、同表に掲げるとおり、専用使用権を有することを承認する。」と定められています。

第14条1項で述べられている「別表第4」とは規約本文の後に、敷地及び共用部分等に専用使用権を設けた場合の一覧表である「バルコニー等の専用使用権」を別表第4として記載することを想定し、規定しています。

専用使用料の納入(第14条2項)

標準管理規約第14条2項では「一階に面する庭について専用使用権を有している者は、別に定めるところにより、管理組合に専用使用料を納入しなければならない。」と定められています。

専有部分の貸与者による専用使用権(第14条3項)

標準管理規約第14条3項では「区分所有者から専有部分の貸与を受けた者は、その区分所有者が専用使用権を有しているバルコニー等を使用することができる。」と定められています。

【マンション標準管理規約(単棟型)第14条関係コメント】
① バルコニー等については、専有部分と一体として取り扱うのが妥当であるため、専用使用権について定めたものである。

② 専用使用権は、その対象が敷地又は共用部分等の一部であることから、それぞれの通常の用法に従って使用すべきこと、管理のために必要がある範囲内において、他の者の立入りを受けることがある等の制限を伴うものである。また、工作物設置の禁止、外観変更の禁止等は使用細則で物件ごとに言及するものとする。

③ バルコニー及び屋上テラスが全ての住戸に附属しているのではない場合には、別途専用使用料の徴収について規定することもできる。

駐車場の使用(第15条)

駐車場の使用契約(第15条1項)

標準管理規約第15条1項では「管理組合は、別添の図に示す駐車場について、特定の区分所有者に駐車場使用契約により使用させることができる。」と定められています。

駐車場使用料の納入(第15条2項)

標準管理規約第15条2項では「前項により駐車場を使用している者は、別に定めるところにより、管理組合に駐車場使用料を納入しなければならない。」と定められています。

駐車場使用契約の効力(第15条3項)

標準管理規約第15条3項では「区分所有者がその所有する専有部分を、他の区分所有者又は第三者に譲渡又は貸与したときは、その区分所有者の駐車場使用契約は効力を失う。」と定められています。

【マンション標準管理規約(単棟型)第15条関係コメント】
① 本条は、マンションの住戸の数に比べて駐車場の収容台数が不足しており、駐車場の利用希望者(空き待ち)が多い場合を前提としている。
近時、駐車場の需要が減少しており、空き区画が生じているケースもある。駐車場収入は駐車場の管理に要する費用に充てられるほか、修繕積立金として積み立てられるため(第29条)、修繕積立金不足への対策等の観点から組合員以外の者に使用料を徴収して使用させることも考えられる。その場合、税務上、全てが収益事業として課税されるケースもあるが、区分所有者を優先する条件を設定している等のケースでは、外部貸しのみが課税対象となり区分所有者が支払う使用料は共済事業として非課税とする旨の国税庁の見解(「マンション管理組合が区分所有者以外の者へのマンション駐車場の使用を認めた場合の収益事業の判定について(照会)」(平成24年2月3日国住マ第43号)及びこれに対する回答(平成24年2月13日))が公表されているため、参照されたい。

② ここで駐車場と同様に扱うべきものとしては、倉庫等がある。

③ 本条の規定のほか、使用者の選定方法をはじめとした具体的な手続、使用者の遵守すべき事項等駐車場の使用に関する事項の詳細については、「駐車場使用細則」を別途定めるものとする。また、駐車場使用契約の内容(契約書の様式)についても駐車場使用細則に位置付け、あらかじめ総会で合意を得ておくことが望ましい。

④ 駐車場使用契約は、次のひな型を参考とする。

駐車場使用契約書

○○マンション管理組合(以下「甲」という。)は、○○マンションの区分所有者である○○(以下「乙」という。)と、○○マンションの駐車場のうち別添の図に示す○○の部分につき駐車場使用契約を締結する。当該部分の使用に当たっては、乙は下記の事項を遵守するものとし、これに違反した場合には、甲はこの契約を解除することができる。

             記

1 契約期間は、 年 月 日から 年 月 日までとする。ただし、乙がその所有する専有部分を他の区分所有者又は第三者に譲渡又は貸与したときは、本契約は効力を失う。

2 月額○○円の駐車場使用料を前月の○日までに甲に納入しなければならない。

3 別に定める駐車場使用細則を遵守しなければならない。

4 当該駐車場に常時駐車する車両の所有者、車両番号及び車種をあらかじめ甲に届け出るものとする。

⑤ 第3項は、家主同居型の住宅宿泊事業を実施する場合は、対象としていないと考えられる。

⑥ 車両の保管責任については、管理組合が負わない旨を駐車場使用契約又は駐車場使用細則に規定することが望ましい。

⑦ 駐車場使用細則、駐車場使用契約等に、管理費、修繕積立金の滞納等の規約違反の場合は、契約を解除できるか又は次回の選定時の参加資格をはく奪することができる旨の規定を定めることもできる。

⑧ 駐車場使用者の選定は、最初に使用者を選定する場合には抽選、2回目以降の場合には抽選又は申込順にする等、公平な方法により行うものとする。
また、マンションの状況等によっては、契約期間終了時に入れ替えるという方法又は契約の更新を認めるという方法等について定めることも可能である。例えば、駐車場使用契約に使用期間を設け、期間終了時に公平な方法により入替えを行うこと(定期的な入替え制)が考えられる。
なお、駐車場が全戸分ある場合であっても、平置きか機械式か、屋根付きの区画があるかなど駐車場区画の位置等により利便性・機能性に差異があるような場合には、マンションの具体的な事情に鑑みて、上述の方法による入替えを行うことも考えられる。
駐車場の入替えの実施に当たっては、実施の日時に、各区分所有者が都合を合わせることが必要であるが、それが困難なため実施が難しいという場合については、外部の駐車場等に車を移動させておく等の対策が考えられる。

⑨ 駐車場が全戸分ない場合等には、駐車場使用料を近傍の同種の駐車場料金と均衡を失しないよう設定すること等により、区分所有者間の公平を確保することが必要である。なお、近傍の同種の駐車場料金との均衡については、利便性の差異も加味して考えることが必要である。
また、平置きか機械式か、屋根付きの区画があるかなど駐車場区画の位置等による利便性・機能性の差異や、使用料が高額になっても特定の位置の駐車場区画を希望する者がいる等の状況に応じて、柔軟な料金設定を行うことも考えられる。

敷地及び共用部分等の第三者の使用(第16条)

敷地及び共用部分等の第三者の使用者(第16条1項)

標準管理規約第16条1項では「管理組合は、次に掲げる敷地及び共用部分等の一部を、それぞれ当該各号に掲げる者に使用させることができる。」と定められています。

標準管理規約第16条第一号~三号

一 管理事務室、管理用倉庫、機械室その他対象物件の管理の執行上必要な施設 管理事務(マンションの管理の適正化の推進に関する法律(平成12年法律第149号。以下「適正化法」という。)第2条第六号の「管理事務」をいう。)を受託し、又は請け負った者

二 電気室 対象物件に電気を供給する設備を維持し、及び運用する事業者

三 ガスガバナー 当該設備を維持し、及び運用する事業者

総会決議による敷地及び共用部分等の使用者(第16条2項)

標準管理規約第16条2項では「前項に掲げるもののほか、管理組合は、総会の決議を経て、敷地及び共用部分等(駐車場及び専用使用部分を除く。)の一部について、第三者に使用させることができる。」と定められています。

【マンション標準管理規約(単棟型)第16条関係コメント】
① 有償か無償かの区別、有償の場合の使用料の額等について使用条件で明らかにすることとする。

② 第2項の対象となるのは、広告塔、看板等である。

専有部の修繕等(第17条)

理事長への申請・承認(第17条1項)

標準管理規約第17条1項の専有部分の修繕等では、電磁的方法が利用可能ではない場合と可能な場合の2パターンの規定が存在します。

電磁的方法が利用可能ではない場合

(第17条1項)
区分所有者は、その専有部分について、修繕、模様替え又は建物に定着する物件の取付け若しくは取替え(以下「修繕等」という。)であって共用部分又は他の専有部分に影響を与えるおそれのあるものを行おうとするときは、あらかじめ、理事長(第35条に定める理事長をいう。以下同じ。)にその旨を申請し、書面による承認を受けなければならない。

電磁的方法が利用可能な場合

(第17条1項)
区分所有者は、その専有部分について、修繕、模様替え又は建物に定着する物件の取付け若しくは取替え(以下「修繕等」という。)であって共用部分又は他の専有部分に影響を与えるおそれのあるものを行おうとするときは、あらかじめ、理事長(第35条に定める理事長をいう。以下同じ。)にその旨を申請し、書面又は電磁的方法による承認を受けなければならない。

設計図、仕様書及び工程表の添付(第17条2項)

標準管理規約第17条2項では「前項の場合において、区分所有者は、設計図、仕様書及び工程表を添付した申請書を理事長に提出しなければならない。」と定められています。

【マンション標準管理規約(単棟型)第17条関係コメント①~④】
① 区分所有者は、区分所有法第6条第1項の規定により、専有部分の増築又は建物の主要構造部に影響を及ぼす行為を実施することはできない。

② 修繕等のうち、第1項の承認を必要とするものは、「共用部分又は他の専有部分に影響を与えるおそれのある」ものである。具体例としては、床のフローリング、ユニットバスの設置、主要構造部に直接取り付けるエアコンの設置、配管(配線)の枝管(枝線)の取付け・取替え、間取りの変更等がある。その範囲、承認を必要とする理由及び審査すべき点については、別添2に考え方を示している。

③ 本条は、配管(配線)の枝管(枝線)の取付け、取替え工事に当たって、共用部分内に係る工事についても、理事長の承認を得れば、区分所有者が行うことができることも想定している。

④ 専有部分の修繕等の実施は、共用部分に関係してくる場合もあることから、ここでは、そのような場合も想定し、区分所有法第18条第1項の共用部分の管理に関する事項として、同条第2項の規定により、規約で別の方法を定めたものである。
なお、区分所有法第17条第1項の共用部分の変更に該当し、集会の決議を経ることが必要となる場合もあることに留意する必要がある。

理事会決議による承認又は不承認の決定(第17条3項)

標準管理規約第17条3項では「理事長は、第1項の規定による申請について、理事会(第51条に定める理事会をいう。以下同じ。)の決議により、その承認又は不承認を決定しなければならない。」と定められています。

承認による区分所有者の共用部分の工事(第17条4項)

標準管理規約第17条4項では「第1項の承認があったときは、区分所有者は、承認の範囲内において、専有部分の修繕等に係る共用部分の工事を行うことができる。」と定められています。

【マンション標準管理規約(単棟型)第17条関係コメント⑤~⑨】
⑤ 承認を行うに当たっては、専門的な判断が必要となる場合も考えられることから、専門的知識を有する者(建築士、建築設備の専門家等)の意見を聴く等により専門家の協力を得ることを考慮する。
特に、フローリング工事の場合には、構造、工事の仕様、材料等により影響が異なるので、専門家への確認が必要である。

⑥ 承認の判断に際して、調査等により特別な費用がかかる場合には、申請者に負担させることが適当である。

⑦ 工事の躯体に与える影響、防火、防音等の影響、耐力計算上の問題、他の住戸への影響等を考慮して、承認するかどうか判断する。考え方については別添2を参照のこと。なお、承認の判断に当たっては、マンションの高経年化に伴い専有部分の修繕等の必要性が増加することも踏まえ、過度な規制とならないようにすること、修繕技術の向上により、新たな工事手法に係る承認申請がされた場合にも、別添2に示された考え方を参考にすればよいことに留意する。なお、工事内容が上下左右の区分所有者に対して著しい影響を与えるおそれがあると判断される場合には、当該区分所有者の同意を必要とすることも考えられる。

⑧ 承認の申請先等は理事長であるが、承認、不承認の判断はあくまで理事会の決議によるものである(第54条第1項第五号参照)。

⑨ なお、老朽化が進む等、近い将来に、建替え若しくはマンション敷地売却(以下「建替え等」という。)が想定されるマンションにおいて、高額な費用をかけて専有部分の大規模な修繕等を行う区分所有者がいた場合には、その工事から数年後に建替え等の検討が始まると、当該区分所有者にとって二重の出費ともなりかねないほか、合意形成に支障が生ずる可能性がある。このため、近い将来に建替え等の検討の可能性があるマンションにおいては、修繕等について理事長の承認を求めてくる区分所有者に対して、近い将来に建替え等が検討される可能性がある旨の注意喚起を行うことが望ましい。なお、注意喚起があった上で、実際に修繕等を行うか否かはあくまで当該区分所有者の判断である。

理事長等による調査権限(第17条5項)

標準管理規約第17条5項では「理事長又はその指定を受けた者は、本条の施行に必要な範囲内において、修繕等の箇所に立ち入り、必要な調査を行うことができる。この場合において、区分所有者は、正当な理由がなければこれを拒否してはならない。」と定められています。

【マンション標準管理規約(単棟型)第17条関係コメント⑩】
⑩ 第5項の立入り、調査に関しては、施工状況を確認する必要があるものについて、工事中の現場で管理組合の理事等(又は組合から依頼を受けた技術者)が立ち会って確認することが考えられる。人手や工期などにより実際に立ち会うことが難しい場合には、抜き打ちで検査することをアナウンスしたり、工事業者に写真等の記録を取らせ報告させたりすることが考えられる。施工状況を確認する場合、図面の読み方や工事の進め方を知っている外部の専門家の協力が必要になる。確認が必要なものとしては、例えば、次のようなものが考えられる。
・ 全面リフォームを行う工事について、壁、床等をはがして耐力壁を撤去しないか、工事対象を確認する。
・ 躯体コンクリートにスリーブをあける際やアンカーを打ち込む際に、鉄筋を探査してから穴をあけているか、手順を確認する。

区分所有者の責任(第17条6項)

標準管理規約第17条6項では「第1項の承認を受けた修繕等の工事後に、当該工事により共用部分又は他の専有部分に影響が生じた場合は、当該工事を発注した区分所有者の責任と負担により必要な措置をとらなければならない。」と定められています。

【マンション標準管理規約(単棟型)第17条関係コメント⑪】
⑪ 第6項は、第1項の承認が、修繕等の工事の結果、共用部分又は他の専有部分に生じた事後的な影響について、当該工事を発注した区分所有者の責任や負担を免責するものではないことを確認的に定める趣旨である。
なお、工事を発注する場合には、工事業者と協議した上で、契約書に事後的な影響が生じた場合の責任の所在と補償等についても明記することが適切である。
また、管理組合等が専有部分の修繕の記録を保管しておくため、工事業者から工事完了報告書等を提出させることも考えられる。

理事長への届け出(第17条7項)

標準管理規約第17条7項では「区分所有者は、第1項の承認を要しない修繕等のうち、工事業者の立入り、工事の資機材の搬入、工事の騒音、振動、臭気等工事の実施中における共用部分又は他の専有部分への影響について管理組合が事前に把握する必要があるものを行おうとするときは、あらかじめ、理事長にその旨を届け出なければならない。」と定められています。

【マンション標準管理規約(単棟型)第17条関係コメント⑫~⑮】
⑫ 第7項は、第1項の承認を要しない修繕等であっても、工事の実施期間中において、共用部分又は他の専有部分に対し、工事業者の立入り、工事の資機材の搬入、工事の騒音、振動、臭気等の影響が想定されることから、管理組合が事前に把握する必要があるため、事前に届出を求めるものである。なお、第1項の場合と異なり、工事の過程における影響を問題とするものであり、工事の結果による事後的な影響を問題とする趣旨ではないことに留意する。また、他の居住者等に影響を与えることが考えられるため、上記届出に加えて工事内容等を掲示する等の方法により、他の区分所有者等へ周知を図ることが適当である。
なお、上記届出を要する工事の範囲等の考え方は、別添2を参照のこと。

⑬ 本条の承認を受けないで、専有部分の修繕等の工事を行った場合には、第67条の規定により、理事長は、その是正等のため必要な勧告又は指示若しくは警告を行うか、その差止め、排除又は原状回復のための必要な措置等をとることができる。第5項の立入り、調査の結果、理事長に申請又は届出を行った内容と異なる内容の工事が行われている等の事実が確認された場合も、同様である。

⑭ 本条の規定のほか、具体的な手続、区分所有者の遵守すべき事項等詳細については、使用細則に別途定めるものとする。その際、上述した別添2の内容についても、各マンションの実情に応じて、参考にするとともに、必要に応じて、専門的知識を有する者の意見を聴くことが望ましい。

⑮ 申請書及び承認書の様式は、次のとおりとする。

専有部分修繕等工事申請書

                        年 月 日
○○マンション管理組合
理事長 ○○○○ 殿
  
                     氏 名 ○○○○
 
下記により、専有部分の修繕等の工事を実施することとしたいので、○○マンション管理規約第17条の規定に基づき申請します。

              記

1 対象住戸 ○○号室
2 工事内容
3 工事期間 年 月 日から
年 月 日まで
4 施工業者
5 添付書類 設計図、仕様書及び工程表

専有部分修繕等工事承認書

                        年 月 日
○○○○ 殿

年 月 日に申請のありました○○号室における専有部分の修繕等の工事については、実施することを承認します。
(条件)

               ○○マンション管理組合
               理事長 ○○○○

使用細則(第18条)

標準管理規約第18条では「対象物件の使用については、別に使用細則を定めるものとする。」と定められています。

【マンション標準管理規約(単棟型)第18条関係コメント】
① 使用細則で定めることが考えられる事項としては、動物の飼育やピアノ等の演奏に関する事項等専有部分の使用方法に関する規制や、駐車場、倉庫等の使用方法、使用料、置き配を認める際のルール等敷地、共用部分の使用方法や対価等に関する事項等が挙げられ、このうち専有部分の使用に関するものは、その基本的な事項は規約で定めるべき事項である。また、マンション内における感染症の感染拡大のおそれが高いと認められた場合において、使用細則を根拠として、居住者による共用部分等の使用を一時的に停止・制限することは可能であると考えられる。
なお、使用細則を定める方法としては、これらの事項を一つの使用細則として定める方法と事項ごとに個別の細則として定める方法とがある。

② 犬、猫等のペットの飼育に関しては、それを認める、認めない等の規定は規約で定めるべき事項である。基本的な事項を規約で定め、手続等の細部の規定を使用細則等に委ねることは可能である。
なお、飼育を認める場合には、動物等の種類及び数等の限定、管理組合への届出又は登録等による飼育動物の把握、専有部分における飼育方法並びに共用部分の利用方法及びふん尿の処理等の飼育者の守るべき事項、飼育に起因する被害等に対する責任、違反者に対する措置等の規定を定める必要がある。

③ ペット飼育を禁止する場合、容認する場合の規約の例は、次のとおりである。

ペットの飼育を禁止する場合

(ペット飼育の禁止)
第○条 区分所有者及び占有者は、専有部分、共用部分の如何を問わず、犬・猫等の動物を飼育してはならない。ただし、専ら専有部分内
で、かつ、かご・水槽等内のみで飼育する小鳥・観賞用魚類(金魚・熱帯魚等)等を、使用細則に定める飼育方法により飼育する場合、及
び身体障害者補助犬法に規定する身体障害者補助犬(盲導犬、介助犬及び聴導犬)を使用する場合は、この限りではない。

ペットの飼育を容認する場合

(ペットの飼育)
第○条 ペット飼育を希望する区分所有者及び占有者は、使用細則及びペット飼育に関する細則を遵守しなければならない。ただし、他の区
分所有者又は占有者からの苦情の申し出があり、改善勧告に従わない場合には、理事会は、飼育禁止を含む措置をとることができる。

④ 専用使用部分でない共用部分に物品を置くことは原則として認められないが、宅配ボックスが無い場合等、例外的に共用部分への置き配を認める場合には、長期間の放置や大量・乱雑な放置等により避難の支障とならないよう留意する必要がある。

⑤ 第12条において住宅宿泊事業を可能とする場合は、必要に応じ、住宅宿泊事業法第13条に基づき掲げなければならないこととされている標識の掲示場所等の取扱いについて、あらかじめ使用細則において明確化しておくことが望ましい。

2024年4月からの物流業界の時間外労働規制により宅配業界の人手不足が懸念されています。
このことからも今後マンションにおける置き配の需要は高まってくることが想定され、共用廊下への日常的な私物の放置などには十分留意する必要があります。

使用細則は規約そのものではないため、制定・変更・廃止は原則的に「普通決議」となります。

専有部分の貸与(第19条)

第三者への遵守事項(第19条1項)

標準管理規約第19条1項では「区分所有者は、その専有部分を第三者に貸与する場合には、この規約及び使用細則に定める事項をその第三者に遵守させなければならない。」と定められています。

誓約書の提出(第19条2項)

標準管理規約第19条2項では「前項の場合において、区分所有者は、その貸与に係る契約にこの規約及び使用細則に定める事項を遵守する旨の条項を定めるとともに、契約の相手方にこの規約及び使用細則に定める事項を遵守する旨の誓約書を管理組合に提出させなければならない。」と定められています。

【マンション標準管理規約(単棟型)第19条関係コメント】
① 規約の効力は対象物件の使用方法につき占有者にも及ぶが、本条は、それ以外に、区分所有者がその専有部分を第三者に貸与する場合に、区分所有者がその第三者に、この規約及び使用細則に定める事項を遵守させる義務を定めたものである。

② 第三者が遵守すべき事項は、この規約及び使用細則に定める事項のうち、対象物件の使用に関する事項とする。

③ 貸与に係る契約書に記載する条項及び管理組合に提出する誓約書の様式は次のとおりとする。

賃貸借契約書

○○条 賃借人は、対象物件の使用、収益に際して、○○マンション管理規約及び同使用細則に定める事項を誠実に遵守しなければならない。

2 賃借人が、前項に規定する義務に違反したときは、賃貸人は、本契約を解除することができる。

誓 約 書

私は、○○○○(賃貸人)との○○マンション○○号室(以下「対象物件」という。)の賃貸借契約の締結に際し、下記事項を誓約します。

              記

対象物件の使用に際しては○○マンション管理規約及び同使用細則に定める事項を誠実に遵守すること。

  年 月 日
○○マンション管理組合
理 事 長 ○○○○ 殿

                   住所
                   氏名

④ 第12条において住宅宿泊事業を可能とする場合は、管理組合が事業開始を把握することがトラブル防止に資すると考えられるため、例えば、「区分所有者は、その専有部分において住宅宿泊事業法第2条第3項の住宅宿泊事業を実施することを内容とする、同法第3条第1項の届出を行った場合は、遅滞なく、その旨を管理組合に届け出なければならない。」等と規約に定めることも有効である。また、宿泊者等からの誓約書については提出義務を免除する旨を定めることも考えられる。

⑤ 区分所有者は、その専有部分を第三者に貸与している間(当該専有部分から転出する場合のみならず、転出後さらに転居する場合も含む。)は、現に居住する住所、電話番号等の連絡先を管理組合に届け出なければならない旨を規約に定めることも、区分所有者に連絡がつかない場合を未然に回避する観点から有効である。また、長期間不在にする場合も、届出の規定を設けることが有効である。
なお、上述の定めをした場合であっても、届出をしない区分所有者に対する総会招集手続については、第43条第2項及び第3項によることとなる。

暴力団員の排除(第19条の2)

標準管理規約第19条の2では「専有部分の貸与に関し、暴力団員への貸与を禁止する旨の規約の規定を定める場合」の規定が記載されています。

標準管理規約第19条の2

区分所有者は、その専有部分を第三者に貸与する場合には、前条に定めるもののほか、次に掲げる内容を含む条項をその貸与に係る契約に定めなければならない。

一 契約の相手方が暴力団員(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第2条第六号に規定する暴力団員をいう。以下同じ。)ではないこと及び契約後において暴力団員にならないことを確約すること。

二 契約の相手方が暴力団員であることが判明した場合には、何らの催告を要せずして、区分所有者は当該契約を解約することができること。

三 区分所有者が前号の解約権を行使しないときは、管理組合は、区分所有者に代理して解約権を行使することができること。

また、「管理組合における電磁的方法の利用状況に応じて」次のように第19条2項を規定することも記載されています。

電磁的方法が利用可能ではない場合

(第19条2項)
前項の場合において、区分所有者は、前項第三号による解約権の代理行使を管理組合に認める旨の書面の提出をするとともに、契約の相手方に暴力団員ではないこと及び契約後において暴力団員にならないことを確約する旨の誓約書を管理組合に提出させなければならない。

電磁的方法が利用可能な場合

(第19条2項)
前項の場合において、区分所有者は、前項第三号による解約権の代理行使を管理組合に認める旨の書面の提出(当該書面に記載すべき事項の電磁的方法による提供を含む。)をするとともに、契約の相手方に暴力団員ではないこと及び契約後において暴力団員にならないことを確約する旨の誓約書を管理組合に提出させなければならない。

【マンション標準管理規約(単棟型)第19条の2関係コメント】
① 第19条の2は、専有部分の貸与に関し、暴力団員への貸与を禁止する旨の規約の規定を定める場合の規定例である。なお、必要に応じ、暴力団員だけでなく、暴力団関係者や準構成員等を追加する場合は、その範囲について、各都道府県が定めている暴力団排除条例などを参考に規定することが考えられる。

第19条の2第1項第二号又は同項第三号の前提となる区分所有者の解約権は、区分所有者と第三者との間の契約における解除原因に係る特約を根拠とするものであり、管理組合は、区分所有者から当該解約権行使の代理権の授与を受けて(具体的には同条第2項に規定する解約権の代理行使を認める書面の提出(当該書面に記載すべき事項の電磁的方法による提供を含む。)を受ける。)、区分所有者に代理して解約権を行使する。管理組合の解約権の代理行使は、理事会決議事項とすることも考えられるが、理事会で決定することを躊躇するケースもあり得ることから、総会決議によることが望ましい。

② なお、暴力団員への譲渡については、このような賃貸契約に係るものと同様の取決めを区分所有者間で結ぶといった対応をすることが考えられる。
また、暴力団事務所としての使用等の禁止については、第12条関係コメントを参照。敷地内における暴力行為や威嚇行為等の禁止については、第67条第1項の「共同生活の秩序を乱す行為」や区分所有法第6条第1項の「共同の利益に反する行為」等に該当するものとして、法的措置をはじめとする必要な措置を講ずることが可能であると考えられる。

③ なお、措置の実行等に当たっては、暴力団関係者かどうかの判断や、訴訟等の措置を遂行する上での理事長等の身の安全の確保等のため、警察当局や暴力追放運動推進センターとの連携が重要であり、必要に応じて協力を要請することが望ましい。

まとめ

本記事の標準管理規約(用法)についての記事はご理解頂けたでしょうか。

マンションのような共同住宅では、自身とは考え方や、快適だと感じることなどが異なる多くの人が居住します。

それぞれの居住者が自身のやりたいように共用部分などを使用するとマンション内での居住者間での争いも多くなり居心地も悪くなります。

また、主要構造部などに関わる工事を勝手にされてしまうと、マンション建物全体の適切な管理・維持もできなくなります。

そのため、マンションでの生活は自身が快適に過ごせれば良いのではなく、管理規約や使用細則で決められたことを遵守して過ごして維持していくことが大切です。

そのマンション内でのルールをしっかりと把握し適切なマンションライフを過ごせるようにしましょう。

本記事も読んでいただきどうもありがとうございました。

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