区分所有法

第2回 2026年4月1日施行 区分所有法改正【第一章 建物の区分所有 第二節 共用部分等】のポイント

約20年ぶりとなる大幅な区分所有法改正が、2025年5月に公布され、2026年4月1日に施行されます。

今回の改正では、区分所有者に新たな義務や管理上のルールが加わりました。

本コラムでは、【第一章 建物の区分所有 第二節 共用部分等】の改正条文を全文掲載し、その内容と管理運営への影響を解説します。

共用部分の変更

改正:第十七条

第十七条
共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。第五項において同じ。)は、集会において、区分所有者(議決権を有しないものを除く。以下この項及び第三項において同じ。)の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上)の者であつて議決権の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上)を有するものが出席し、出席した区分所有者及びその議決権の各四分の三(これを下回る割合(二分の一を超える割合に限る。)を規約で定めた場合にあつては、その割合)以上の多数による決議で決する。

📝解説
共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)に関する決議要件が大きく見直されました。

従来は「総区分所有者数および総議決権の各4分の3以上」の賛成が必要でしたが、改正後はまず「議決権を有しない者を除外」したうえで、「区分所有者数および議決権数の過半数以上が出席していること」という新たな出席要件(定足数)が加わりました。

また、決議要件も「出席した区分所有者およびその議決権の各4分の3以上」とされ、さらに規約に定めることで「2分の1を超える割合まで」緩和できる旨の規定が設けられました。

つまり、規約の定めによっては必要賛成数を大幅に引き下げることが可能となり、最低でも『2分の1を超える割合』まで緩和できるのです。

この結果、極端なケースでは「過半数の区分所有者(議決権・委任状等含む)が出席し、その過半数が賛成すれば決議が成立する」こともあり得るようになりました。

これまでの「総4分の3以上」という厳格な要件と比べると、決議のハードルは大幅に下がったといえます。

新設条文:第十七条3項

第十七条3
第一項の決議により共用部分の変更をする場合において、規約に特別の定めがあるときは、当該共用部分の変更に伴い必要となる専有部分の保存行為又は専有部分の性質を変えない範囲内においてその利用若しくは改良を目的とする行為(次項及び次条第四項において「専有部分の保存行為等」という。)は、集会において、区分所有者の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上)の者であつて議決権の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上)を有するものが出席し、出席した区分所有者及びその議決権の各四分の三(これを下回る割合(二分の一を超える割合に限る。)を規約で定めた場合にあつては、その割合)以上の多数による決議で決することができる。

📝解説
共用部分の変更に伴い、専有部分にも関連する工事が必要となる場合があります。

例えば、配管の更新に伴う専有部分内での接続工事や、壁内補修に関連する内装復旧などです。

今回の改正により、こうした「専有部分の保存行為等」についても、規約に特別の定めがあれば、集会決議(総会決議)で実施できる決議要件が新設されました。

新設条文:第十七条4項

第十七条4
前項の決議をする場合において、専有部分の保存行為等の態様又は費用の分担に関する事項を定めるときは、決議の対象となる専有部分の区分所有者の利用状況、当該専有部分の保存行為等について区分所有者が支払つた対価その他の事情を考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるようにしなければならない。

📝解説
単に一律負担ではなく、利用状況や過去の費用負担も加味して公平性を確保するなど専有部分の保存行為等の費用分担等における衡平性の考慮が規定されました。

新設条文:第十七条5項

第十七条5
共用部分の設置若しくは保存に瑕疵があることによつて他人の権利若しくは法律上保護される利益が侵害され、若しくは侵害されるおそれがある場合におけるその瑕疵かしの除去に関して必要となる共用部分の変更又は高齢者、障害者等(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成十八年法律第九十一号)第二条第一号に規定する高齢者、障害者等をいう。)の移動若しくは施設の利用に係る身体の負担を軽減することにより、その移動上若しくは施設の利用上の利便性及び安全性を向上させるために必要となる共用部分の変更についての第一項及び第三項の規定の適用については、これらの規定中「四分の三」とあるのは、「三分の二」とする。

📝解説
バリアフリー改修や瑕疵補修など「必要性の高い工事」については、決議要件が4分の3 → 3分の2に緩和されました。

共用部分の管理

新設条文:第十八条4項

第十八条4
第一項本文の決議により共用部分の管理をする場合において、規約に特別の定めがあるときは、当該共用部分の管理に伴い必要となる専有部分の保存行為等は、集会の決議で決することができる。

📝解説
共用部分の管理に伴う専有部分の保存行為等に関する決議を規約で定められるようになりました。

新設条文:第十八条5項

第十八条5
前条第四項の規定は、前項の決議について準用する。

📝解説
専有部分の保存行為等の費用分担等における衡平性の考慮が、共用部分の管理決議にも準用されるようになりました。

次回のコラムでは、「第一章 第四節 管理者」の改正内容をご紹介していきます。
条文の正確な理解は、健全な管理運営の第一歩です。

本記事該当の区分所有法(2026年改正版)現行・改正比較表(PDF)
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