輪番制には問題があると分かっていても、実際に廃止しようとすると、必ずといってよいほど次のような意見が出ます。

輪番制をやめたら、誰も役員をやらなくなるのではないか。

一部の人だけが役員を続けることにならないか。

立候補制にしても、候補者が集まらないのではないか。

これらは、輪番制を見直す際に避けて通れない、もっともな疑問です。

輪番制を廃止するだけで、代わりの役員選任制度を決めなければ、役員候補者を選ぶことができなくなります。

そして、候補者が見つからなければ、結局、以前の輪番表に戻ることになりかねません。

輪番制の廃止は、役員を選ぶ仕組みをなくすことではありません。

機械的な順番ではなく、意欲、適性、経験、継続性を反映できる制度へ変えることが本来の目的です。

今回は、輪番制を廃止した後に考えられる、現実的な役員選任制度について解説します。

単純な立候補制だけでは機能しにくい

輪番制に代わる制度として、最初に思い浮かぶのが立候補制です。

役員になりたい人を募集し、その中から総会で役員を選任する方法です。

本人の意思を尊重できるため、輪番制よりも当事者意識を持った役員を選びやすいというメリットがあります。

しかし、単純な立候補制だけでは、必要な人数の候補者が集まらない可能性があります。

また、同じ人だけが立候補を続けることで、一部の人に役員の地位や情報が集中するおそれもあります。

したがって、輪番制に代わる制度は、立候補だけに頼るのではなく、複数の方法を組み合わせて設計することが現実的です。

継続希望者を優先する

まず考えられるのが、現在の役員のうち、継続を希望する人を次期役員候補者として優先する方法です。

管理組合運営では、経験と継続性が重要です。

特に、次のような案件に取り組んでいる場合、役員が毎年全員交代すると、検討の経緯や判断の背景が失われてしまいます。

  • 大規模修繕工事
  • 管理会社の変更
  • 管理委託費の値上げ交渉
  • 管理規約の改正
  • 長期修繕計画の見直し
  • 滞納管理費への対応
  • 設備更新や資金計画

意欲のある役員が継続することで、前期までの課題を引き継ぎ、管理会社や専門業者との交渉も継続して行うことができます。

ただし、継続を無制限に認めると、一部の人に権限が集中する可能性があります。

そのため、任期、再任回数、監事による監査、総会での選任など、適切な監督の仕組みを設けることが必要です。

組合員から立候補者を募集する

継続希望者だけで役員定数を満たせない場合は、組合員から立候補者を募集します。

立候補を促すためには、単に掲示板へ募集案内を貼るだけでは不十分です。

次のような情報を分かりやすく伝えることが重要です。

  • 理事会の開催頻度
  • 1回当たりの所要時間
  • オンラインでの出席が可能か
  • 主な役員業務
  • 今後予定されている重要案件
  • 役員報酬の有無
  • 管理会社や専門家による支援体制

役員の負担や活動内容が分からないままでは、立候補しようと考える人は増えません。

活動内容を可視化し、役員として何を求められるのかを事前に示すことが大切です。

理事会による推薦制度を設ける

立候補者だけでは候補者が不足する場合に有効なのが、理事会による推薦です。

現役員は、理事会活動や日常の管理組合運営を通じて、管理組合に関心があり、役員としての適性がある組合員を把握している場合があります。

例えば、次のような人です。

  • 総会や説明会に継続して出席している
  • 管理組合運営について建設的な意見を述べている
  • 専門知識や実務経験を持っている
  • 過去に役員経験があり、再任の意思がある
  • 大規模修繕などの特定案件に関心がある

ただし、理事会が自由に役員を選べる制度にすると、選任過程が不透明になりかねません。

推薦の基準、候補者への意思確認、総会での選任などを明確にし、特定の人だけで役員を決めない仕組みが必要です。

候補者が定員を超えた場合は公正な方法で選ぶ

立候補者、継続希望者、推薦者を合わせた人数が役員定数を超えることも考えられます。

その場合は、誰を役員候補者とするのかについて、あらかじめ公正なルールを定めておく必要があります。

例えば、次のような方法が考えられます。

  • 継続希望者を一定数まで優先する
  • 立候補者を優先する
  • 一定の条件の下で抽選を行う
  • 経験者と新任者の人数枠を設ける

重要なのは、その時々の理事会の都合で選び方を変えないことです。

誰が候補者となっても同じルールが適用されるように、管理規約や細則、選任方針などに明文化することが望まれます。

候補者が不足した場合の対応を決める

輪番制を廃止する際に、最も慎重に設計しなければならないのが、候補者が役員定数に満たない場合の対応です。

この点を決めないまま輪番制を廃止すると、役員選任ができなくなる可能性があります。

候補者が不足した場合の対応としては、次のような方法が考えられます。

  • 現役員に一定期間の継続を依頼する
  • 理事会から追加推薦を行う
  • 役員定数を見直す
  • 特定の業務を専門委員会へ分担する
  • 外部専門家の役員就任を検討する
  • 不足枠に限り、暫定的な補充方法を設ける

ただし、「候補者が不足した場合は自動的に輪番制へ戻る」という仕組みにすると、輪番制からの脱却は進みません。

不足時の対応も含めて、意欲や適性を考慮できる制度を考える必要があります。

外部専門家の登用を検討する

区分所有者だけでは役員候補者を確保できない場合や、高度な専門性が必要な場合は、マンション管理士などの外部専門家を役員として登用する方法もあります。

外部専門家を活用することで、次のような効果が期待できます。

  • 管理会社任せになりにくい
  • 規約や契約に基づいた判断ができる
  • 大規模修繕や管理会社変更を継続的に支援できる
  • 毎年役員が交代しても、専門知識を引き継ぐことができる

一方で、費用、責任、利益相反、監督体制などの課題もあります。

外部専門家にすべてを任せるのではなく、区分所有者である役員と役割を分担し、総会や監事による監督を機能させることが重要です。

役員が活動しやすい環境を整える

役員のなり手が不足する原因は、組合員の無関心だけではありません。

役員の負担が大きすぎることも、候補者が集まらない理由の一つです。

輪番制を廃止しても、無償で大きな責任を負い、毎月長時間の理事会へ出席しなければならないのであれば、立候補者や継続希望者は増えにくいでしょう。

例えば、次のような改善が考えられます。

  • 役員報酬を支給する
  • オンライン理事会を導入する
  • 理事会資料を電子化する
  • 管理会社への依頼事項を一覧化する
  • 理事ごとの担当業務を明確にする
  • 専門的な案件は外部専門家へ委託する
  • 理事会の開催回数や時間を見直す

「役員をやる人がいない」と嘆く前に、役員が活動しやすい環境になっているかを確認する必要があります。

一部の役員への権限集中を防ぐ

輪番制を廃止すると、「同じ人が長期間役員を続けることになるのではないか」という懸念が出ます。

確かに、意欲や経験のある人に役員を継続してもらうことは、管理組合運営の安定につながります。

一方で、特定の人に情報や権限が集中すれば、組合員から不信感を持たれる可能性があります。

そのため、次のような仕組みを整えることが重要です。

  • 役員は毎年総会で選任する
  • 理事長を理事会で選定する
  • 監事による監査を機能させる
  • 理事会議事録を適切に作成する
  • 理事会の決定内容を組合員へ報告する
  • 重要事項は総会へ上程する
  • 利益相反がある役員は審議や決議から外れる
  • 継続役員と新任役員を組み合わせる

輪番制を廃止する目的は、一部の人に管理組合を任せきりにすることではありません。

意欲と経験を活用しながら、透明性と監督機能を確保することが必要です。

現実的なのは「継続・立候補・推薦」の組み合わせ

輪番制に代わる制度として、最も現実的なのは、継続希望者、立候補者、理事会推薦者を組み合わせる方法です。

例えば、次のような流れが考えられます。

  1. 現役員から継続希望者を確認する
  2. 組合員から立候補者を募集する
  3. 候補者が不足する場合は理事会が推薦する
  4. 候補者が定員を超える場合は、あらかじめ定めたルールで調整する
  5. 最終的な役員は総会で選任する

この方法であれば、本人の意思を尊重しながら、候補者不足にも対応できます。

また、継続役員と新任役員を組み合わせることで、経験の引継ぎと新しい視点の両方を確保できます。

「全員が順番に担当すること」だけが公平ではない

輪番制を支持する理由として、最も多いのが「全員が順番に役員を担当するため公平である」という考え方です。

確かに、役員を担当する回数だけを見れば、輪番制は公平に見えます。

しかし、管理組合の役員は、単に名前を貸せばよいものではありません。

管理費や修繕積立金の管理、大規模修繕、管理会社との契約、規約改正など、管理組合の財産と生活環境に関わる重要な判断を行います。

意欲や適性を考慮せず、すべての組合員に機械的に役員を割り当てることが、本当に適切な制度なのかを考える必要があります。

また、意欲のある一部の役員だけに無償で負担を押し付けることも、公平とはいえません。

必要な支援や報酬を整え、経験者と新任者が協力できる制度を作ることが、実質的な公平性につながります。

輪番制の廃止は管理組合の意識を変える

輪番制を廃止すれば、それだけで理事会が機能するわけではありません。

また、立候補者や一部の経験者だけに、管理組合運営を任せきりにしてよいわけでもありません。

輪番制の見直しをきっかけとして、次の事項を管理組合全体で考える必要があります。

  • どのような人に役員を担ってもらうのか
  • 役員をどのように支援するのか
  • 経験や情報をどのように引き継ぐのか
  • 役員の活動をどのように監督するのか
  • 組合員が管理組合運営にどのように関わるのか

輪番制の問題は、単なる役員の選び方の問題ではありません。

管理組合を「誰かが順番に担当する組織」と考えるのか、それとも「組合員が共同で資産と住環境を守る組織」と考えるのかという、管理組合運営の根本に関わる問題です。

まとめ

輪番制を廃止した後の役員選任は、単純な立候補制だけでは十分に機能しない可能性があります。

現実的には、次の方法を組み合わせることが重要です。

  • 継続希望者を優先する
  • 立候補者を募集する
  • 理事会が候補者を推薦する
  • 候補者が多い場合の選定ルールを定める
  • 候補者が不足した場合の対応を定める
  • 必要に応じて外部専門家を活用する
  • 役員報酬やオンライン理事会など、活動しやすい環境を整える
  • 一部の役員に権限が集中しない監督体制を作る

輪番制をやめること自体が目的ではありません。

形式的な公平性だけにとらわれず、意欲、適性、経験、継続性、透明性を備えた役員選任制度へ移行すること。

それが、管理会社任せや問題の先送りから脱却し、持続可能な管理組合運営を実現するための第一歩です。

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