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マンション管理組合の役員選任では、あらかじめ決められた順番に従って役員候補者を選ぶ「輪番制」が広く採用されています。

輪番制には、すべての組合員が順番に役員を担当するという、形式上の公平さがあります。

その一方で、本人の意欲や適性にかかわらず役員候補者となるため、次のような問題も起こりがちです。

  • 役員に就任しても理事会へ出席しない
  • 管理会社の提案をそのまま追認してしまう
  • 前期からの課題が十分に引き継がれない
  • 任期が終わるまで重要な問題を先送りする
  • 経験や意欲のある人まで、任期満了とともに退任する

こうした状態が続けば、理事会は管理組合の意思決定機関ではなく、単なる「当番の集まり」になりかねません。

それでは、すでに輪番制を採用している管理組合が、制度を見直し、最終的に廃止するためには、何から始めればよいのでしょうか。

輪番制を廃止するための手続は、現在の輪番制が何を根拠に行われているかによって異なります。

まずは、自分のマンションが次のどのパターンに該当するのかを確認することが重要です。

自分のマンションはどのパターンに該当するか

輪番制の根拠は、管理組合によって異なります。

最初に、管理規約、細則、過去の総会議事録、理事会議事録、役員名簿、輪番表などを確認してください。

輪番制の位置づけは、大きく次の3つに分けられます。

輪番制の根拠 該当するパターン
管理規約、細則、総会議事録に明確な根拠がない パターン① 慣習として続いている
管理規約や細則にはないが、過去の総会で導入が決議されている パターン② 過去の総会決議で承認されている
管理規約または細則に輪番制が明記されている パターン③ 管理規約・細則に明記されている

現在の運用だけを見て、「規約で決められているはずだ」と思い込まないことが大切です。

長年続いている制度であっても、実際には明確な根拠がなく、単なる慣習として行われていることがあります。

パターン① 輪番制が慣習として続いている場合

最初のパターンは、管理規約や細則、過去の総会決議に輪番制の根拠がなく、長年の慣習として輪番制が続いているケースです。

いわば、「以前からそうしているから」という前例踏襲型の管理組合です。

制度上の明確な制約がないため、3つのパターンの中では、最も柔軟に見直すことができます。

手順1 現在の運用と根拠を確認する

まず、過去の総会議事録、理事会議事録、役員名簿、輪番表などを確認します。

本当に輪番制を定めた総会決議がないのか、単なる慣習として続いているのかを整理します。

長期間続いている制度ほど、組合員の間では「規約で決められている」「総会で決まっている」と思い込まれていることがあります。

現在行われている運用と、その制度的な根拠を分けて確認することが重要です。

手順2 理事会で問題点を共有する

次に、輪番制によって実際にどのような問題が起きているのかを、理事会で整理します。

例えば、次のような問題です。

  • 理事会への欠席者が多い
  • 役員が毎年全員交代してしまう
  • 前期の課題が十分に引き継がれない
  • 理事長になりたくない人が役職を押し付けられている
  • 管理会社への依存が強くなっている
  • 大規模修繕や規約改正などの重要課題が先送りされている

抽象的に「輪番制はよくない」と説明するだけでは、組合員の理解を得ることは難しいでしょう。

自分たちの管理組合で実際に起きている問題を示し、なぜ選任方法の見直しが必要なのかを共有することが大切です。

手順3 新しい役員候補者の選定方針を総会に諮る

輪番制が単なる慣習であれば、通常、輪番制をやめるためだけに管理規約を改正する必要はありません。

ただし、理事会だけで突然運用を変更すると、組合員から「一部の人だけで役員候補者を決めている」と受け取られる可能性があります。

そこで、立候補、継続、推薦などを組み合わせた新しい役員候補者の選定方針を総会に提示し、組合員の承認を得ることが望まれます。

その後の役員選任は、管理規約に従って総会で行います。

パターン② 過去の総会決議で輪番制が承認されている場合

次のパターンは、管理規約や細則には輪番制の記載がないものの、過去の総会で輪番制の導入が決議されているケースです。

この場合、単なる慣習とは異なり、総会によって明文化された組合員の合意が存在します。

したがって、理事会の判断だけで輪番制を廃止するのではなく、過去の総会決議によって定めた方針を、新たな総会決議によって変更または廃止するのが適切です。

手順1 輪番制を導入した総会議事録を確認する

輪番制を導入した際の総会議事録や議案書を探し、次の事項を確認します。

  • どのような理由で輪番制が導入されたのか
  • どのような方法で順番を決めることとしたのか
  • 適用期間が定められているか
  • 辞退や免除についてどのように扱っているか
  • 単なる運用方針なのか、継続的なルールとして決議したのか

古い総会決議は、現在の管理組合の状況に合わなくなっている場合があります。

導入時の理由と現在の課題を比較することが、見直しの出発点になります。

手順2 理事会で代替制度を検討する

過去の決議内容を確認したうえで、輪番制を廃止した後の選任方法を検討します。

単純な立候補制だけでは候補者が集まらないことも考えられます。

そのため、継続希望者、立候補者、理事会による推薦者などを組み合わせ、候補者が不足した場合の対応も含めて制度を設計する必要があります。

新しい役員選任制度については、別の記事で詳しく解説します。

手順3 新たな総会決議で方針を変更する

総会には、輪番制の廃止だけではなく、廃止後の役員候補者選定方法も併せて議案として示します。

「輪番制をやめる」という結論だけでは、組合員の不安を招きます。

次の事項を具体的に示したうえで、過去の総会決議を変更または廃止する決議を行います。

  • 新しい役員候補者の選定方法
  • 候補者が定員を超えた場合の対応
  • 候補者が不足した場合の対応
  • 新しい制度へ移行する時期
  • 現在の輪番表をどのように扱うか

パターン③ 輪番制が管理規約や細則に明記されている場合

3つ目は、管理規約または役員選任細則などに、輪番制が明記されているケースです。

この場合、理事会の判断や、規約・細則を変更しないまま行う総会決議だけでは、輪番制を廃止することはできません。

輪番制を定めている規定そのものを改正する必要があります。

3つのパターンの中では最も手続上のハードルが高い一方、規定を適切に改正すれば、輪番制から制度的に脱却することができます。

手順1 輪番制に関する条文を特定する

最初に、管理規約や細則のどこに輪番制が定められているのかを確認します。

「役員は輪番により選出する」と直接規定されている場合だけでなく、別表の輪番表や、役員候補者の選定順序に関する規定が設けられている場合もあります。

輪番制に関連する条文をすべて抽出し、どの部分を削除または変更する必要があるのかを整理します。

手順2 改正案と新しい選任制度を作成する

輪番制に関する文言を単に削除するだけでは不十分です。

輪番制を廃止した後に、どのように役員候補者を選ぶのかを定める必要があります。

例えば、次のような内容を新たに規定することが考えられます。

  • 継続希望者および立候補者を優先する
  • 理事会は次期役員候補者を推薦できる
  • 候補者が定員を超えた場合は抽選する
  • 候補者が不足した場合の補充方法を定める
  • 一定の要件を満たす外部専門家を役員候補者とできる
  • 選任過程に利害関係がある役員は審議や決議から外れる

制度変更の目的は、特定の人を役員にすることではありません。

誰に対しても分かりやすく、公正で、継続的に運用できる選任制度を作ることです。

手順3 組合員への説明と合意形成を進める

輪番制を公平な制度だと考えている組合員は少なくありません。

そのため、いきなり総会へ議案を提出するのではなく、事前に次のような点を説明することが重要です。

  • 輪番制によって実際に起きている問題
  • 廃止後も役員選任の公平性を確保できること
  • 同じ人だけが役員を続けないための仕組み
  • 候補者が不足した場合の対応
  • 一部の役員に権限が集中しないための監督体制

必要に応じて、説明会、アンケート、意見募集などを行い、組合員の疑問や反対意見を把握します。

特に管理規約の改正が必要な場合は、総会当日に初めて説明するのではなく、事前の情報提供と意見交換が重要になります。

手順4 管理規約または細則の改正議案を総会に上程する

輪番制が管理規約に定められている場合は、管理規約の改正決議が必要です。

2026年4月1日に施行された改正区分所有法では、規約の設定、変更または廃止について、原則として、区分所有者数および議決権数の各過半数を有する区分所有者が出席した集会で、出席した区分所有者数および議決権数の各4分の3以上の賛成が必要です。

ただし、実際の総会では、改正区分所有法だけでなく、各管理組合の管理規約に定められた決議要件も確認する必要があります。

輪番制が細則に定められている場合、多くの管理組合では普通決議によって細則を改正します。

ただし、細則の制定・変更に必要な決議要件についても、それぞれの管理組合の管理規約で確認する必要があります。

また、総会の招集通知には、単に「役員選任方法の見直し」と記載するだけではなく、次の内容を分かりやすく示すことが重要です。

  • 改正する条文
  • 改正の理由
  • 現行・改正案対照表
  • 新しい役員候補者の選定方法
  • 候補者が不足した場合の対応
  • 新制度へ移行する時期

輪番制廃止の成否は合意形成で決まる

輪番制を廃止する際に、最も大きな壁となるのは、規約や手続だけではありません。

組合員の中に根強く残る、次のような考え方です。

輪番制なら全員が順番に担当するため公平である。

昔から続いている制度を変える必要はない。

確かに、役員を担当する回数だけを見れば、輪番制は公平に見えます。

しかし、管理組合の役員は、単に順番が回ってきた人が名前だけを連ねればよいものではありません。

管理費や修繕積立金の管理、大規模修繕、管理会社との契約、規約改正、居住者間の問題など、管理組合の財産と生活環境に関わる判断を行います。

意欲も適性も考慮せず、形式的に全員へ役員を割り当てることが、本当に公平で適切な制度なのかは、改めて考える必要があります。

重要なのは、輪番制を批判することではありません。

自分たちの管理組合で起きている具体的な問題を示し、輪番制を廃止した後も、公正で透明な役員選任ができることを説明することです。

まとめ

輪番制を廃止するための手続は、すべての管理組合で同じではありません。

最初に、現在の輪番制が何を根拠に行われているのかを確認する必要があります。

  • 慣習として続いている場合
  • 過去の総会決議で承認されている場合
  • 管理規約や細則に明記されている場合

自分のマンションがどのパターンに該当するかを確認し、それぞれに必要な手続を進めることが重要です。

また、輪番制を廃止する際には、単に現在の制度をなくすだけでは不十分です。

輪番制に代わって、誰を、どのような基準と手続で役員候補者とするのかを、あらかじめ設計しなければなりません。

輪番制廃止後の具体的な役員選任方法については、別の記事で詳しく解説していく予定です。

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