マンションなどの共同住宅では、各居住者が自分勝手に生活してしまうと廊下やゴミ置場をはじめ、マンション館内全体が荒れてしまったり、居住者間のトラブルが絶えないようなマンションとなってしまいます。
このようなことを防ぐため、分譲マンションを購入すると、そのマンションの区分所有者で構成される団体(規約上で「管理組合」と呼ばれることになる団体)へ強制的に加入をすることとなり、法律の定めにしたがってマンションを管理していくことになります。
その代表的な法律が分譲マンションなど区分所有建物の各所有者の権利やマンション全体の管理方法などを定めた「区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)」と呼ばれる法律になります。
しかし、居住者の属性や家族構成、立地、築年数、設備・・・などなど、世界に1つとして同じマンションなど存在しません。
そのため、区分所有法だけでは居住者の方たちの適切な暮らしや的確な建物の維持・管理をしていくことには無理が生じてしまいます。
そこで、区分所有法ではそれぞれの区分所有マンションにおいて独自のルールを定めるための規約を制定することを認めています。(ただし、規約で定められないこともあります。)
そして、その規約の標準的な見本を国土交通省が作成しており、公表されているものが「標準管理規約」と呼ばれるものです。
本記事では、2021年に改正された最新の標準管理規約(単棟型)における「雑則」について学び、理解を深めることができます。
義務違反者に対する措置(第66条)
標準管理規約第66条では「区分所有者又は占有者が建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、区分所有法第57条から第60条までの規定に基づき必要な措置をとることができる。」と定められています。
理事長の勧告及び指示等(第67条)
理事長による違反者への勧告等(第67条1項)
標準管理規約第67条1項では「区分所有者若しくはその同居人又は専有部分の貸与を受けた者若しくはその同居人(以下「区分所有者等」という。)が、法令、規約又は使用細則等に違反したとき、又は対象物件内における共同生活の秩序を乱す行為を行ったときは、理事長は、理事会の決議を経てその区分所有者等に対し、その是正等のため必要な勧告又は指示若しくは警告を行うことができる。」と定められています。
区分所有者等による是正のための措置(第67条2項)
標準管理規約第67条2項では「区分所有者は、その同居人又はその所有する専有部分の貸与を受けた者若しくはその同居人が前項の行為を行った場合には、その是正等のため必要な措置を講じなければならない。」と定められています。
理事長による違反者へ講ずる措置(第67条3項)
標準管理規約第67条3項では「区分所有者等がこの規約若しくは使用細則等に違反したとき、又は区分所有者等若しくは区分所有者等以外の第三者が敷地及び共用部分等において不法行為を行ったときは、理事長は、理事会の決議を経て、次の措置を講ずることができる。」と定められています。
一 行為の差止め、排除又は原状回復のための必要な措置の請求に関し、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行すること
二 敷地及び共用部分等について生じた損害賠償金又は不当利得による返還金の請求又は受領に関し、区分所有者のために、訴訟において原告又は被告となること、その他法的措置をとること
訴えの提起による違約金の請求(第67条4項)
標準管理規約第67条4項では「前項の訴えを提起する場合、理事長は、請求の相手方に対し、違約金としての弁護士費用及び差止め等の諸費用を請求することができる。」と定められています。
違約金の充当先(第67条5項)
標準管理規約第67条5項では「前項に基づき請求した弁護士費用及び差止め等の諸費用に相当する収納金は、第27条に定める費用に充当する。」と定められています。
第27条に定める費用とは「管理費」のことです。
区分所有者への通知(第67条6項)
標準管理規約第67条5項では「理事長は、第3項の規定に基づき、区分所有者のために、原告又は被告となったときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第43条第2項及び第3項の規定を準用する。」と定められています。
合意管轄裁判所(第68条)
第一審管轄裁判所(第68条1項)
標準管理規約第68条1項では「この規約に関する管理組合と組合員間の訴訟については、対象物件所在地を管轄する○○地方(簡易)裁判所をもって、第一審管轄裁判所とする。」と定められています。
第48条第十一号に関する訴訟(第68条2項)
標準管理規約第68条2項では「第48条第十一号に関する訴訟についても、前項と同様とする。」と定められています。
【標準管理規約第48条第十一号】
十一 区分所有法第57条第2項及び前条第3項第三号の訴えの提起並びにこれらの訴えを提起すべき者の選任
市及び近隣住民との協定の遵守(第69条)
標準管理規約第69条では「区分所有者は、管理組合が○○市又は近隣住民と締結した協定について、これを誠実に遵守しなければならない。」と定められています。
【マンション標準管理規約(単棟型)第69条関係コメント】
① 分譲会社が締結した協定は、管理組合が再協定するか、附則で承認する旨規定するか、いずれかとする。
② 協定書は規約に添付することとする。
③ ここでいう協定としては、公園、通路、目隠し、共同アンテナ、電気室等の使用等を想定している。
細則(第70条)
標準管理規約第70条では「総会及び理事会の運営、会計処理、管理組合への届出事項等については、別に細則を定めることができる。」と定められています。
【マンション標準管理規約(単棟型)第70条関係コメント】
細則は他に、役員選出方法、管理事務の委託業者の選定方法、文書保存等に関するものが考えられる。
規約外事項(第71条)
規約及び使用細則等に定めのない事項(第71条1項)
標準管理規約第71条1項では「規約及び使用細則等に定めのない事項については、区分所有法その他の法令の定めるところによる。」と定められています。
規約、使用細則等又は法令のいずれにも定めのない事項(第71条2項)
標準管理規約第71条2項では「規約、使用細則等又は法令のいずれにも定めのない事項については、総会の決議により定める。」と定められています。
規約原本等(第72条)
標準管理規約第72条では電磁的方法が利用可能ではない場合と可能な場合の2パターンの規定が存在します。
(第72条1項)
この規約を証するため、区分所有者全員が署名した規約を1通作成し、これを規約原本とする。
(第72条2項)
規約原本は、理事長が保管し、区分所有者又は利害関係人の書面による請求があったときは、規約原本の閲覧をさせなければならない。
規約の変更(第72条3項)
規約が規約原本の内容から総会決議により変更されているときは、理事長は、1通の書面に、現に有効な規約の内容と、その内容が規約原本及び規約変更を決議した総会の議事録の内容と相違ないことを記載し、署名した上で、この書面を保管する。
規(第72条4項)
区分所有者又は利害関係人の書面による請求があったときは、理事長は、規約原本、規約変更を決議した総会の議事録及び現に有効な規約の内容を記載した書面(以下「規約原本等」という。)並びに現に有効な第18条に基づく使用細則及び第70条に基づく細則その他の細則の内容を記載した書面(以下「使用細則等」という。)の閲覧をさせなければならない。
(第72条5項)
第2項及び前項の場合において、理事長は、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。
規約原本等及び使用細則等の保管場所の掲示(第72条6項)
理事長は、所定の掲示場所に、規約原本等及び使用細則等の保管場所を掲示しなければならない。
(第72条1項)
この規約を証するため、区分所有者全員が書面に署名又は電磁的記録に電子署名した規約を1通作成し、これを規約原本とする。
(第72条2項)
規約原本は、理事長が保管し、区分所有者又は利害関係人の書面又は電磁的方法による請求があったときは、規約原本の閲覧をさせなければならない。
(第72条3項)
規約が規約原本の内容から総会決議により変更されているときは、理事長は、1通の書面又は電磁的記録に、現に有効な規約の内容と、その内容が規約原本及び規約変更を決議した総会の議事録の内容と相違ないことを記載又は記録し、署名又は電子署名した上で、この書面又は電磁的記録を保管する。
(第72条4項)
区分所有者又は利害関係人の書面又は電磁的方法による請求があったときは、理事長は、規約原本、規約変更を決議した総会の議事録及び現に有効な規約の内容を記載した書面又は記録した電磁的記録(以下「規約原本等」という。)並びに現に有効な第18条に基づく使用細則及び第70条に基づく細則その他の細則の内容を記載した書面又は記録した電磁的記録(以下「使用細則等」という。)の閲覧をさせなければならない。
(第72条5項)
第2項及び前項の場合において、理事長は、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。
(第72条6項)
理事長は、所定の掲示場所に、規約原本等及び使用細則等の保管場所を掲示しなければならない。
(第72条7項)
電磁的記録により作成された規約原本等及び使用細則等の閲覧については、第49条第5項に定める議事録の閲覧に関する規定を準用する。
【マンション標準管理規約(単棟型)第72条関係コメント】
① 区分所有者全員が署名した規約がない場合には、分譲時の規約案及び分譲時の区分所有者全員の規約案に対する同意を証する書面又は初めて規約を設定した際の総会の議事録が、規約原本の機能を果たすこととなる。
② 第4項では、第18条に基づく使用細則及び第70条に基づく細則その他の細則についても、規約原本等と同じ手続で閲覧を認めることを明確に定めた。
規約の発効(附則)
標準管理規約附則の第1条では「この規約は、○年○月○日から効力を発する。」と定められています。
【マンション標準管理規約(単棟型)附則全般関係コメント】
① 新規分譲において、分譲会社等が原始規約案を作成する際の参考とする場合は、附則第1条の次に以下のような附則を規定することが考えられる。
(管理組合の成立)
第2条 管理組合は、○年○月○日に成立したものとする。
(初代役員)
第3条 第35条にかかわらず理事○名、監事○名とし、理事長、副理事長、会計担当理事、理事及び監事の氏名は別に定めるとおりとする。
2 前項の役員の任期は、第36条第1項にかかわらず○年○月○日までとする。
(管理費等)
第4条 各区分所有者の負担する管理費等は、総会においてその額が決定されるまでは、第25条第2項に規定する方法により算出された別に定める額とする。
(経過措置)
第5条 この規約の効力が発生する日以前に、区分所有者が○○会社との間で締結した駐車場使用契約は、この規約の効力が発生する日において管理組合と締結したものとみなす。
② ①に記載するもののほか、初年度の予算及び事業計画等に関しても必要に応じて附則で特例を設けるものとする。
③ 新規分譲において、分譲会社等が原始規約案を作成する際の参考とする場合は、次の点に留意する。
ア)規約の効力発生時点は、最初に住戸の引渡しがあった時とする。また、管理組合の成立年月日も、規約の効力発生時点と同じく、最初に住戸の引渡しがあった時とする。
イ)役員の任期については、区分所有者が自立的に役員を選任することができるようになるまでとする。
ウ)入居後直ちに開催する総会で抽選で駐車場の使用者を決定する場合には、附則第5条は、不要である。
まとめ
本記事の標準管理規約の雑則についてご理解頂けたでしょうか。
残念ながらマンション居住者の中には規約や細則等で定められたことを守らずに自分勝手な行動をして周囲の居住者の方たちに迷惑をかけ、トラブルになることもあります。
そのような時には、管理組合の理事会や理事長がルールに従って迅速に適切に対応することが大切です。
時には訴えを提起して裁判とする必要もでてくるでしょう。
本記事の内容を理解して頂き、マンション居住者の皆さんが適切にマンションで暮らせるように努めて下さい。
本記事も読んでいただきどうもありがとうございました。