令和8年4月施行「改正区分所有法」の衝撃:今、すべての管理組合が管理規約を見直すべき理由
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日本のマンションを取り巻く環境は今、大きな転換点を迎えています。
管理組合活動への意識の変化、区分所有者の世代間のギャップ、建物の高経年化、居住者の高齢化、そして「所在不明・連絡不能」な区分所有者の増加・・・
こうした課題に対応し、マンションという大切な資産を未来へつなぐため、2025年に区分所有法が大きく改正されました。
令和8年(2026年)4月1日の改正法施行、およびそれに先立つ令和7年10月の「マンション標準管理規約」の改正は、すべての管理組合にとって「避けては通れない課題」です。
本コラムでは、MLC片岡マンション管理士事務所の視点から、今回の法改正の要点と、今すぐ着手すべき実務について徹底解説します。
目 次
Toggle第1章:なぜ「今」規約改正が必要なのか?
法律は規約に優先する
最も重要な事実は、「改正法に抵触する既存の規約条項は、たとえ規約を変更していなくても無効となる」ということです。
例えば、従来の規約に「特別決議は総区分所有者および総議決権の3/4以上の賛成が必要」と書かれていても、法改正後は新しい決議方式が優先されます。
規約を古いまま放置することは、総会運営における混乱や、決議の有効性を巡る法的紛争を招くリスクをはらんでいます。
意思決定の「停滞」を打破する
これまでの区分所有法では、大規模修繕や規約変更などの重要事項(特別決議)において、無関心層や連絡が取れない所有者が実質的な「反対票」としてカウントされてしまう構造がありました。
今回の改正は、この「決議ができない」という停滞を打破し、意思決定を迅速化・現実化することを目的としています。
第2章:カテゴリー1「必須の変更事項」
法改正への対応は、大きく「必須の変更」と「推奨される改善」の2つに分けられます。
まずは、組合運営の根幹に関わる必須事項から見ていきましょう。
総会決議ルールの抜本的緩和(多数決方式の導入)
今回の改正における最大の目玉は、特別決議の要件緩和です 。
◆従来のルール
「総区分所有者数および総議決権数」の3/4以上の賛成が必要でした。
◆改正後のルール
定足数(過半数)を満たした総会において、「出席した区分所有者および議決権」の3/4以上での可決が可能になります 。
この多数決方式が適用される主な事項は以下の通りです。
◆規約の制定・変更・廃止
◆形状または効用が著しく変わる共用部分等の変更
◆専有部分の「引渡し請求」、「使用禁止請求」、「競売請求」の訴えの提起
◆その他、総会において多数決方式で決議することを定めた事項
これにより、一部の不在所有者や無関心層によってマンションの重要な改良工事や規約の刷新が阻まれる事態を防ぐことができます 。
総会招集手続きの厳格化と明確化
組合員の権利を守るため、手続き面ではより以下のような丁寧な対応が求められるようになります 。
【議案の要領の通知が必須】
全ての議案について、組合員が事前に賛否を判断できる程度の要約(議案の要領)を招集通知に記載することが必須
【緊急総会の招集期間延長】
総会招集通知発送から開催までの最短期間が、従来の「5日間」から「1週間」へと延長
損害賠償請求権の代理行使
マンションの共用部分等に欠陥があり、損害が発生した場合、これまでは個々の区分所有者が請求を行う必要がありました。
しかし、改正後は理事長が区分所有者の代理として一元的に行使できるようになります。
そのため、規約に「代理行使の明示」や「賠償金の使途制限(建物の復旧に限定)」などの規定を盛り込むことが必要です。
この規定の内容は少しわかりづらいのですが、わかりやすく一言で言うと
共用部分の保険金や損害賠償金は、個々の区分所有者が勝手に請求・受領できず、理事長が一元的に管理組合として扱うための規定です。
第3章:カテゴリー2「推奨される変更事項」
次に、法令違反にはならないものの、組合運営を近代化し、将来のリスクを予防するために強く推奨される項目です。
所在不明者・管理不全問題への切り札
「連絡が取れない部屋がある」「ゴミ屋敷化しているが手が出せない」といった問題に対応する以下のような新制度が導入されます。
【決議からの除外】
一定の手続きを踏むことで、所在不明者を総会決議の母数から除外できるようになります 。
【管理命令の請求】
理事長は、所有者不明または管理不全の専有部分に対し、裁判所を通じて管理命令を請求できるようになります。
管理組合の連絡体制強化(名簿・国内管理人)
管理組合の連絡体制強化の対策として以下のような新制度が導入されます。
【組合員名簿の整備】
氏名や住所を記載した名簿の作成・保管を規約で義務化し、確実な通知発送を可能にする対策にする。
【国内管理人制度】
海外在住の所有者に対し、国内の連絡窓口(管理人)を選任させるよう規約で定めることが可能に。
修繕積立金の「攻め」の活用
これまで曖昧だった修繕積立金の使途が以下のようにより明確化されます。
・マンション再生(更新・売却・取壊し)に向けた調査・設計費用への充当
・建物の機能を新築時以上に高める「改良工事」への充当。これにより、単なる維持補修だけでなく、資産価値を高めるための戦略的な資金活用が可能になります。
第4章:規約改正を成功させるための「進め方」
規約改正は非常に専門性が高く、合意形成にも時間がかかります。
管理組合は以下の2つのパターンから、自らのマンションに合った方法を選択する必要があります。
パターン1:理事会主導型
理事会メンバーが中心となって改正案を作成する方法です。
理事会主導型の主なメリット・デメリットは、以下のとおりです。
【メリット】
主体的に検討することで内容への理解が深まり、コンサル費用を抑えられる
【デメリット】
理事の負担が極めて重く、法令解釈の間違いや検討漏れが発生するリスクがある
パターン2:専門家活用型
マンション管理士などの専門家に改正案の作成を依頼する方法です。
専門家活用型の主なメリット・デメリットは、以下のとおりです。
【メリット】
改正法への適合性が保証され、理事会の実務負担を劇的に軽減できる
【デメリット】
外部委託費用が発生するほか、内容を十分に共有・理解するために理事会との綿密な連携が必要となる
管理規約改正を成功させるための「2つの進め方」
管理規約の改正は、ただ条文を書き換えるだけでなく、区分所有者間の合意形成を図るプロセスが非常に重要です。
現在の管理組合の状況や理事会の負担を考慮し、最適な進め方を選択しましょう。
パターン1:理事会主導型
理事会が中心となって検討・作成を進める方法で、以下のステップで進めていきます。
【改正の要否を検討】
現行の規約・細則を、法令や標準管理規約、マンションの実態と照らし合わせ、整合性を確認します。
改正が必要な場合は、その範囲や進め方を決定します 。
【規約改正案の作成】
理事会内で現行の課題を整理し、改正案を練り上げます。
【総会での決議】
総会を招集し、組合員に対して改正内容を丁寧に説明した上で、決議を行います。
パターン2:専門家活用型
マンション管理士などの専門家と連携し、確実かつ効率的に進める方法で、以下のステップで進めていきます。
【改正の要否を検討】
理事会主導型と同様に、まずは規約改正の必要性と進め方を検討します。
【総会での決議(業務委託の承認)】
専門家に見積もりを依頼し、その専門家に改正案の作成を委託すること自体について、あらかじめ総会で決議を得ます。
【専門家による規約改正案の作成】
専門家が主体となり、理事会と密接に連携しながら、実態に即した高品質な改正案を作成します。
【総会での決議(規約変更の承認)】
総会を招集し、組合員に対して改正内容を丁寧に説明した上で、決議を行います。
結びに:理想論ではマンションは守れない
「うちは今まで通りでいい」という固定観念や過去の慣習から脱却しなければ、マンションの未来は守れません。
令和8年に施行される法改正は、単なる制度の刷新ではなく、マンション管理の質を劇的に向上させるためのチャンスです。
次の世代に胸を張って引き継げる、安心で価値ある住まいをつくるための「大きな転換点」が今、訪れています 。
理想論に留まらない、現実的な管理の最適解を。
貴マンションの未来を、共に切り拓いていきましょう。
【規約改正支援に関するお問い合わせ】
MLC片岡マンション管理士事務所では、「輪番制・理事会方式」にとらわれることなく、それぞれのマンションの実情に即した最適な管理のあり方をご提案しています。
令和8年の法施行を単なる「期限」として受け止めるのではなく、マンションの資産価値と管理体制を見直す好機として捉え、今こそ管理規約の見直しに着手しましょう。
管理規約・細則の改正は、MLC片岡マンション管理士事務所がプロの視点でサポートいたします。
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