マンション管理

マンションの修繕積立金が足りない!と気づいた時の対応は?早めの対応で大規模修繕工事に備える

マンションを購入して所有するとほとんどのマンションでは、管理組合に毎月の管理費と修繕積立金を支払うことになります。

管理費は主にマンションの日常管理である清掃、各設備点検、管理組合及び理事会の運営を実施するため等に使われ、清掃業務や点検業務などは管理を委託する建物管理会社へ毎月決められた金額を支払って実施してもらうマンションが大半を占めています。

そして、修繕積立金はマンションの建物の補修や修繕など限定的なことにのみ使用することが許されるもので、主としては12~15年ごとが適切とされている大規模修繕工事に向けて積み立てていく資金です。

管理費も修繕積立金もそれぞれ大事な資金となりますが、中でも修繕積立金は、いざ大規模修繕工事を本格的に検討する時期になって初めて貯蓄している資金が不足していることに気づき、マンション内で大きな問題となることもありますので注意が必要です。

本記事では、修繕積立金が足りない!と気づいた時の対応方法について学び、大規模修繕工事のために備えることができます。

修繕積立金の不足に気づく時①長期修繕計画書を作成した時


マンションは適切に建物を管理していくためには長期的な修繕計画を策定していくことが求められます。

その修繕計画書として、30年間以上を前提とした長期修繕計画書というものを5~7年程度ごとに見直しして作成していくことが国交省から発表されている修繕計画ガイドラインでも推奨されています。

そしてこの長期修繕計画書を作成することにより毎月管理組合から組合員に対して徴収されている修繕積立金の徴収金額が適正なのかどうかを判断する材料ともなり、適正な修繕積立金額を算出することもできます。

そのため修繕積立金の毎月の徴収金額が低い場合には、この長期修繕計画書を作成することで不足していることに気づくことができます。

また、長期修繕計画書の作成は、簡易に作成するのか、詳細に作成するのか、どこに依頼して作成してもらうかで大きく作成費用も異なってきます。

当然のことですが、詳細に作成すればより正確な修繕積立金の適正な徴収金額が算出することができることは言うまでもありません。

しかし、簡易作成であれば無償であったり数万円程度で作成可能ですが、詳細に作成する場合には安価でも数十万円、マンションによっては数百万円以上かかることも考えられます。

簡易作成と詳細作成のどちらで作成するのかは、しっかりと管理組合側で計画性をもって検討し、作成依頼することが大切でしょう。

特に新築マンションの修繕積立金の金額は、建築主、売主が販売しやすくするためにも低く金額設定されて販売されることが一般的です。

そのため、12~15年の周期で必要とされている大規模修繕工事の実施までの間に新築時に設定されていた修繕積立金額のまま値上げを実施しなかった場合には、ほぼ確実に大規模修繕工事の費用は不足すると考えられ、値上げは避けられないものだと考えてください。

【参考データ】専有面積当たりの修繕積立金の目安

修繕積立金の不足に気づく時②大規模修繕工事の実施を本格的に検討した時


マンションによって多少の差はありますが、一般的に大規模修繕工事は12~15年ごとに実施することが適切とされています。

現在のマンションは技術、材料なども進化しているため、一昔前と比べるともう少し大規模修繕の実施時期を延長しても良いマンションもあるとは思います。

また、日常的に的確に建物の管理がされているマンションである場合も、計画していた大規模修繕工事の実施時期になってもまだ良好な状態が保たれており、すぐに大規模修繕工事を実施しなくても済むこともあるでしょう。

しかし、工事の時期が延びるにせよ、いつかは大規模修繕工事をしなければならない時期は必ずやってきます。

マンションの規模などによっても差がでてきますが、大規模修繕工事には多額の資金が必要です。

そして、修繕積立金が不足しているマンションでは、この大規模修繕を本格的に検討していくと資金が不足していることに気づくことになります。

このように資金が不足している場合には、各区分所有者(管理組合員)に対して工事費用として急遽何十万円、場合によっては百万円の単位での一時費用を徴収しなければならないというケースもでてきます。

また、各区分所有者から一時費用の徴収が難しい場合には、金融機関から工事資金を借入れすることも検討することとなります。

そのような事態に陥らないために、前項で説明した長期修繕計画書を5~7年毎に見直しをして適正な修繕積立金を徴収していくことが大切です。

【大規模修繕工事の戸当たり工事実績金額】
※国土交通省発表令和3年度の実態調査(818件の事例)より
■工事実績金額(TOP3)
100~125万円/戸:27.0%
75 ~100万円/戸:24.7%
125~150万円/戸:17.4%

修繕積立金が不足していると気づいたらまず最初に取り組みたいこと


大規模修繕工事を本格的に検討している中で、修繕積立金の不足に気づいた時には大規模修繕工事費用の不足費用は「区分所有者から一時金を徴収する」、「金融機関から借り入れをする」などの対応が必要となり、修繕積立金の値上げをする対応だけで解決することは困難なケースが多いでしょう。

または、大規模修繕工事を延伸することや最低減の修繕工事箇所にとどめ、修繕積立金を値上げして工事資金が捻出できるタイミングで随時修繕工事を実施していくことなども考えられなくもありません。

一方、長期修繕計画書を作成した時で、かつ大規模修繕工事がまだ数年先の場合に修繕積立金の徴収金額が少ないと気づいた時には対策が異なります。

まず、その時に管理を委託している建物管理会社の担当者に相談すると「修繕積立金の値上げの議案を総会で上程しましょう」という回答が返ってくることが多いに想定されます。

それは建物管理会社にとって修繕積立金の値上げがあっても自社に損害をこうむることは一切ないからです。

また、それが多くのマンションでも修繕積立金不足の解消策として用いられている手段であるため、建物管理会社の担当者にとっても提案の根拠として説明しやすく、管理組合(理事会)に致し方ないとしぶしぶでも納得してもらいやすい理由でもあります。

修繕積立金の値上げは、毎月の徴収金額が少ない場合にはやはり必要なことです。

しかし、それは最終的な手段であり、初めから「修繕積立金の不足=即値上げ」と考えるのは待ってください。

まず最初に検討するべきことは、管理組合会計の収支の見直しです。

管理組合会計の中の管理費会計はマンションの日常清掃、定期清掃、各設備点検、管理組合(理事)運営などを維持、実施して居住者の皆さんが適切にマンション内で暮らすために支出する費用となります。

また、そのような管理業務を建物管理会社へ毎月定額の費用を支払って委託し、契約した範囲の業務を実施してもらうマンションが大半をしめます。

管理費と修繕積立金とは別に管理され、標準管理規約に準拠している管理組合では管理費の剰余金があっても、修繕積立金に振り替えることはできせん。

しかし、管理規約を改正して管理費用の余剰金を修繕積立金に振替えすることは可能となります。

そのため、修繕積立金が不足している。徴収金額が少ないといった場合には管理費会計の収支改善を実現することで管理費の剰余金を修繕積立金に振り替え、修繕積立金の値上げを低減することが可能となるのです。

管理費会計の収支改善を実現するための手段として大きく2つの手段があります。

次にこの2つの手段について説明していきます。

管理費の削減活動

管理費会計の収支改善を実現するための1つ目の手段は管理費の削減への取り組みです。

ただし、管理を委託されている建物管理会社の担当者は管理費の削減の実施に対しては積極的には取り組むことは少なく、あまり期待できないでしょう。

それは「管理費の削減=建物管理会社の利益低減」となる可能性も高くなるからです。

管理を委託している建物管理会社へ毎月支払う委託費用の中にはエレベーター、自動ドア、機械式駐車場などの設備点検や、定期清掃の費用などを含んで契約している管理組合も多くあります。

建物管理会社によっては、それら作業費用に対して自社の管理手数料として費用をのせているところもあり、それら作業を削減することは建物管理会社の利益の低減につながるからです。

一方、LED照明への切替えや共用部の動力系のブレーカーを電子ブレカーにするなど電気代の削減を目的としたような取り組みや、テレビやインターネット設備を管理組合で一括契約していて安価な設備会社に切替えるような取り組みであれば、建物管理会社の委託費用とは全く関係のない場合も多く、建物管理会社の担当者も取り組みに抵抗を感じることは少ないと思います。

ただし、それでも建物管理会社にそのような活動を丸投げすることは、建物管理会社の担当者に労力がかかる取り組みとなるため、管理組合(理事会)が主体的に取り組むことが必要でしょう。

収益事業の実施・拡大活動

2つ目の管理費会計の収支改善の手段として取り組みたいことは、収益事業の実施・拡大の取り組みです。

昨今では、特に東京23区内では自動車の保有率も低くなり、マンション敷地内の駐車場が空車となっていることも珍しくありません。

当然空車となっている区画の駐車場は管理組合に駐車場使用料が入ってこないため、管理費収支悪化の大きな要因の一つとなります。

そのような空車の駐車場はマンション居住者ではない外部の方に有料で貸し出しをして管理組合の収益事業として収益を得ることが可能となります。

ただし、標準管理規約を採用している管理組合の場合に規約改正をしなければ外部者への貸し出しは実施できませんので注意が必要です。

また、基本的に管理組合の収益事業は納税の対象となりますので、そちらも考慮することが必要となります。

駐車場の外部貸し出しの他にも、マンションの収益事業として「自動販売機の設置」、「オートバイ置場の外部貸し出し」、「携帯基地局の設置」、最近では「電動キックボードステーションの設置」などもあります。

マンションの規模や居住者の属性などによっても向き・不向き、賛成・反対などでてきますが1度検討してみる価値はあると思います。

マンション管理士などの外部専門家に相談する

それでは次に、委託する建物管理会社の担当者が管理費会計の収支改善に積極的に取り組んでもらえない場合にどのように改善を実施していけば良いのかをご説明していきたいと思います。

まず大前提として管理組合の理事会が中心となって活動することは必須です。

そして、理事会のメンバーの中にマンション管理について多少知識などがある方がいれば、その人を中心にして改善活動を実施していくことがあげられます。

現在委託している建物管理会社に対しては、時には他社の建物管理会社へ管理委託を変更することも視野に入れることも必要になることもあるでしょう。

現行の建物管理会社も他社に変更される可能性がでてくると、本気で管理費会計の収支改善のために自社の管理委託内容の見直しにも取り組んでくれる可能性が高まります。

私もこれまで理事として建物管理会社変更を視野にいれた活動を実施し、年間100万円以上の管理費会計の収支削減を実現することにより修繕積立金の値上げ低減につなげたこともあります。

しかし、建物管理会社の変更を視野に入れた活動をすることは想像以上に労力がかかることとなりますし、昨今の人手不足、人件費の高騰などで建物管理会社の変更をすることで逆に管理委託費用が高くなってしまう可能性もあるので注意が必要です。

経験したことのある人でも大変ですが、経験の無い理事の方達で活動していくのはより一層大変なことになるのは間違いないでしょう。

そのような場合は、現行の建物管理会社ではない、外部のマンション管理の知識をもったマンション管理士などの外部専門家と相談して活動していくことが有効な手段です。

マンション管理士などの外部専門家に管理費会計の改善のための支援をお願いする場合には一時的に数十万円からマンションの規模によっては数百万円程度の費用はかかりますが、管理費会計から毎月支出する項目の改善が実現できれば十分に元が取れて有益となる場合も多いはずです。

また、管理費の削減だけではなく、収益事業の実施・拡大についても日々の業務に追われる建物管理会社よりも外部のマンション管理士の方が積極的に取り組んでもらえる可能性は高くなるでしょう。

まとめ


それでは、本記事のポイントをまとめてみます

修繕積立金が足りないと気づく理由

①長期修繕計画書を作成した時
・5~7年程度ごとに長期修繕計画を見直して適正な修繕積立金額を知る

②大規模修繕工事の実施を本格的に検討した時
・一般的には大規模修繕工事は12~15年程度で実施することが適切とされている
※ただし、マンションの日頃の管理状態や部材などにより実施時期は異なっていく

◆修繕積立金の不足に気づいたら最初に取り組むこと

①管理費の削減に取組む
・建物管理会社は管理費削減活動には消極的な可能性が高い

②収益事業を開始・拡大する
・管理費剰余金の修繕積立金への振替は規約を変更すれば可能

③マンション管理士などの外部専門家に相談する
・管理費削減のための取り組みには労力がかかる

本記事も読んでいただき、どうもありがとうございました。

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