2024年から日本国内では、これまで期間に制限のあった旧NISAから期間に制限のない新NISAがスタートし、貯蓄から投資へと日本政府も日本国民に対して発信しています。
ここ数年で日本国内でも物価が高騰してインフレとなり、日本円の現金を保有しているだけでは実質資産が減っている状態となってしまうため、インフレ対策として投資をしていくことはリスク対策として有効と言えるでしょう。
一昔前の40代以上の世代の方達の中には、投資と聞くと「リスクが高い」、「危険だ」、「銀行預金が一番安心・安全だ」と、投資に関して全く知識もないにもかかわらず漠然とそのように思い込み、未だに投資未経験という方も多くいるのではないでしょうか。
もちろんリスクがない投資は存在しません。
しかし、それは銀行預金も同じです。
先に述べたようにインフレによる貨幣価値の下落というリスクや1000万円以上の預金は金融機関が破綻した際に保証されないなど銀行預金にもリスクはあるのです。
私は大学を卒業して社会人になった2年目には、株式投資を始めました。
始めたきっかけはいくつかありますが、当時の会社の先輩から「株式投資を始めると世の中の経済の動きに敏感になり、仕事する上でもプラスになるから始めた方が良いぞ」と聞いたこともきっかけの一つでした。
始めた当時は購入した株の会社が半年ほどで倒産してしまい株券が紙屑になるような残念な出来事もあり当時は後悔しましたが、今ではそれも良い思い出になっています。
それからも、投資信託や外貨預金、金・プラチナ投資など様々な投資を経験してきていますが、中でも私が35歳の時に始めた区分所有マンション投資は私の人生を変えるほどインパクトがあるものでした。
私が区分所有マンション投資を始めたのは2008年9月15日に発生したリーマン・ショックの翌年の2009年の会社員の時でした。
今振り返ると非常に幸運だったのですが、当時は日本国内も不況となり不動産価格も底値といっても過言ではないほど下落していて、現在と比較するとかなり安価な価格で区分所有マンションを購入することができました。
購入した何件かの物件は横浜駅近くや東京都23区内の区分所有マンションだったこともあり、堅実に家賃収入を得ることもできて順風満帆な区分所有マンション投資ができていたと言えます。
周囲の区分所有マンション投資仲間も、ほぼ全員といって良いほど順風満帆な区分所有マンション投資で堅実に物件数を増やして家賃収入を得ていたと思います。
しかし、冒頭でも述べたようにここ数年で日本国内の様々な要因によるインフレにより金利が上昇し、東京23区の分譲マンション価格の平均が1億円を超えるような現状となっているなど区分所有マンション投資の状況も確実に変化していることを感じています。
また、区分所有マンションは、各区分所有によって構成される団体である管理組合を設立してマンション全体の管理をしていかなければいけません。
そのため各区分所有者の合意形成が得られずに老朽化が進行しても適切に補修、修繕ができない。建て替えができないなど、多くの区分所有マンションには問題が山積しているのが実態です。
本記事では区分所有マンション投資のこれまでと今後の見通しについてご紹介していきます。
これからのご自身の区分所有マンション投資の判断材料の一つとしてお役に立てていただければ幸いです。
区分所有マンション投資とは?
戸建てを購入して賃貸する不動産投資、アパートやマンションを建築して各住戸は分譲せずに一棟丸ごと自身で所有して賃貸する不動産投資、そして分譲マンションの1住戸を購入して賃貸する区分所有マンション投資など不動産投資といっても様々な種類があります。
ここでは、分譲マンションの1住戸を購入して投資していく区分所有マンション投資について説明していきます。
まず、区分所有マンション投資で利益を得ていく方法としては大きく2つに分かれます。
1つ目は、区分所有マンション購入時の価格からの値上がりを見込んで売却時に利益を出していく方法です。
この値上がりによる利益のことをキャピタルゲインと呼びます。
そして、もう1つ目は、購入した区分所有マンションの住戸を賃貸して家賃収入を得ていく方法です。
この家賃収入ことを先のキャピタルゲインに対してインカムゲインと呼びます。
また、家賃収入を得ていく方法としても2年間などの契約期間を決めて賃貸する賃貸借契約と観光客などを対象として住戸を短期間で貸し出し可能とする民泊などにも分かれていきます。
賃貸管理に関しましても所有者自らが全て管理をしていく方法もあれば、賃貸管理会社に管理を委託する方法もあります。
しばしば問題になることがありますが、不動産会社と賃貸借契約を締結して不動産会社が借主に転貸するサブリース契約というものもあります。
いづれにせよ、どの区分所有マンション投資にもメリット、デメリットが存在します。
また、区分所有マンション投資に関わらずどのような投資にもリスクは必ずあります。
区分所有マンション投資を始める時には複数の書籍を読む、複数社のセミナーに参加する、周囲に区分所有マンション投資の経験者がいるようであれば話を聴くなど自身でしっかりと勉強をすることをお勧めします。
ただし、現在の成功者と同じことをしたからといって自身も同じように成功する保証はどこにもありません。
最終的には自己判断で投資するかどうかの決断をして、損害を被ったからといって他責にすることはできないことを十分理解してください。
これまでの区分所有マンション投資
1980年代半ばからのバブル経済の時期には購入した不動産物件の値上がり益を見込んだキャピタルゲイン狙いで不動産投資を始めた投資家たちが多く、バブル崩壊後にはそれらの多くの投資家たちが大きな損害を被り、多くの不動産会社も倒産しました。
バブル崩壊後は株価も不動産価格も下落していき、キャピタルゲインを狙った不動産投資は非現実的なものとなっていきました。
そこで注目され始めたのが、月々の安定した家賃収入を得ることを主な目的としたインカムゲイン狙いの不動産投資です。
区分所有マンションも景気に大きく左右されて物件価格の変動も激しくなります。
しかし、区分所有マンションの家賃はこれまでも物件の価格変動と比較するとそれほど大きくは変動しません。
そのため、バブル崩壊後から失われた30年と呼ばれる期間には短期間で大きく利益を得ることはできないものの、中長期的にコツコツと堅実に家賃収入を得ていく区分所有マンション投資を実践してきた方たちが順調に不動産投資を継続することができたのではないでしょうか。
残念ながら不動産会社の中には悪質と言わざるを得ない不動産仲介会社が未だに多く存在しており、高額な不動産物件を購入してから不動産仲介会社と突然連絡がとれなくなったり、倒産してしまったりするようなことも珍しくありません。
しかし、不動産会社の中でも区分所有マンションのオーナー住戸の賃貸管理をメインにして誠実に取り組む不動産会社は堅実に業績をあげて成長しています。
このことからも「物件を販売してから後の事は知りません・・・」というようなスタンスの不動産仲介会社ではなく、物件を購入してからも自身の住戸を誠実に管理してくれるような賃貸管理会社を見つけて区分所有マンション投資をしていくことも非常に重要な成功の秘訣でしょう。
また、一見するとコツコツと家賃収入を得ていくような不動産投資は株式投資やFXなどの投資と比較すると物足りなく魅力にかけると感じる方たちも多いかもしれません。
しかし、不動産投資の最大の魅力は自己資金だけではなく、金融機関でローンを組んで投資ができることです。
もしもあなたの友人や他人から「1千万円貸して欲しい。返済は月々20年払いで」と頼まれたら貸すでしょうか。
いくら信頼している昔からの友人だったとしても躊躇する人がほとんどではないでしょうか。
もちろんローンを組む前に金融機関は信用審査など様々なことを調査した上で、ローンを組むことができるのか、金額はいくらまでかを決めていきます。
それでも3年以上同じ会社で勤務している会社員であれば金額は異なりますが数百万円~数千万円のローンを組むことができる方たちが多いと思います。
このように不動産投資は金融機関でローンを組んで実践できる投資で、このローンを賢く活用することで区分所有マンションの物件数を増やして自身の資産を増やしていくことが可能となるのです。
不動産投資を実践したことのない方の多くは「ローン=借金」と捉えて、不動産投資はハイリスク・ハイリターンと考えがちです。
確かに不動産投資初心者でいきなり自身が金融機関で組めるMAX金額でのローンを組むようなことは危険でしょう。
ローンを組む前には、しっかりと区分所有マンション投資について勉強し、シミュレーションもしてから身の丈に合った金額のローンを組むことをお勧めします。
このようにバブル崩壊後からの区分所有マンション投資は、「物件価格の下落」と「低金利時代の突入」という2つの条件も重なり、金融機関のローンを上手く活用することによって区分所有マンションを1戸、2戸、3戸・・・と毎年のように増やし、順風満帆に区分所有マンション投資を実施してきた方たちが数多く出てきたというわけです。
【バブル経済での不動産投資】
不動産物件の値上がり益を狙ったキャピタルゲイン目的の不動産投資が主流
【バブル経済崩壊後の不動産投資】
中長期的にコツコツと安定した家賃収入を得ていくインカムゲイン目的の不動産が主流
今後の区分所有マンション投資の見通し
2019年5月1日より元号が平成から令和となり、当初は2020年開催予定の東京オリンピックを境に不動産価格は下落していくと多くの業界関係者やメディアも予想していました。
しかし、現実はその予想とは全く異なるものとなりました。
2020年からの新型コロナウィルスによるパンデミックにより、これまでの生活様式が一変したことも影響したのかは定かではありせんが、ロシアとウクライナの戦争などもありコロナ禍にも関わらず不動産価格は上昇の一途をたどり、2024年終盤に入っても価格が落ち着くような気配がありません。
特に東京23区内では2024年度には新築分譲マンション価格が平均1億円を超えるなど、一般の方たちではなかなか手が出ないところまで価格が上昇してしまっています。
また、新築物件の価格がここまで高騰するということはもちろん中古物件も同様に高騰していくことにつながり、中古物件の区分所有マンションでも東京23区内では手が出ないという方たちが多く出てきています。
そこに加えて国内では人件費や材料費の高騰などによりインフレとなり、金融機関の金利も上昇し始めています。
更にまたそれに加えて日本国内の区分所有マンションの大きな問題の一つとなっている修繕積立金不足により適切な補修・修繕ができないという問題を改善するために毎月管理組合から徴収する修繕積立を何倍にも値上げしなければいけない事態が多くのマンション管理組合で発生しています。
私が区分所有マンション投資を開始した2009年頃は金融機関の金利は現在よりも若干高かったですが、マンション価格が現在と比較すると非常に安価だったため、ある程度の頭金を準備できれば十分に毎月の収益がプラスとなる投資シミュレーションとなる区分所有マンションの物件も多かったです。
また、それ以降も物件価格が上昇していったものの金融機関の金利は下がり続け、低金利時代と呼ばれる時代にも突入していき、中長期的にコツコツと家賃収入を得ていく区分所有マンション投資をすることは成功の秘訣として間違いないものと感じられてきました。
しかし、昨今(2024年以降)はどうでしょう?
前述しました3つの価格上昇の懸念事項を払拭できるような区分所有マンション投資にとっての好材料があるとはなかなか考えられません。
特にこれから初めて区分所有マンション投資を実践しようと思う方にとっては残念ながら厳しい投資となることが多いに予想されます。
ただし、相続対策など収益を主目的としないで区分所有マンション投資を検討する方などはこれから実践することも十分に価値があるのではないでしょうか。
また、既に区分所有マンション投資を数年~数十年実施されており、物件も複数所有している方であれば物件の買い増しやより収益が中長期的に見込める良い物件への買い替えを検討してみる価値はあると考えます。
このように今後の区分所有マンション投資は、これまでの数十年は上手くいっていた方法が通用しなくなっていくと考えた方が良いでしょう。
特にこれからの国内のマンションは築40年以上の築古マンションが増えていき、建物管理が資産価値に大きな影響を与え、それにより自身の住戸の家賃収入にも大きな影響を及ぼす可能性も大きくなります。
これまでは全く管理組合の活動に興味がなかった区分所有マンションオーナーも総会への資料に目を通し、最低でも議決権行使書を提出するといった管理活動を実践していくことがご自身の資産を守っていくためにも重要です。
これから区分所有マンション投資を実施したいと考えている方はこれまでの成功者の事例を勉強して参考にしながらも、今後起こり得る可能性があることも勉強し、それを加味してシミュレーションしてから区分所有マンション投資を実施するかどうか判断することをお勧めします。
また、これまで区分所有マンション投資を実施されてきた方たちは、現在の区分所有マンション投資の状況とご自身の最終目的を今一度見直して区分所有マンション投資の出口戦略を考え直してみる必要があるのではないでしょうか。
【2024年末時点の区分所有マンション投資の3つの懸念事項】
・マンション価格の高騰
・金利の上昇
・修繕積立金の値上げ
マンションの資産価値の維持・向上は管理が決め手
これまで本記事において区分所有マンション投資のこれまでと今後の見通しなどについて自身の経験も交えて述べてきましたが、私はプロの不動産投資家とは思っておりませんので今後の区分所有マンション投資の成功に対するアドバイスが的確にできるとは言い難いです。
しかし、私は区分所有マンション建物管理のプロです。
今後の区分所有マンション全体の資産価値の維持・向上については的確にアドバイスできると思っています。
もちろん100棟のマンションがあれば100通りの的確な管理方法があると言って過言ではありませんので、ここで全てのマンションについての的確なアドバイスをすることは不可能です。
そのためここでは、賃貸化率の高い(区分所有マンション投資家の多い)区分所有マンションでいかにマンションの資産価値を高め、中長期的に自身の住戸で家賃収入を得ていくかに焦点を当てて説明していきたいと思います。
まず不動産投資で重要な要素の1つとして立地があげられますが、立地は購入してから自身の活動で変えられることはありませんので、同じような立地の他のマンションと比較して資産価値を維持・向上させることと考えてください。
そして、マンション全体の資産価値の維持・向上を図っていくためには管理組合員の合意形成が最重要であることは間違いありません。
しかし、ひとえに管理組合活動と言っても様々な活動があります。
次に資産価値を向上していくための具体的な管理組合活動についてなど大きく3つに分けて説明していきたいと思います。
マンション全体の資産価値の向上が安定した家賃収入や上昇につながる
本音として区分所有マンションオーナーとしては、自身の所有している住戸が安定した家賃で賃貸でき続けさえすればマンション全体の資産価値が向上しなくても全く気にしないという方たちも多いのではないでしょうか。
もちろん出口戦略としていづれは売却しようと考えている方たちにとってはマンション全体の資産価値の向上も大切となりますが、そのような方たちでもいざ売却を本格的に検討していく時まではマンション全体の資産価値の向上に対してあまり関心を持つことはないのかもしれません。
しかし、同じマンション内で自身の住戸だけが中長期的に安定した家賃を継続して得ていくことは難しいでしょう。
それは、もし自身の住戸で賃借人の退去者が発生した際に他の住戸にも空室がでていて賃貸募集している際にはその家賃を基準にして自身の住戸の賃貸価格を検討していかざるを得ない状況となるからです。
その募集賃貸価格が低額であればあるほど自身の住戸の家賃もそれにあわせて低額にしていかなければ早期に新入居者が見つかる可能性が低くなるからです。
逆にそのマンションの管理が行き届いておりマンション全体の資産価値が高く、賃貸として人気のあるマンションであったらどうでしょう。
そのようなマンションであれば相場より家賃が高かったとしても新入居者がすぐにみつかり安定した家賃で賃貸することが中長期的にも可能となります。
また、空室の少ないマンションであればそれだけ家賃を高く設定することができ、新入居者を募集するたびにマンション全体の家賃価格が上昇していきオーナーとしては好循環マンションとなっていくことも十分に考えられます。
このように自身の所有する住戸で中長期的に安定した家賃を得ていくためにはマンション全体の住戸の家賃を上昇させる必要があり、そのためにはマンションの共用部分もしっかりと管理し、居住者が適切に利便性高く暮らせるよう努めていくことが重要となるわけです。
健全な管理組合会計を維持する
ここ数年は多くの物、事が値上がりしています。
マンション管理業界でも例外なく、建物管理を委託する管理会社への管理委託費から、補修・修繕工事費用など多くの費用が値上がりしています。
特に12~15年ごとに実施することが適切とされている大規模修繕工事においては、多額の費用がかかることもあり費用が不足して適切に実施することができないマンションも多く発生しています。
大規模修繕工事を適切に実施できないことは、マンション建物全体の適切な管理の維持・向上に直結していく重大な問題へと発展していきます。
もしも「漏水が発生した」、「エレベーターが使えない」、「給排水設備が使用できない」などの問題が発生した時には、居住者の暮らしや利便性が大きく低下し、賃貸人であるオーナーへ対しても賃借人から家賃の減額請求されるリスクも十分に想定される重大な問題です。
そのような事態に陥らないためにも5年程度ごとに見直すことが適切とされている今後30年間以上のマンションの修繕計画などを反映させた長期修繕計画書を見直し、適切な修繕積立金を徴収して積み立てていくことが必要となります。
また、修繕積立金とは用途の事なる日々の管理に支出する管理費会計においては、基本的に毎年の収支が赤字に陥るようなことがあってはいけません。
その年に限ってのみ特別な高額支出がある場合などを除いて、毎年のように収支が赤字になっている管理組合では管理費会計の支出見直しや管理費の値上げなどを検討し、赤字とならないよう迅速に改善することが求められます。
ただし、管理費や修繕積立金の値上げは管理組合総会での承認を得なければ実施することはできず、値上げの議案が総会で否決される管理組合も少なくありません。
特に不動産投資目的で自身の所有する住戸を賃貸している区分所有者にとって管理費や修繕積立金の値上げは収益減につながる大きな懸念事項となります。
そのような区分所有者が多い管理組合においては、「管理費や修繕積立金が不足しているので値上げする」という単純な説明だけでは多くの区分所有者は納得しない可能性が高いです。
しっかりとした根拠を示して区分所有者たちの理解を得ることが必須となるでしょう。
そこで、次に管理費及び修繕積立金の値上げをする前にまずは実施したい2つの活動について説明していきたいと思います。
管理組合会計の支出削減に努める
管理費の値上げを検討する前にまず初めにすぐに取り組みたい活動は管理費の支出項目を洗い出し、支出の見直しを検討することです。
管理組合の管理費からの支出項目は次のようなものがあげられます。
・建物管理会社への管理委託費
・建築設備定期検査費
・エレベーター保守料
・機械式駐車場保守料
・自動ドア保守費
・宅配ボックス保守料
・その他消防設備、給排水設備など各種設備保守料
・雑排水管洗浄作業費
・植栽剪定費
・防犯カメラレンタル費
・インターネット利用料
・電気・水道料
・損害保険料
・組合運営費
・通信交通費
・備品、消耗品費
※定期検査や設備保守料などは管理委託費に含まれる場合もあります
上記のような支出項目はマンションごとに異なります。
また、同規模のマンションであっても同じ項目の費用が異なることも珍しくはありません。
もちろん対応内容の違いによって金額が異なることは考えられますが、同等の対応内容であっても大きく金額が異なることもあります。
残念ながら管理を委託する建物管理会社任せにしてしまい、管理組合側からこれらの支出費用に対して疑問をもち、適正な金額なのかを調査していかなければ改善されることはほとんど望めないでしょう。
逆に考えるとこれまで全く改善活動をしていなかった管理組合では積極的に改善活動すれば昨今の物価高騰の中でも管理費会計を削減できる可能性は十分に考えられます。
具体的な改善活動については次に示します。
ご参考のうえ、ぜひ改善活動に取り組み管理費会計の支出削減を実現してください。
①ランニングコストを見直す
管理費の削減でまず初めに取り組みたいことは、電気代などのランニングコストを削減する取り組みです。
昨今ではマンションの共用部の照明はLED照明が大半を占めると思いますが、中にはLED照明でないよう箇所があったりするものです。
数十年前に建築されたマンションであればLED化されていないところも未だに多いはずです。
そのようなマンションではこれまでの蛍光灯や電球などの照明からLED照明にすることでランニングコストを削減することができます。
また、マンション内のエレベーターや機械式駐車場、給水ポンプなどの動力系と呼ばれる電気代を通常のブレーカーから電子ブレーカーに変更することで電気代を削減できるマンションも多くあります。
いづれにせよ一時費用は発生しますが、中長期的に考えれば管理費会計の支出削減につなげることができることが多いはずです。
ランニングコストの削減は早期に実施すればするほど削減効果は大きくなります。
ぜひすぐに検討してみてください。
②内容と要否を見直す
次に取り組みたい活動は支出項目についての内容と本当に必要な事なのかどうかを見直してみることです。
各設備の保守料などは対応内容によって費用が低減できる場合もあります。
現在の対応内容が過剰である場合などは契約内容を見直して費用を低減しましょう。
また、費用対効果を考えて対応自体が過剰と判断される場合には、契約を解約することも検討してみましょう。
③金額と業者を見直す
3つ目に取り組みたい活動は、内容は変更せずに金額の値下げができないか打診してみましょう。
昨今の物価高騰により拒否される可能性が高いことは否めませんが、新築時から業者(契約先)を変更してない場合は割高な金額で契約されている可能性も十分に考えられます。まずは値下げの打診をしてみましょう。
値下げの打診をした結果、拒否された時には多少労力は費やすことになりますが、業者の変更を検討してみることもお勧めです。
④契約形態を見直す
マンション館内のエレベーターや自動ドア、機械式駐車場の保守契約は管理組合と各設備業者との直接契約ではなく、管理委託している建物管理会社経由で契約を締結している管理組合も少なくありません。
そして建物管理会社経由での契約の場合、管理組合と各業者の間で直接契約する場合と比較して高額となっている場合も多くあります。それは、建物管理会社の管理コストなどが含まれているためです。
そのような契約形態をしている場合には、建物管理会社へ管理組合と業者の直接契約に見直すことを打診して直接契約時の見積書を取得してください。
その結果、契約内容の変更もなく、金額が下がるようであれば管理組合と業者間の直接契約に見直すことも検討しましょう。
ただし、これまで建物管理会社経由で報告されてきた保守報告などはなくなり、業者から管理組合に直接報告書が提出されるようなことが考えられますので、それらデメリットになりそうな事項をしっかりと把握して判断してください。
管理組合の収益事業を展開する
先に説明した管理費の支出削減とあわせて取り組みたいことは管理組合の収益を増やすための収益事業の展開です。
管理組合としての収益を得ることで、修繕積立金を値上げしなければいけない管理組合においては、確実に値上げ幅を低減することができます。
また、既に適切な金額で修繕積立金を徴収できている管理組合では収益を増やすことで修繕積立金の値下げを実現することも夢ではありません。
収益事業はマンションによって何ができるのか異なってきます。
自身のマンションで収益事業として何ができそうなのか管理組合、理事会内で議論をして検討しましょう。
ただし、原則的に収益事業には納税義務が発生しますので、税金やそれらにかかる税理士などへの委託費用などの諸費用も考慮する必要もでてきます。
建物管理会社のフロント担当者やマンション管理士などの外部の専門家と相談しながら検討することもお勧めです。
また、収益事業を開始するにあたり管理規約や使用細則などの制定・改正が必要なこともあります。
もし管理規約や使用細則などの制定・改正が不要な場合においても収益事業を開始すること自体を管理組合の総会で決議することが必要です。
収益事業によってはマンション居住者以外の外部の不特定多数の人がマンションの敷地内に入ってくるようなこともあります。
そのため、居住者の中にはマンション敷地内が荒れることやセキュリティを不安視して反対する可能性も少なくなく、総会での承認を得るためにはそれらの懸念事項に対する対策と説明も大切となるでしょう。
これまでご説明した内容を考慮のうえ、収益事業の展開を検討してみてください。
最後にマンションでの収益事業(例)を次のとおりにあげておきますので、参考にしてください。
・駐車場の外部者への貸出し
・オートバイ置場の外部者への貸出し
・自動販売機の設置
・携帯基地局の設置
・看板の設置
・電動キックボードステーションの設置
・シェアサイクルステーションの設置
・シェアカーの設置
・キッチンカーの受け入れ(敷地の貸出し)
管理費及び修繕積立金の徴収金額を値上げする
先にお伝えした「管理組合会計の支出削減」と「収益事業の展開」を検討し、考えられることは全て実施したうえでも管理費および修繕積立金が不足するようであれば、いよいよ最終手段として管理費または修繕積立金の徴収金額を値上げすることを検討しましょう。
考えられる改善に取り組み、それでも費用が不足していることが組合員に伝われば値上げに対して理解してくれる組合員も多くなるはずです。
ただし、各組合員へはどのような改善に取組み、どのくらいの金額が改善できたなど定量的に示すことと、なぜその金額の値上げが必要なのかを数字で示して説明することが多くの組合員に理解していただくためには必要でしょう。
管理費の値上げ及び修繕積立金の値上げの必要性の見極めと値上げ金額については次のとおりにそれぞれまとめますので参考にしてください。
【値上げの必要性がある場合】
①管理費会計の年間収支が赤字である場合
②管理費会計から新たに支出するべき事項があり、年間収支が予算計画上赤字になってしまう場合
【値上げ金額】
管理費会計の年間収支の赤字金額分を値上げする
※予備費用を考慮して赤字金額分以上の値上げを検討することも考えられる
【値上げの必要性がある場合】
30年以上の長期修繕計画書を作成し、修繕積立金が不足する場合
【値上げ金額】
長期修繕計画書上、修繕積立金が不足することがない金額に値上げする
上記のとおりに管理費の値上げ及び修繕積立金の値上げの必要性の見極めと値上げ金額をまとめましたが、修繕積立金の値上げについては値上げに理解していただいた組合員であっても注意する点があります。
それは修繕積立金の値上げ方法には30年以上の修繕計画を反映させた長期修繕計画書にもとづいて数年ごとに段階的に値上げして積立てしていく「段階積立方式」と均等の金額を積立てしていく「均等積立方式」の2つの方法があるからです。
国土交通省など一般的に適切とされている方法は均等積立方式ですが、長期間低額な修繕積立金であった管理組合では均等積立方式の金額に値上げしようとすると、かなりの値上げ金額となることも多く、段階積立方式の方を希望する組合員の方たちも少なくないのが実状です。
しかし、段階積立方式はいつかは均等積立方式を超える金額の修繕積立金への値上げが必要となるため一時的な負担の先延ばしに過ぎないことを理解することが必要です。
そのため、段階積立方式でも均等積立方式であってもそれぞれのメリット、デメリットをしっかりと説明したうえで各組合員の意見交換会やアンケート調査などを実施し、どちらの積立方式を採用するのかを決めて管理組合の総会議案上程して審議することをお勧めします。
理想ではなく現実的な管理組合活動を実践する
マンションを適切に管理していくためには「マンションの管理の主体は管理組合であって、区分所有者である組合員たちが意識を高めて積極的に自ら管理活動に取り組むこと」だとこれまでも一般的に言われてきました。
このことは、国土交通省をはじめとして、マンション管理に携わる有識者たちも現在も同様に区分所有者に向けて発信しています。
しかし、残念ながら区分所有マンションオーナーの多くはそのマンションに居住していないという理由からも管理組合活動に対して無関心な方たちが多いのが実状です。
また、そのような区分所有者の皆さんに理事など管理組合の役員に就任して活動することを求めることは理想ではありますが、現実的ではないでしょう。
また、区分所有者たちが管理活動することはあくまでも「手段であって目的ではありません」
あくまでも管理活動の目的は「マンションを適切に管理して維持していくこと」です。
手段にこだわり、目的が実現できないことは本末転倒です!
そして、マンション一つひとつ実態に即した管理体制を構築して管理を実施していくことこそが的確だと言えます。
現在は区分所有者ではないマンション管理士や建物管理を受託する管理業者などが管理組合の理事会制度を廃止して、理事会方式でいうところの理事長である管理者に就任して管理活動を実施していく「外部管理者方式」を採用するマンション管理組合も増えてきています。
特に外部に居住する区分所有者が多く、役員のなり手がいないマンションの管理組合においては、区分所有者たちだけで何とかしようとするのではなく、理事会方式から管理者方式に変更し、マンション管理のプロであるマンション管理士などに管理者に就任してもらって管理活動を実施していくことが現実的ではないでしょうか。
くれぐれも手段にこだわりすぎて「マンションを適切に管理して維持していく」という管理活動の本来の目的を見失わないようにしてください。
まとめ
最後に、本記事のポイントを簡単にまとめてみます
・分譲マンション(区分所有マンション)の1住戸を購入して投資していく
・値上がりによる利益を得る(キャピタルゲイン)
・賃貸して家賃収入を得る(インカムゲイン)
・バブル経済での不動産投資は不動産物件の値上がり益を狙ったキャピタルゲイン目的の不動産投資が主流
・バブル経済崩壊後の不動産投資は中長期的にコツコツと安定した家賃収入を得ていくインカムゲイン目的の不動産が主流
・「マンション価格の高騰」、「金利の上昇」、「修繕積立金の値上げ」の3つの懸念事項あり
・既に物件を複数所有していれば、より収益が中長期的に見込める良い物件への買い替えを検討してみる価値あり
・最低でも総会の議決権行使書を提出することがご自身の資産を守っていくためには重要
・マンション全体の資産価値の維持・向上を図っていくためには管理組合の合意形成が最重要
・中長期的に安定した家賃を得ていくためにはマンション全体の住戸の家賃を上昇させる必要がある
・健全な管理組合会計を維持するために「管理組合会計の支出削減」、「管理組合の収益事業を展開」、「管理費及び修繕積立金の徴収金額を値上げ」を検討する
・区分所有者たちが管理活動することはあくまでも「手段」
・管理活動の目的は「マンションを適切に管理して維持していくこと」
・手段にこだわり、目的が実現できないことは本末転倒!
・区分所有者たちだけで何とかせずにマンション管理士などのプロに任せることも検討する
本記事も読んでいただき、どうもありがとうございました。