マンション管理

マンションの修繕積立金が足りないかも?と気づいた時の対応は?早めの対応で大規模修繕工事に備える!

マンションを購入して所有するとほとんどのマンションでは、管理組合に毎月の管理費と修繕積立金を支払うことになります。

管理費は主にマンションの日常管理である清掃、各設備点検、管理組合及び理事会の運営を実施するため等に使われ、清掃業務や点検業務などは管理を委託する建物管理会社へ毎月決められた金額を支払って実施してもらうマンションが大半を占めています。

そして、修繕積立金はマンションの建物の補修や修繕など限定的なことにのみ使用することが許されるもので、主としては12~15年ごとに実施の見込まれる大規模修繕工事に向けて積み立てていく資金です。

管理費も修繕積立金もそれぞれ大事な資金となりますが、中でも修繕積立金は、いざ大規模修繕工事を本格的に検討する時期になって初めて預金額が不足していることに気づき、マンション内で大きな問題となることが頻繁にありますので注意が必要です。

本記事では、修繕積立金が足りないかも?と気づいた時の対応方法について学び、大規模修繕工事のために備えることができます。

マンションの修繕積立金が足りないと気づく理由①毎月の修繕積立金の徴収金額が少ない


マンションによって毎月徴収される管理費、修繕積立金の金額は異なります。

特に新築マンションの修繕積立金の金額は、建築主、売主が販売しやすくするためにも低く金額設定されて販売されることが一般的です。

そのため、大規模修繕工事の実施される12~15年ぐらいまでの間に新築時に設定されていた修繕積立金額のまま値上げを実施しなかった場合には、ほぼ確実に大規模修繕工事の費用は不足するといえます。

このように工事するための資金が不足している場合には、各区分所有者(管理組合員)に対して工事費用として急遽何十万円、場合によっては百万円単位での一時費用を徴収しなければならないというケースもでてきます。

【毎月の修繕積立金徴収金額データ】
♦既存マンション・階数別データ
(毎月の修繕積立金徴収金額の平均額)
1~4階 :12,387円(203円/㎡)
5~9階 :12,431円(208円/㎡)
10~14階:11,249円(193円/㎡)
15~19階:10,880円(160円/㎡)
20~29階:16,103円(196円/㎡)
30階以上:18,532円(205円/㎡)
全体:12,142円(200円/㎡)    
※2022年1~3月販売された東京都内分譲マンション(9,350件)が対象
(マンション管理新聞社調査より)

そのような事態に陥らないために、一般的には管理組合とマンションの管理を委託する建物管理会社が毎月の修繕積立金の徴収額が少ないと気づき、段階的に値上げする提案を管理組合(理事会)に対して行います。

しかし、修繕積立金の金額は強制的には値上げすることができず、管理組合の総会で値上げをすることを決議しなければできません。

そのため総会での決議(賛成)が得ることができずにマンションによっては、修繕積立金が不足するとわかっていても値上げすることができない場合もあるのです。

マンションの修繕積立金が足りないと気づく理由②長期修繕計画書の作成

マンションによって多少の差はありますが、一般的に大規模修繕工事は12~15年ごとに実施することが推奨されています。

現在のマンションは技術、材料なども進化しているため、一昔前と比べるともう少し工事時期を延長しても良いマンションも出てくるかもしれません。

また、日常的に的確に建物の管理がされているマンションである場合も、計画していた大規模修繕工事時期になってもまだ良好な状態が保たれており、すぐに大規模修繕工事を実施しなくても済むこともあるでしょう。

しかし、工事の時期が延びるにせよ、いつかは大規模修繕工事をしなければならない時期は必ずやってきます。

そして、マンションの規模や性質によっても差がでてきますが、大規模修繕工事には多額の費用が必要です。

そのため、今後30年間以上を前提とした長期修繕計画書というものを5~7年程度ごとに見直しして作成していくことが国交省から発表されている修繕計画ガイドラインでも推奨されており、この長期修繕計画書を作成することにより現在の修繕積立金の徴収金額が適正なのかどうかを判断する材料となり、適正な修繕積立金額を算出することができます。

また、長期修繕計画書の作成は、簡易に作成するのか、詳細に作成するのか、どこに依頼して作成してもらうかで大きく作成費用も異なってきます。

当然のことですが、詳細に作成すればより正確な修繕積立金の適正な徴収金額が算出することができるのは言うまでもありません。

しかし、簡易作成であれば数万円で作成可能ですが、詳細に作成する場合には安くても数十万円、マンションによっては数百万円以上かかることも充分考えられます。

簡易作成と詳細作成のどちらで作成するのかは、しっかりと管理組合側で計画性をもって検討し、作成依頼することが大切でしょう。

マンションの修繕積立金が足りないと気づいたらまず最初に検討するべきこと

現在の修繕積立金の徴収金額が少ないと気づいた時に、管理を委託している建物管理会社の担当者に相談すると「修繕積立金の値上げの議案を総会で上程しましょう」という回答が返ってくるでしょう。

建物管理会社にとって修繕積立金の値上げがあっても自社に損害をこうむることは一切ありません。

また、それが多くのマンションでも修繕積立金不足の解消策として用いられている手段であるため、建物管理会社の担当者にとっても提案の根拠として説明しやすく、管理組合(理事会)に納得してもらいやすい理由でもあり、安易にそのように提案してくるのだとも思います。

修繕積立金の値上げは、毎月の徴収金額が少ない場合にはやはり必要なことです。

しかし、それは最終的な手段であり、初めから「修繕積立金の不足=値上げ」と考えるのは待ってください。

まず最初に検討するべきことは、管理費など管理組合の収支の見直しです。

管理費は修繕積立金とは異なり、マンションの日常清掃、定期清掃、各設備点検、管理組合(理事)運営などを維持、実施して居住者の皆さんが適切にマンション内で暮らすために支出する費用となります。

また、そのような管理を建物管理会社へ毎月定額の費用を支払って委託し、契約した範囲の業務を実施してもらうマンションがほとんどです。

管理費用と修繕積立金とは別に管理され、基本的には管理費の余剰金があっても、修繕積立金に振替することはできせん。

しかし、管理規約を変更して管理費用の余剰金を修繕積立金に振替することが可能となります。

そのため、修繕積立金が不足している。徴収金額が少ないといった場合に、管理費の削減を実施することで修繕積立金に振り替え、修繕積立金の値上げを低減することが可能となるのです。

但し、管理を委託されている建物管理会社の担当者は管理費の削減の実施に対しては積極的には取り組むことは少なく、あまり期待できないでしょう。

それは「管理費の削減=建物管理会社の利益低減」となる可能性も高くなるからです。

管理を委託している建物管理会社へ毎月支払う委託費用の中にはエレベーター、自動ドア、機械式駐車場などの設備点検や、定期清掃の費用などを含んで契約している管理組合も多くあります。

建物管理会社によっては、それら作業の費用に対して多くの利益をのせているところもあり、それら作業を削減することは建物管理会社の利益の低減につながるからです。

それでは、委託する建物管理会社の担当者が管理費削減に取り組んでもらえない場合にどのように管理費を削減していけば良いのかをご説明します。

まず大前提として管理組合の理事会が中心となって活動することは必須です。

そして、理事会のメンバーの中にマンション管理について多少知識などがある方がいれば、その人を中心にして管理費削減が可能かどうかを検討していきます。

現在委託している建物管理会社に対して単に値下げの要望だけをしても検討してくれないことは想定されるので、他の建物管理会社へ変更することも視野に入れ、管理委託内容の変更も含めた相見積もりを取ることが一番効果があると思われます。

現行の建物管理会社も他社に変更される可能性がでてくると、本気で委託内容及び費用の改善に動いてくれる場合が多いでしょう。

私もこれまで理事として建物管理会社変更を視野にいれた活動を実施し、年間100万円以上の管理費の削減を実現して、修繕積立金の値上げ低減を達成してきました。

しかし、建物管理会社の変更を視野に入れた理事活動をすることは想像以上に労力がかかることとなります。

経験したことのある人でも大変ですが、経験の無い理事の方達で活動していくのはより一層大変なこととなるのは間違いありません。

そのような場合は、現行の建物管理会社ではない、外部のマンション管理の知識をもった専門家と相談して活動していくことも一案です。

外部のマンション管理の専門家に管理費削減のための支援をお願いする場合には一時的に数十万円からマンションの規模によっては数百万円程度の費用はかかりますが、毎月の管理費の削減を実現することができれば十分に元が取れて有益となる場合が多くなるはずです。

修繕積立金が不足している。徴収金額が少ないと思ったら、すぐに修繕積立金の値上げをするのではなく、まずは管理費の削減を検討してみるということを心がけてみてください。

まとめ

  

それでは、本記事のポイントをまとめてみます

修繕積立金が足りないと気づく理由

①修繕積立金の徴収金額が少ない
♦既存マンションの毎月の修繕積立金徴収金額の平均額
平均額:12,142円(200円/㎡)
※2022年1~3月販売された東京都内分譲マンション(9,350件)が対象
(マンション管理新聞社調査より)

②長期修繕計画書の作成
・5~7年程度ごとに長期修繕計画を見直して適正な修繕積立金額を知る

修繕積立金の不足に気づいたら最初に管理費の削減を検討する
・現行の建物管理会社は管理費の削減には消極的
・管理費から修繕積立金の振替は管理規約を変更すれば可能
・管理費削減のための理事活動には多くの労力がかかる
・管理会社とは違う外部のマンション管理の専門家に相談する

本記事も読んでいただき、どうもありがとうございました。

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