マンション管理

マンション管理組合の理事の担い手不足への対策~理事会方式から管理者方式へ変更する~

日本国内のマンションでは、管理組合の理事の担い手不足も深刻な問題の一つとなっており、役員報酬を支給することで担い手不足の解消をしていくコラムを以前にも投稿しました。

しかし、業務に見合う役員報酬が支給できなければ、積極的に理事に立候補しようと思う人が現れないマンションも少なくないのが現実でしょう。

担い手不足は報酬だけの問題だけではなく、「管理組合の活動に関心がない」「理事会活動は誰かがやってくれるだろう」など、他人任せにして自身が行動しなくても問題ないと思っている組合員の方たちによる「理事会(管理)活動への無関心化」が最大の原因ではないかと考えています。。

これら無関心な組合員の方たちに管理組合、理事会活動への関心を持ってもらうためには管理活動の大切さを地道に伝えていかなければならず、一朝一夕にはいきません。

そして、最近私が特に深刻な問題だと捉えている要因があります。

それは、理事による積極的な管理活動が重要だと重々認識している組合員の方たちでさえ、本業の傍ら理事など役員に就任することをためらってしまうことです。

そのため、もはや現代の多くのマンションにおいては、管理組合員が理事へ就任して理事会活動を実施すること、すなわち理事会方式を採用した管理組合体制がもはや多くのマンションでは適切な体制ではなくなっているものと推測しています。

本記事を読むことで、これまでの理事会方式から管理組合員の方たちの負担を減らす管理者方式の導入をすることによってマンション建物全体の維持・向上を実現していくことについて学ぶことができます。

理事会方式と管理者方式の違い


これまでの区分所有マンションでは、管理組合が構成されるとその組合員の複数名が理事など役員に就任する「理事会方式」が一般的でした。

しかし、昨今は、多くのマンションにおいて役員に就任してくれる組合員の方たちが見つからないことが増えていることを冒頭でもお伝えしました。

そこで、ここ最近になって特に築浅の投資型の区分所有マンションでは、新築当初から理事会方式を採用せずに、「管理者方式」を採用することが多くなってきています。

理事会方式では、理事長をはじめとする複数名の理事+監事を置きますが、管理者方式では理事会方式でいう理事長のような存在の管理者1名+監事1名を置く体制が多くなります。(管理者及び監事を複数名置くことも可能です。)

また、管理者や監事を組合員からではなく、組合員以外の外部の専門家が就任するようなパターンもあります。

管理者方式を採用することで、組合員の方たちの負担はかなり軽減されることは間違いないでしょう。

理事会方式と管理者方式の構成は下図をご覧下さい。

文章で説明するよりもわかりやすいと思います。

理事会方式から管理者方式に変更する方法

これまでの多くの既存マンションの管理組合では、理事会方式が採用されてきました。

理事会方式から管理者方式に変更するためには、管理規約の改正が必要となる管理組合が大多数となります。

管理規約を改正するためには管理組合の総会において特別決議(総議決権及び総組合員数の3/4以上の賛成)での承認が必要です。

そのため、マンションによっては管理者方式に変更することが厳しく、時間と労力のかかる活動となる可能性も否定できません。

また、管理規約や使用細則などの詳細を決める際には、区分所有法など法律の知識も必要となってきます。

管理会社やマンション管理士などの専門家に管理規約や使用細則などの素案作成を依頼することが望ましく、ある程度の費用の発生も考慮する必要があるでしょう。

以後に理事会方式から管理者方式に変更する時の流れについて記載しますので参考にして下さい。

理事会方式から管理者方式への変更手順

①理事会にて管理者方式へ変更するための詳細内容を検討
・規約や細則案、変更時期などの詳細内容を確定
※専門家に規約案等の素案作成を有料依頼するには、総会で予算の承認を得ることが適切
※組合員へのアンケートや意見交換会開催等も有益

②理事会の決議(総会への議案上程)

③総会で規約改正(管理者方式の規定)の決議(特別決議での承認)

④総会で管理者、監事の選任(普通決議での承認)

⑤管理者方式での運営開始

管理者方式のメリット・デメリット

理事会方式と比較して、組合員の方たちの負担が軽減できるメリットのある管理者方式ですが、逆にデメリットとなることもあります。

次に理事会方式と比較した時の管理者方式の主なメリット・デメリットをあげてみます。

こちらを参考にしながら、管理者方式に変更するかどうかの参考の1つにしてみて下さい。

管理者方式の主なメリット

・組合員の負担軽減が図れる(理事人数の削減)
・理事の担い手不足の解消が図られる
・管理者による迅速な管理活動が図られ易い

管理者方式の主なデメリット

・管理者の負担(責任)が重い
・管理者の考えや力量に依存した管理活動(状態)となり易い
・組合員全体の管理活動への意識がより低くなる可能性がある
・監事の役割が重要となる(管理者の不適格な業務等のチェックが必要)

管理者を外部の専門家などに委託する外部管理者方式

これまで、管理者方式に変更することで理事の担い手不足問題を解消していく手段の一つとなることをお伝えしてきました。

しかし、そもそも管理者や監事の各1名の担い手すらなかなか組合員の中から見つからないというマンションも少なくないでしょう。

また、専門知識も多く必要となるマンション管理活動において、専門知識や経験もない組合員が本業の傍らで管理者や監事に就任した時に、果たしてしっかりとその役目を務めることができるのかと不安、疑問に思う方たちも多いのではないでしょうか。

そのようなマンションへの対応策として、組合員ではない外部の専門家に管理者に就任してもらって職務を委託する「外部管理者方式」というものがあります。

実は、先でも述べました最近増えている管理者方式は、組合員による管理者方式ではなく、外部の専門家が管理者に就任する外部管理者方式が大半を占めています。

また外部管理者方式の中でも、管理組合から管理を委託されている管理会社が管理者に就任する「管理業者管理者方式」と呼ばれる方式が多く採用されています。

この外部管理者方式の構成についても文章で説明するよりも図で見ていただいた方が理解しやすいと思いますので、次の構成図を参照のうえ、ご理解して頂ければと思います。

外部管理者方式の注意点

外部管理者方式は、マンション管理の専門家であるマンション管理士や管理会社などマンション管理のプロが管理者を務めることを想定します。

そのため、マンション管理の知識のない組合員の方が管理者を務めるよりもマンションの建物や設備などの点検、保守、補修などがしっかりと実施される可能性が高くなることは言うまでもありません。

しかし、外部管理者方式はメリットだけではなく、管理者を委託するための費用が発生するなど、デメリットもいくつかあります。

そこで、次にメリット、デメリットをまとめてみます。

外部管理者方式を採用するかどうかの検討をする際には、ぜひ参考にしてください。

外部管理者方式の主なメリット

・組合員の管理者就任の必要がなくなり、組合員の負担(労力)の軽減が図られる
・マンション管理のプロが管理者となることにより、しっかりと建物や設備の維持・補修が実施される可能性が高まる
・マンションの資産価値の向上や居住者の利便性の向上に関わる取組みが積極的に実施される可能性が高まる

外部管理者方式の主なデメリット

・管理者の目線(ビジネスとしての目線)での管理活動となる
・管理者を委託する費用が発生する
・監事の役割がより重要となる(管理者の業務など厳格なチェックが必要)
・管理を委託する管理会社が管理者となった場合、管理組合と管理者(管理業者)との利益が相反(管理組合よりも管理業者の利益を優先)するようなことが多く実施されてしまう可能性が高くなる

まとめ


それでは、本記事のポイントをまとめます。

理事会方式と管理者方式

理事会方式:複数名の理事+監事
管理者方式:管理者+監事

理事会方式から管理者方式への変更

管理規約の改正(総議決権及び総組合員数の3/4以上の賛成が必要)が必要となり、変更するためには労力がかかる取り組みとなることも多い

管理者方式のメリット・デメリット

理事の人数が減り、管理組合全体の負担は軽減するが、管理者の負担と監事の重要性は高くなる

外部管理者方式

組合員以外のマンション管理士や管理会社などのマンション管理の専門家に管理者を委託する方式

外部管理者方式メリット・デメリット

・外部のマンション管理の専門家が管理者となるため、マンション建物の維持・補修がしっかりと実施されたり、居住者の利便性やマンション資産価値の向上も期待できる。
・管理を委託する管理会社が管理者となると、管理組合よりも管理会社の利益を優先する可能性も高くなるので注意が必要

本記事も読んでいただき、どうもありがとうございました。

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