マンションにおける「複合用途型」とは、一般分譲の住居と店舗が併用されているマンションのことを指します。
マンションなどの共同住宅では、各居住者が自分勝手に生活してしまうと廊下やゴミ置場をはじめ、マンション館内全体が荒れてしまったり、居住者間のトラブルが絶えないようなマンションとなってしまいます。
また、マンションの低層階に店舗が入っているような複合用途型のマンションでは居住者と店舗側でトラブルが発生することも想定されます。
このようなことを防ぐため、そのマンションの区分所有者で構成される団体(規約上で「管理組合」と呼ばれることになる団体)へ強制的に加入をすることとなり、法律の定めにしたがってマンションを管理していくことになります。
その代表的な法律が分譲マンションなど区分所有建物の各所有者の権利やマンション全体の管理方法などを定めた「区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)」と呼ばれる法律になります。
しかし、どのような居住者が住んでいるのか、店舗は飲食なのか、コンビニエンスストアなのか・・・などなど、世界に1つとして同じマンションなど存在しません。
そのため、区分所有法だけでは適切な暮らしや店舗運営、そして的確な建物の維持・管理をしていくことには無理が生じてしまいます。
そこで、区分所有法ではそれぞれの区分所有マンションにおいて独自のルールを定めるための規約を制定することを認めています。(ただし、規約で定められないこともあります。)
そして、その規約の標準的な見本を国土交通省が作成しており、公表されているものが「標準管理規約(複合用途型)」と呼ばれるものです。
本記事では、2021年に改正された最新の標準管理規約(複合用途型)の主要な箇所について学び、理解を深めることができます。
マンション標準管理規約(複合用途型)全般コメント
マンション標準管理規約(複合用途型)コメントの全般関係では①~⑧まで述べられていますが、特に重要だと思われる②~⑤及び⑧について次に記載します。
② この複合用途型標準管理規約が対象としているのは、一般分譲の住居・店舗併用の単棟型マンションで、各住戸、各店舗についてはその床面積、規模、構造等が、均質のものもバリエーションのあるものも含めている。
③ 複合用途型マンションの形態として、「大規模な再開発等による形態のもの」と「低層階に店舗があり、上階に住宅という形態で住宅が主体のもの」とがあるが、本規約の対象としては、複合用途型として多数を占めている後者の形態とした。
前者の形態の場合には、住宅部分、店舗部分のそれぞれの独立性が強いこと、事業実施主体も大規模で管理体制もしっかりしたものとなっていること、各マンションの個別性が強いことから、そのマンションの実態に応じて個別に対応することが必要である。実際の複合用途型マンションは多種多様な形態が考えられるため、このマンション標準管理規約(複合用途型)を参考にして、物件ごとに異なる実情を考慮して管理規約を定めることが望まれる。
④ 店舗や事務所が併設されているマンションであっても、その併設比率が小さく、店舗一部共用部分、住宅一部共用部分がない場合は、必ずしも複合用途型ではなく、単棟型又は団地型のマンション標準管理規約を参考にして、管理規約を定めることも考えられる。いわゆる等価交換により特定の者が多数の住戸又は店舗を区分所有する場合、管理組合を法人とする場合、複合用途型でも数棟のマンションが所在する団地型マンションの場合等は別途考慮するものとする。
⑤ この規約は、区分所有者全員の共有物である敷地、全体共用部分及び附属施設のほか、一部の区分所有者の共有物である一部共用部分についても全体で一元的に管理するものとし、管理組合は全体のものを規定し、一部管理組合は特に規定していない。
⑧ 最初に管理規約を制定する際には、店舗部分に関する駐車場、店舗前スペース等専用使用部分に関すること、看板に関すること、店舗の業種や営業時間等について、各マンションの実態に応じて細かい規定を制定することが、後のトラブル発生を回避する観点から重要である。なお、等価交換によるマンションでは、旧地権者とそれ以外の区分所有者の衡平に留意することが重要である。
専有部分の範囲(第7条)
区分所有権の対象となる専有部分(第7条1項)
標準管理規約(複合用途型)第7条1項では「対象物件のうち区分所有権の対象となる専有部分は、次のとおりとする。」と定められています。
一 住戸番号を付した住戸(以下「住戸部分」という。)
二 店舗番号を付した店舗(以下「店舗部分」という。)
構造物の帰属(第7条2項)
標準管理規約(複合用途型)第7条2項では「前項の専有部分を他から区分する構造物の帰属については、次のとおりとする。」と定められています。
一 天井、床及び壁は、躯体部分を除く部分を専有部分とする。
二 玄関扉及びシャッターは、錠及び内部塗装部分を専有部分とする。
三 窓枠及び窓ガラスは、専有部分に含まれないものとする。
共用部分内にある部分以外の設備(第7条3項)
標準管理規約(複合用途型)第7条3項では「第1項又は前項の専有部分の専用に供される設備のうち共用部分内にある部分以外のものは、専有部分とする。」と定められています。
【マンション標準管理規約(複合用途型)第7条関係コメント】
① 専有部分として倉庫又は車庫を設けるときは、「倉庫番号を付した倉庫」又は「車庫番号を付した車庫」を加える。また、全ての住戸又は店舗に倉庫又は車庫が附属しているのではない場合は、管理組合と特定の者との使用契約により使用させることとする。
② 利用制限を付すべき部分及び複数の住戸又は店舗によって利用される部分を共用部分とし、その他の部分を専有部分とした。この区分は必ずしも費用の負担関係と連動するものではない。利用制限の具体的内容は、建物の部位によって異なるが、外観を構成する部分については加工等外観を変更する行為を禁止し、主要構造部については構造的変更を禁止する趣旨である。
③ 第1項は、区分所有権の対象となる専有部分を住戸部分と店舗部分に限定したが、これらの境界について疑義を生じることが多いので第2項で限界を明らかにしたものである。
④ シャッターについてはすべて専有部分とし、利用制限を付すことも可能である。
⑤ 雨戸又は網戸がある場合は、第2項第三号に追加する。(第3項関係)
⑥ 「専有部分の専用に供される」か否かは、設備機能に着目して決定する。
共用部分の範囲(第8条)
標準管理規約(複合用途型)第8条では「対象物件のうち共用部分を次のとおり区分し、その範囲は別表第2に掲げるとおりとする。」と定められています。
一 全体共用部分 共用部分のうち次号及び第三号に規定する部分以外の部分をいう。
二 住宅一部共用部分 共用部分のうち住戸部分の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな部分をいう。
三 店舗一部共用部分 共用部分のうち店舗部分の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな部分をいう。
1 全体共用部分
○共用エントランスホール、共用廊下、共用階段、共用エレベーターホール、屋上、屋根、塔屋、自家用電気室、機械室、受水槽室、高置水槽室、パイプスペース、メーターボックス(給湯器ボイラー等の設備を除く。)、内外壁、界壁、床スラブ、基礎部分、床、天井、柱、バルコニー等専有部分に属さない「建物の部分」
○共用エレベーター設備、電気設備、給水設備、排水設備、消防・防災設備、インターネット通信設備、テレビ共同受信設備、オートロック設備、宅配ボックス、避雷設備、集合郵便受箱、各種の配線配管(給水管については、本管から各住戸メーターを含む部分、雑排水管及び汚水管については、配管継手及び立て管)等専有部分に属さない「建物の附属物」
○管理事務室、管理用倉庫、清掃員控室、集会室、トランクルーム、倉庫及びそれらの附属物
2 住戸一部共用部分
○住宅用エントランスホール、住宅用階段、住宅用廊下(○階~○階)、住宅用エレベーターホール、住戸用共用トイレ、住宅用エレベーター室、住宅用エレベーター設備
3 店舗一部共用部分
○店舗用階段、店舗用廊下(○階~○階)、店舗用共用トイレ
共有(第9条)
敷地、全体共用部分及び附属施設(第9条1項)
標準管理規約(複合用途型)第9条1項では「対象物件のうち敷地、全体共用部分及び附属施設は、区分所有者の共有とする。」と定められています。
住宅一部共用部分(第9条2項)
標準管理規約(複合用途型)第9条2項では「住宅一部共用部分は、住戸部分の区分所有者のみの共有とする。」と定められています。
店舗一部共用部分(第9条3項)
標準管理規約(複合用途型)第9条3項では「店舗一部共用部分は、店舗部分の区分所有者のみの共有とする。」と定められています。
バルコニー等の専用使用権(第14条)
専用使用権の承認(第14条1項)
標準管理規約(複合用途型)第14条1項では「区分所有者は、別表第4に掲げるバルコニー、玄関扉、シャッター、窓枠、窓ガラス、一階に面する庭、店舗前面敷地及び屋上テラス(以下この条、第21条第1項及び別表第4において「バルコニー等」という。)について、同表に掲げるとおり、専用使用権を有することを承認する。」と定められています。
別表第4にはバルコニーや各店舗のシャッター等の専用使用権についての取り決めの一覧表が記載されています。
専用使用料の納入義務(第14条2項)
標準管理規約(複合用途型)第14条2項では「一階に面する庭又は店舗前面敷地について専用使用権を有している者は、別に定めるところにより、管理組合に専用使用料を納入しなければならない。」と定められています。
専有部分の貸与者の専用使用権(第14条3項)
標準管理規約(複合用途型)第14条3項では「区分所有者から専有部分の貸与を受けた者は、その区分所有者が専用使用権を有しているバルコニー等を使用することができる。」と定められています。
【マンション標準管理規約(複合用途型)第14条関係コメント】
① バルコニー等については、専有部分と一体として取り扱うのが妥当であるため、専用使用権について定めたものである。
② 専用使用権は、その対象が敷地又は共用部分等の一部であることから、それぞれの通常の用法に従って使用すべきこと、管理のために必要がある範囲内において、他の者の立入りを受けることがある等の制限を伴うものである。
工作物設置の禁止、外観変更の禁止等は使用細則で物件ごとに言及するものとする。また、店舗のための看板等の設置については、内容、手続き等について使用細則を定めるものとする。
③ バルコニー及び屋上テラスが全ての住戸に附属しているのではない場合には、別途専用使用料の徴収について規定することもできる。
全体管理費等(第25条)
全体管理費等の納入義務(第25条1項)
標準管理規約(複合用途型)第25条1項では「区分所有者は、敷地、全体共用部分及び附属施設の管理に要する経費に充てるため、次の費用(以下「全体管理費等」という。)を管理組合に納入しなければならない。」と定められています。
一 全体管理費
二 全体修繕積立金
全体管理費等の額(第25条2項)
標準管理規約(複合用途型)第25条2項では「全体管理費等の額については、住戸部分のために必要となる費用と店舗部分のために必要となる費用をあらかじめ按分した上で、住戸部分の区分所有者又は店舗部分の区分所有者ごとに各区分所有者の全体共用部分の共有持分に応じて算出するものとする。」と定められています。
一部管理費等(第26条)
一部共用部分の管理に要する費用の納入義務(第26条1項)
標準管理規約(複合用途型)第26条1項では「一部共用部分の管理に要する経費に充てるため、住戸部分の区分所有者にあっては第一号及び第三号に掲げる費用を、店舗部分の区分所有者にあっては第二号及び第四号に掲げる費用を、それぞれ管理組合に納入しなければならない。」と定められています。
一 住宅一部管理費
二 店舗一部管理費
三 住宅一部修繕積立金
四 店舗一部修繕積立金
一部管理費等の額(第26条2項)
標準管理規約(複合用途型)第26条2項では「前項各号に掲げる費用(以下「一部管理費等」という。)の額については、住戸部分又は店舗部分の各区分所有者の一部共有部分の共有持分に応じて算出するものとする。」と定められています。
【マンション標準管理規約(複合用途型)第25条及び第26条関係コメント】
① 全体管理費等の各区分所有者の負担額は、住戸部分及び店舗部分のために必要となる費用をあらかじめ按分した上で、住戸部分のために必要となる費用分については住戸部分の区分所有者の全体共用部分の共有持分の合計に対する各区分所有者の共有持分の割合により算出し、店舗部分のために必要となる費用分については店舗部分の区分所有者の全体共用部分の共有持分の合計に対する各区分所有者の共有持分の割合により算出することとする。
住戸部分及び店舗部分のために必要となる費用の按分は、費用項目を分けた上でその項目ごとに費用発生の原因を勘案し、費用負担として振り分けることが適当である。
② 全体管理費のうち、管理組合の運営に要する費用については、組合費として全体管理費とは分離して徴収することもできる。
③ 議決権割合の設定方法について、一戸一議決権(第50条関係②)や価値割合(第50条関係③)を採用する場合であっても、これとは別に管理費等の負担額については、第2項により、共用部分の共有持分に応じて算出することが考えられる。
④ なお、管理費等の徴収や、滞納があった場合の取扱い等については、第65条を参照のこと。
全体管理費(第28条)
標準管理規約(複合用途型)第28条では「全体管理費は、敷地、全体共用部分及び附属施設の次の各号に掲げる通常の管理に要する経費に充当する。」と定められています。
一 管理員人件費
二 公租公課
三 共用設備の保守維持費及び運転費
四 備品費、通信費その他の事務費
五 全体共用部分及び附属施設に係る火災保険料、地震保険料その他の損害保険料
六 経常的な補修費
七 清掃費、消毒費及びごみ処理費
八 委託業務費
九 専門的知識を有する者の活用に要する費用
十 管理組合の運営に要する費用
十一 その他第36条に定める業務に要する費用(第29条から第31条までに規定する経費を除く。)
住宅一部管理費及び店舗一部管理費(第29条)
標準管理規約(複合用途型)第29条では「住宅一部管理費は住宅一部共用部分の、店舗一部管理費は店舗一部共用部分の、それぞれ次の各号に掲げる通常の管理に要する経費に充当する。」と定められています。
一 管理員人件費
二 公租公課
三 共用設備の保守維持費及び運転費
四 備品費、通信費その他の事務費
五 一部共用部分に係る火災保険料、地震保険料その他の損害保険料
六 経常的な補修費
七 清掃費、消毒費及びごみ処理費
八 委託業務費
九 専門的知識を有する者の活用に要する費用
十 その他第36条に定める業務に要する費用(住宅一部共用部分又は店舗一部共用部分のみに係るものに限る。次条及び第31条に規定する経費を除く。)
【マンション標準管理規約(複合用途型)第28条及び第29条関係コメント】
① 管理組合の運営に要する費用には役員活動費も含まれ、これについては一般の人件費等を勘案して定めるものとするが、役員は区分所有者全員の
利益のために活動することに鑑み、適正な水準に設定することとする。なお、コメント第41条関係②を参照のこと。
② 従来、本条第十号に掲げる管理費の使途及び第36条の管理組合の業務として、「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成(に要する費用)」が掲げられていた。これは、日常的なトラブルの未然防止や大規模修繕工事等の円滑な実施などに資するコミュニティ形成について、マンションの管理という管理組合の目的の範囲内で行われることを前提に規定していたものである。しかしながら、「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」との表現には、定義のあいまいさから拡大解釈の懸念があり、とりわけ、管理組合と自治会、町内会等とを混同することにより、自治会費を管理費として一体で徴収し自治会費を払っている事例や、自治会的な活動への管理費の支出をめぐる意見対立やトラブル等が生じている実態もあった。一方、管理組合による従来の活動の中でいわゆるコミュニティ活動と称して行われていたもののうち、例えば、マンションやその周辺における美化や清掃、景観形成、防災・防犯活動、生活ルールの調整等で、その経費に見合ったマンションの資産価値の向上がもたらされる活動は、それが区分所有法第3条に定める管理組合の目的である「建物並びにその敷地及び附属施設の管理」の範囲内で行われる限りにおいて可能である。
以上を明確にするため、第十号及び第36条第十五号を削除するとともに、第36条第十二号を「マンション及び周辺の風紀、秩序及び安全の維持、防災並びに居住環境の維持及び向上に関する業務」と改めることとした。
また、従来、第28条第十二号に「その他敷地、全体共用部分及び附属施設の通常の管理に要する費用」及び第29条第十一号に「その他一部共用部分の通常の管理に要する費用」が掲げられていたが、第36条に定める業務との関連が不明確であったことから、第28条第十一号で「その他第36条に定める業務に要する費用(第29条から第31条までに規定する経費を除く。)」と改め、第29条第十号で「その他第36条に定める業務に要する費用(住宅一部共用部分又は店舗一部共用部分のみに係るものに限る。次条及び第31条に規定する経費を除く。)」と改めることとした。上述の第36条第十二号の業務に要する費用は、本号あるいは別の号の経費として支出することが可能である。
③ 管理組合は、区分所有法第3条に基づき、区分所有者全員で構成される強制加入の団体であり、居住者が任意加入する地縁団体である自治会、町内会等とは異なる性格の団体であることから、管理組合と自治会、町内会等との活動を混同することのないよう注意する必要がある。各居住者が各自の判断で自治会又は町内会等に加入する場合に支払うこととなる自治会費又は町内会費等は、地域住民相互の親睦や福祉、助け合い等を図るために居住者が任意に負担するものであり、マンションを維持・管理していくための費用である管理費等とは別のものである。
自治会費又は町内会費等を管理費等と一体で徴収している場合には、以下の点に留意すべきである。
ア 自治会又は町内会等への加入を強制するものとならないようにすること。
イ 自治会又は町内会等への加入を希望しない者から自治会費又は町内会費等の徴収を行わないこと。
ウ 自治会費又は町内会費等を管理費とは区分経理すること。
エ 管理組合による自治会費又は町内会費等の代行徴収に係る負担について整理すること。
④ 上述のような管理組合の法的性質からすれば、マンションの管理に関わりのない活動を行うことは適切ではない。例えば、一部の者のみに対象が限定されるクラブやサークル活動経費、主として親睦を目的とする飲食の経費などは、マンションの管理業務の範囲を超え、マンション全体の資産価値向上等に資するとも言い難いため、区分所有者全員から強制徴収する管理費をそれらの費用に充てることは適切ではなく、管理費とは別に、参加者からの直接の支払や積立て等によって費用を賄うべきである。
全体修繕積立金(第30条)
全体修繕積立金の取り崩し(第30条1項)
標準管理規約(複合用途型)第30条1項では「管理組合は、各区分所有者が納入する全体修繕積立金を積み立てるものとし、積み立てた全体修繕積立金は、次の各号に掲げる特別の管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことができる。」と定められています。
一 一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
二 不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
三 敷地、全体共用部分及び附属施設の変更
四 建物の建替え及びマンション敷地売却(以下「建替え等」という。)に係る合意形成に必要となる事項の調査
五 その他敷地、全体共用部分及び附属施設の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理
建替え決議による全体修繕積立金の取り崩し(第30条2項)
標準管理規約(複合用途型)第30条2項では「前項にかかわらず、区分所有法第62条第1項の建替え決議(以下「建替え決議」という。)又は建替えに関する区分所有者全員の合意の後であっても、マンションの建替え等の円滑化に関する法律(平成14年法律第78号。以下「円滑化法」という。)第9条のマンション建替組合の設立の認可又は円滑化法第45条のマンション建替事業の認可までの間において、建物の建替えに係る計画又は設計等に必要がある場合には、その経費に充当するため、管理組合は、全体修繕積立金から管理組合の消滅時に建替え不参加者に帰属する全体修繕積立金相当額を除いた金額を限度として、全体修繕積立金を取り崩すことができる。」と定められています。
マンション敷地売却決議による全体修繕積立金の取り崩し(第30条3項)
標準管理規約(複合用途型)第30条3項では「第1項にかかわらず、円滑化法第108条第1項のマンション敷地売却決議(以下「マンション敷地売却決議」という。)の後であっても、円滑化法第120条のマンション敷地売却組合の設立の認可までの間において、マンション敷地売却に係る計画等に必要がある場合には、その経費に充当するため、管理組合は、全体修繕積立金から管理組合の消滅時にマンション敷地売却不参加者に帰属する全体修繕積立金相当額を除いた金額を限度として、全体修繕積立金を取り崩すことができる。」と定められています。
借入れ時の全体修繕積立金による償還(第30条4項)
標準管理規約(複合用途型)第30条4項では「管理組合は、第1項各号の経費に充てるため借入れをしたときは、全体修繕積立金をもってその償還に充てることができる。」と定められています。
住宅一部修繕積立金及び店舗一部修繕積立金(第31条)
一部修繕積立金の積み立て(第31条1項)
標準管理規約(複合用途型)第31条1項では「管理組合は、住戸部分の各区分所有者が納入する住宅一部修繕積立金及び店舗部分の各区分所有者が納入する店舗一部修繕積立金を、それぞれ積み立てるものとする。」と定められています。
一部修繕積立金の取り崩し(第31条2項)
標準管理規約(複合用途型)第31条2項では「住宅一部修繕積立金は住宅一部共用部分の、店舗一部修繕積立金は店舗一部共用部分の、それぞれ次の各号に掲げる特別の管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことができる。」と定められています。
一 一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
二 不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
三 一部共用部分の変更
四 その他一部共用部分の管理に関し、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理
借入れ時の一部修繕積立金による償還(第31条3項)
標準管理規約(複合用途型)第31条3項では「管理組合は、前項各号の経費に充てるため借入れをしたときは、それぞれ住宅一部修繕積立金又は店舗一部修繕積立金をもってその償還に充てることができる。」と定められています。
【マンション標準管理規約(複合用途型)第30条及び第31条関係コメント】
① 対象物件の経済的価値を適正に維持するためには、一定期間ごとに行う計画的な維持修繕工事が重要であるので、全体修繕積立金、住宅一部修繕積立金及び店舗一部修繕積立金を必ず積み立てることとしたものである。
② 分譲会社が分譲時において将来の計画修繕に要する経費に充当していくため、一括して購入者より修繕積立基金として徴収している場合や、修繕時に、既存の全体修繕積立金、住宅一部修繕積立金又は店舗一部修繕積立金の額が修繕費用に不足すること等から、一時負担金が区分所有者から徴収される場合があるが、これらについても全体修繕積立金、住宅一部修繕積立金又は店舗一部修繕積立金として積み立てられ、区分経理されるべき
ものである。
③ 円滑化法に基づく建替組合によるマンション建替事業における建替えまでのプロセスの概要は、円滑化法の制定を踏まえ作成された「マンションの建替えに向けた合意形成に関するマニュアル」(平成15年1月国土交通省公表)によれば、次のとおりである。
A.建替え決議までのプロセス
(ア)準備段階:一部の区分所有者から建替えの発意がなされ、それに賛同する有志により、建替えを提起するための基礎的な検討が行われる段階であり、「管理組合として建替えの検討を行うことの合意を得ること」を目標とする。
(イ)検討段階:管理組合として、修繕・改修との比較等による建替えの必要性、建替えの構想について検討する段階であり、「管理組合として、建替えを必要として計画することの合意を得ること」を目標とする。
(ウ)計画段階:管理組合として、各区分所有者の合意形成を図りながら、建替えの計画を本格的に検討する段階であり、「建替え計画を策定するともに、それを前提とした建替え決議を得ること」を目標とする。
B.建替え決議後のプロセス
(ア)建替組合の設立段階:定款及び事業計画を定め、都道府県知事等の認可を受けて建替組合を設立する段階。
(イ)権利変換段階:権利変換計画を策定し、同計画に関し都道府県知事等の認可を受け、権利変換を行う段階。
(ウ)工事実施段階:建替え工事を施工し、工事完了時にマンション建替事業に係る清算を行う段階。
(エ)再入居と新管理組合の設立段階:新マンションに入居し、新マンションの管理組合が発足する段階。
④ ③のプロセスのうち、③のA(イ)及び(ウ)の段階においては、管理組合が建替えの検討のため、調査を実施する。調査の主な内容は、再建マンションの設計概要、マンションの取壊し及び再建マンションの建築に要する費用の概算額やその費用分担、再建マンションの区分所有権の帰属に関する事項等である。
⑤ ③のプロセスのうち、③のB(ア)の段階においても、全体修繕積立金を取り崩すことができる場合を定めたのが第2項である。
⑥ ③のプロセスによらず、円滑化法第45条のマンション建替事業の認可に基づく建替え、又は区分所有者の全員合意に基づく任意の建替えを推進する場合であっても、必要に応じて、第30条第1項及び第2項、又は第2項と同様の方法により、全体修繕積立金を取り崩すことは可能である。
ただし、任意の組織に関し、その設立時期について管理組合内で共通認識を得ておくことが必要である。
⑦ 円滑化法に基づくマンション敷地売却組合によるマンション敷地売却事業のプロセスの概要は、平成26年の円滑化法の改正を踏まえ作成された「耐震性不足のマンションに係るマンション敷地売却ガイドライン」を参考とされたい。この場合にも、建替えの場合と同様に、第30条第1項及び第3項に基づき、必要に応じて、全体修繕積立金を取り崩すことは可能である。
⑧ 建替え等に係る調査に必要な経費の支出は、各マンションの実態に応じて、管理費から支出する旨管理規約に規定することもできる。
区分経理(第32条)
標準管理規約(複合用途型)第32条では「管理組合は、次の各号に掲げる費用ごとにそれぞれ区分して経理しなければならない。」と定められています。
一 全体管理費
二 住宅一部管理費
三 店舗一部管理費
四 全体修繕積立金
五 住宅一部修繕積立金
六 店舗一部修繕積立金
使用料(第33条)
標準管理規約(複合用途型)第33条では「駐車場使用料その他の敷地及び共用部分等に係る使用料(以下「使用料」という。)は、それらの管理に要する費用に充てるほか、全体修繕積立金として積み立てる。」と定められています。
【マンション標準管理規約(複合用途型)第38条条関係コメント】
機械式駐車場を有する場合は、その維持及び修繕に多額の費用を要することから、管理費、全体修繕積立金、住宅一部修繕積立金及び店舗一部修繕積立金とは区分して経理することもできる。
総会の会議及び議事(第51条)
総会の定足数(第51条1項)
標準管理規約(複合用途型)第51条1項では「総会の 会議( WEB会議システム等を用い て開催する会議を含む。)は、前条第1項に定める議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない。」と定められています。
総会の議事の決議要件(第51条2項)
標準管理規約(複合用途型)第51条2項では「総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。」と定められています。
特別な事項に関する総会の議事の決議要件(第51条3項)
標準管理規約(複合用途型)第51条3項では「次の各号に掲げる事項に関する総会の議事は、前項にかかわらず、組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上で決する。」と定められています。
一 規約の制定、変更又は廃止
二 敷地及び共用部分等の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの及び建築物の耐震改修の促進に関する法律第25条第2項に基づく認定を受けた建物の耐震改修を除く。)
三 区分所有法第58条第1項、第59条第1項又は第60条第1項の訴えの提起
四 建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧
五 その他総会において本項の方法により決議することとした事項
建替え決議の決議要件(第51条4項)
標準管理規約(複合用途型)第51条4項では「建替え決議は、第2項にかかわらず、組合員総数の5分の4以上及び議決権総数の5分の4以上で行う。」と定められています。
マンション敷地売却決議の決議要件(第51条5項)
標準管理規約(複合用途型)第51条5項では「マンション敷地売却決議は、第2項にかかわらず、組合員総数、議決権総数及び敷地利用権の持分の価格の各5分の4以上で行う。」と定められています。
出席組合員(第51条6項)
標準管理規約第(複合用途型)51条6項では電磁的方法が利用可能ではない場合と可能な場合の2パターンの規定が存在します。
(第51条6項)
前5項の場合において、書面又は代理人によって議決権を行使する者は、出席組合員とみなす。
(第51条6項)
前5項の場合において、書面、電磁的方法又は代理人によって議決権を行使する者は、出席組合員とみなす。
一部の組合員の権利に特別の影響を及ぼすべきときの承諾(第51条7項)
標準管理規約(複合用途型)第51条7項では「第3項第一号において、規約の制定、変更又は廃止が一部の組合員の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。この場合において、その組合員は正当な理由がなければこれを拒否してはならない。」と定められています。
一部共用部分に関する規約の変更(第51条8項)
標準管理規約(複合用途型)第51条8項では「第3項第一号において、一部共用部分に関する事項で組合員全員の利害に関係しないものについての規約の変更は、当該一部共用部分を共用すべき組合員の4分の1を超える者又はその議決権の4分の1を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。」と定められています。
専有部分又は専用使用部分の使用に特別の影響を及ぼすべきの承諾(第51条9項)
標準管理規約(複合用途型)第51条9項では「第3項第二号において、敷地及び共用部分等の変更が、専有部分又は専用使用部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分を所有する組合員又はその専用使用部分の専用使用を認められている組合員の承諾を得なければならない。この場合において、その組合員は正当な理由がなければこれを拒否してはならない。」と定められています。
弁明する機会の付与(第51条10項)
標準管理規約(複合用途型)第51条10項では「第3項第三号に掲げる事項の決議を行うには、あらかじめ当該組合員又は占有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。」と定められています。
総会における決議事項(第51条11項)
標準管理規約(複合用途型)第51条11項では「総会においては、第47条第1項によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議することができる。」と定められています。」と定められています。
【マンション標準管理規約(複合用途型)第51条関係コメント】
① 第1項の定足数について、議決権を行使することができる組合員がWEB会議システム等を用いて出席した場合については、定足数の算出において出席組合員に含まれると考えられる。これに対して、議決権を行使することができない傍聴人としてWEB会議システム等を用いて議事を傍聴する組合員については、出席組合員には含まれないと考えられる。
② 第2項は、議長を含む出席組合員(書面(電磁的方法による議決権の行使が利用可能な場合は、電磁的方法を含む。)又は代理人によって議決権を行使する者を含む。)の議決権の過半数で決議し、過半数の賛成を得られなかった議事は否決とすることを意味するものである。
③ 特に慎重を期すべき事項を特別の決議によるものとした。あとの事項は、会議運営の一般原則である多数決によるものとした。
④ 区分所有法では、共用部分の変更に関し、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議(特別多数決議)で決することを原則としつつ、その形状又は効用の著しい変更を伴わない共用部分の変更については区分所有者及び議決権の各過半数によることとしている(なお、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、区分所有法第17条第2項(第18条第3項において準用する場合を含む。)の規定に留意が必要である。(第9項参照))。
建物の維持・保全に関して、区分所有者は協力してその実施に努めるべきであることを踏まえ、機動的な実施を可能とするこの区分所有法の規定を、標準管理規約上も確認的に規定したのが第51条第3項第二号である。
なお、建築物の耐震改修の促進に関する法律第25条の規定により、要耐震改修認定区分所有建築物の耐震改修については、区分所有法の特例として、敷地及び共用部分等の形状又は効用の著しい変更に該当する場合であっても、過半数の決議(普通決議)で実施可能となっている。
⑤ 第1項に基づき議決権総数の半数を有する組合員が出席する総会において、第2項に基づき出席組合員の議決権の過半数で決議(普通決議)される事項は、総組合員の議決権総数の4分の1超の賛成により決議されることに鑑み、例えば、大規模修繕工事のように多額の費用を要する事項については、組合員総数及び議決権総数の過半数で、又は議決権総数の過半数で決する旨規約に定めることもできる。
⑥ このような規定の下で、各工事に必要な総会の決議に関しては、例えば次のように考えられる。ただし、基本的には各工事の具体的内容に基づく個別の判断によることとなる。
ア)バリアフリー化の工事に関し、建物の基本的構造部分を取り壊す等の加工を伴わずに階段にスロープを併設し、手すりを追加する工事は普通決議により、階段室部分を改造したり、建物の外壁に新たに外付けしたりして、エレベーターを新たに設置する工事は特別多数決議により実施可能と考えられる。
イ)耐震改修工事に関し、柱やはりに炭素繊維シートや鉄板を巻き付けて補修する工事や、構造躯体に壁や筋かいなどの耐震部材を設置する工事で基本的構造部分への加工が小さいものは普通決議により実施可能と考えられる。
ウ)防犯化工事に関し、オートロック設備を設置する際、配線を、空き管路内に通したり、建物の外周に敷設したりするなど共用部分の加工の程度が小さい場合の工事や、防犯カメラ、防犯灯の設置工事は普通決議により、実施可能と考えられる。
エ)IT化工事に関し、光ファイバー・ケーブルの敷設工事を実施する場合、その工事が既存のパイプスペースを利用するなど共用部分の形状に変更を加えることなく実施できる場合や、新たに光ファイバー・ケーブルを通すために、外壁、耐力壁等に工事を加え、その形状を変更するような場合でも、建物の躯体部分に相当程度の加工を要するものではなく、外観を見苦しくない状態に復元するのであれば、普通決議により実施可能と考えられる。
オ)計画修繕工事に関し、鉄部塗装工事、外壁補修工事、屋上等防水工事、給水管更生・更新工事、照明設備、共聴設備、消防用設備、エレベーター設備の更新工事は普通決議で実施可能と考えられる。
カ)その他、集会室、駐車場、駐輪場の増改築工事などで、大規模なものや著しい加工を伴うものは特別多数決議により、窓枠、窓ガラス、玄関扉等の一斉交換工事、既に不要となったダストボックスや高置水槽等の撤去工事は普通決議により、実施可能と考えられる。
⑦ 建替え決議及びマンション敷地売却決議の賛否は、売渡し請求の相手方になるかならないかに関係することから、賛成者、反対者が明確にわかるよう決議することが必要である。なお、第4項及び第5項の決議要件については、法定の要件を確認的に規定したものである。
住宅部会及び店舗部会(第60条)
住宅部会び店舗部分の設置(第60条1項)
標準管理規約(複合用途型)第60条1項では「管理組合に、住戸部分の区分所有者で構成する住宅部会及び店舗部分の区分所有者で構成する店舗部会を置く。」と定められています。
部会運営細則(第60条2項)
標準管理規約(複合用途型)第60条2項では「住宅部会及び店舗部会の組織及び運営については、別に部会運営細則に定めるものとする。」と定められています。
【マンション標準管理規約(複合用途型)第60条関係コメント】
① 住宅部会及び店舗部会は管理組合としての意思を決定する機関ではないが、それぞれ住宅部分、店舗部分の一部共用部分の管理等について協議する組織として位置づけるものである。
② 住宅、店舗おのおのから選出された管理組合の役員が、各部会の役員を兼ねるようにし、各部会の意見が理事会に反映されるような仕組みが、有効であると考えられる。
まとめ
本記事の標準管理規約(複合用途型)について理解頂けたでしょうか。
都会では住居だけではなく1階などに店舗が入っているようなマンションを多くみかけます。
しかし、管理組合における管理費や修繕積立金の住宅部会及び店舗部会の区分についてよく理解していない組合員の方も多いのではないでしょうか。
よく理解していないと共用部分の管理方法などで居住者と店舗とでトラブルの元にもなってしまいます。
自身の管理組合の管理規約や使用細則を確認して内容を把握し、適切にマンションを管理できるよう努めて下さい。
本記事も読んでいただきどうもありがとうございました。