マンション管理適正化法

マンション管理適正化法(管理業務主任者)

日本国内の分譲マンションストック数は2022年末現在で約694万3千戸で、居住人口は約1,500万人と国土交通省より発表されています。

また、築40年以上のストック戸数は125万7千戸で10年後には約2倍以上に膨れ上がる見込みです。

このように日本国内においてマンションの戸数と居住する人々が増え、マンションの適切な管理・維持の重要性が増大しています。

しかし、2000年以前は分譲マンション(区分所有マンション)における区分所有者の管理意識は低く管理組合での管理活動も消極的でした。

また、マンション管理は専門性も高いため、管理組合から建物管理を委託する管理会社に依存し、任せっ放しにしてしまうような管理組合がまだまだ多いのが現実です。

これらのことを鑑みて、マンションにおける良好な居住環境の確保を図り、マンションの管理の適正化の推進を図ることなどを目的として2001年8月1日に「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(略称:マンション管理適正化法)」が施行されました。

この法律が施行されたことに付随して、管理組合が管理を委託する管理会社以外に管理について相談する際の専門家として『マンション管理士』という国家資格も創設しました。

前述したとおり、マンション管理適正化法は施行から20年以上経過しており、より実態に即した的確な定めにするために改正を繰り返しながら現在に至っています。

そしてこの記事では、マンション管理適正化法における「管理業務主任者」について知ることができます。

目次

管理業務主任者の設置(第五十六条)

管理業務主任者設置の義務(第五十六条1項)

マンション管理適正化法第五十六条1項では「マンション管理業者は、その事務所ごとに、事務所の規模を考慮して国⼟交通省令で定める数の成年者である専任の管理業務主任者を置かなければならない。ただし、⼈の居住の⽤に供する独⽴部分(区分所有法第⼀条に規定する建物の部分をいう。以下同じ。)が国⼟交通省令で定める数以上である第⼆条第⼀号イに掲げる建物の区分所有者を構成員に含む管理組合から委託を受けて⾏う管理事務を、その業務としない事務所については、この限りでない。」と定められています。

【国⼟交通省令の定め(2024年3月時点)】
事務所ごとに、事務所の規模を考慮して管理事務の委託を受けた管理組合30組合につき1名以上(30組合未満は最低1名)の成年者である専任の管理業務主任者(管理業務主任者証の交付を受けた方)をおくこと。
但し、人の居住の用に供する独立部分が5以下である法第2条第1号イに掲げる建物の区分所有者を構成員に含む管理組合から委託を受けて行う管理事務を、その業務とする事務所については、専任の管理業務主任者を置く必要はありません。
(「専任」とは、マンション管理業を営む事務所に常勤して、専らマンション管理業に従事する状態をいいます。このため、宅建業の専任の取引主任者と兼任することはできません。)

みなし専任管理業務主任者(第五十六条2項)

マンション管理適正化法第五十六条2項では「前項の場合において、マンション管理業者(法⼈である場合においては、その役員)が管理業務主任者であるときは、その者が⾃ら主として業務に従事する事務所については、その者は、その事務所に置かれる成年者である専任の管理業務主任者とみなす。」と定められています。

規定の適合措置義務(第五十六条3項)

マンション管理適正化法第五十六条3項では「マンション管理業者は、第⼀項の規定に抵触する事務所を開設してはならず、既存の事務所が同項の規定に抵触するに⾄ったときは、⼆週間以内に、同項の規定に適合させるため必要な措置をとらなければならない。」と定められています。

試験(第五十七条)

試験の内容(第五十七条1項)

マンション管理適正化法第五十七条1項では「管理業務主任者試験(以下この節において「試験」という。)は、管理業務主任者として必要な知識について⾏う。」と定められています。

昨今の管理業務主任者の試験は毎年1回12月最初の日曜日に実施されています。
(令和5年度の管理業務主任者試験実施日:2023年12月3日(日))

試験の準用規定(第五十七条2項)

マンション管理適正化法第五十七条2項では「第七条第⼆項及び第⼋条から第⼗条までの規定は、試験について準⽤する。」と定められています。

試験(第五十八条)

試験事務の実施者(第五十八条1項)

マンション管理適正化法第五十八条1項では「国⼟交通⼤⾂は、国⼟交通省令で定めるところにより、その指定する者(以下この節において「指定試験機関」という。)に、試験の実施に関する事務(以下この節において「試験事務」という。)を⾏わせることができる。」と定められています。

2024年2月現在では、「一般社団法人マンション管理業協会」にて試験事務が実施されています。

試験事務の申請(第五十八条2項)

マンション管理適正化法第五十八条2項では「指定試験機関の指定は、国⼟交通省令で定めるところにより、試験事務を⾏おうとする者の申請により⾏う。」と定められています。

試験実施者に関する規定の準用(第五十八条3項)

マンション管理適正化法第五十八条3項では「第⼗⼀条第三項及び第四項並びに第⼗⼆条から第⼆⼗⼋条までの規定は、指定試験機関について準⽤する。この場合において、第⼗⼀条第三項中「前項」とあり、及び同条第四項各号列記以外の部分中「第⼆項」とあるのは「第五⼗⼋条第⼆項」と、第⼗六条第⼀項中「マンション管理⼠として」とあるのは「管理業務主任者として」と、「マンション管理⼠試験委員」とあるのは「管理業務主任者試験委員」と、第⼆⼗四条第⼆項第七号、第⼆⼗五条第⼀項及び第⼆⼗⼋条第⼀号中「第⼗⼀条第⼀項」とあるのは「第五⼗⼋条第⼀項」と読み替えるものとする。」と定められています。

試験(第五十九条)

国⼟交通⼤⾂の登録(第五十九条1項)

マンション管理適正化法第五十九条1項では「試験に合格した者で、管理事務に関し国⼟交通省令で定める期間以上の実務の経験を有するもの⼜は国⼟交通⼤⾂がその実務の経験を有するものと同等以上の能⼒を有すると認めたものは、国⼟交通⼤⾂の登録を受けることができる。ただし、次の各号のいずれかに該当する者については、この限りでない。」と定められています。

管理適正化法五十九条1項一~七

⼀ 破産⼿続開始の決定を受けて復権を得ない者

⼆ 禁錮以上の刑に処せられ、その執⾏を終わり、⼜は執⾏を受けることがなくなった⽇から⼆年を経過しない者

三 この法律の規定により罰⾦の刑に処せられ、その執⾏を終わり、⼜は執⾏を受けることがなくなった⽇から⼆年を経過しない者

四 第三⼗三条第⼀項第⼆号⼜は第⼆項の規定によりマンション管理⼠の登録を取り消され、その取消しの⽇から⼆年を経過しない者

五 第六⼗五条第⼀項第⼆号から第四号まで⼜は同条第⼆項第⼆号若しくは第三号のいずれかに該当することにより登録を取り消され、その取消しの⽇から⼆年を経過しない者

六 第⼋⼗三条第⼆号⼜は第三号に該当することによりマンション管理業者の登録を取り消され、その取消しの⽇から⼆年を経過しない者(当該登録を取り消された者が法⼈である場合においては、当該取消しの⽇前三⼗⽇以内にその法
⼈の役員であった者で当該取消しの⽇から⼆年を経過しないもの)

七 ⼼⾝の故障により管理業務主任者の事務を適正に⾏うことができない者として国⼟交通省令で定めるもの

管理業務主任者の登録には登録申請時までに実務経験が2年以上必要となります。
実務経験が2年に満たない方は、国土交通大臣の登録を受けた者が行う登録実務講習を受講し、修了試験に合格することにより、2年以上の実務経験を有するものと同等以上の能力を有するものと認められます。

【登録実務講習】
実施機関:一般社団法人マンション管理業協会
受講料:23,100円(税込)
※2023年度登録実務講習の実績

管理業務主任者登録簿への登載(第五十九条2項)

マンション管理適正化法第五十九条2項では「前項の登録は、国⼟交通⼤⾂が、管理業務主任者登録簿に、⽒名、⽣年⽉⽇その他国⼟交通省令で定める事項を登載してするものとする。」と定められています。

管理業務主任者証の交付等(第六十条)

管理業務主任者証の交付申請(第六十条1項)

マンション管理適正化法第六十条1項では「前条第⼀項の登録を受けている者は、国⼟交通⼤⾂に対し、⽒名、⽣年⽉⽇その他国⼟交通省令で定める事項を記載した管理業務主任者証の交付を申請することができる。」と定められています。

管理業務主任者証の交付手数料:2,300円
※2024年3月時点

講習(第六十条2項)

マンション管理適正化法第六十条2項では「管理業務主任者証の交付を受けようとする者は、第六⼗⼀条の⼆において準⽤する第四⼗⼀条の⼆から第四⼗⼀条の四までの規定により国⼟交通⼤⾂の登録を受けた者(以下この節において「登録講習機関」という。)が国⼟交通省令で定めるところにより⾏う講習(以下この節において「講習」という。)で交付の申請の⽇前六⽉以内に⾏われるものを受けなければならない。ただし、試験に合格した⽇から⼀年以内に管理業務主任者証の交付を受けようとする者については、この限りでない。」と定められています。

管理業務主任者の登録講習費用:9,680円(税込)
※2024年3月時点

管理業務主任者証の有効期間(第六十条3項)

マンション管理適正化法第六十条3項では「管理業務主任者証の有効期間は、五年とする。」と定められています。

管理業務主任者証の返納(第六十条4項)

マンション管理適正化法第六十条4項では「管理業務主任者は、前条第⼀項の登録が消除されたとき、⼜は管理業務主任者証がその効⼒を失ったときは、速やかに、管理業務主任者証を国⼟交通⼤⾂に返納しなければならない。」と定められています。

禁止処分による管理業務主任者証の提出(第六十条5項)

マンション管理適正化法第六十条5項では「管理業務主任者は、第六⼗四条第⼆項の規定による禁⽌の処分を受けたときは、速やかに、管理業務主任者証を国⼟交通⼤⾂に提出しなければならない。」と定められています。

管理業務主任者証の返還請求(第六十条6項)

マンション管理適正化法第六十条6項では「国⼟交通⼤⾂は、前項の禁⽌の期間が満了した場合において、同項の規定により管理業務主任者証を提出した者から返還の請求があったときは、直ちに、当該管理業務主任者証を返還しなければならない。」と定められています。

管理業務主任者証の有効期間の更新(第六十一条)

管理業務主任者証更新の申請(第六十一条1項)

マンション管理適正化法第六十一条1項では「管理業務主任者証の有効期間は、申請により更新する。」と定められています。

有効期間更新規定の準用(第六十一条2項)

マンション管理適正化法第六十一条2項では「前条第⼆項本⽂の規定は管理業務主任者証の有効期間の更新を受けようとする者について、同条第三項の規定は更新後の管理業務主任者証の有効期間について準用する。」と定められています。

準⽤規定(第六十一条の二)

マンション管理適正化法第六十一条の二では「第四⼗⼀条の⼆から第四⼗⼀条の⼗⼋までの規定は、登録講習機関について準⽤する。この場合において、第四⼗⼀条の⼆中「前条」とあるのは「第六⼗条第⼆項本⽂(前条第⼆項において準⽤する場合を含む。以下同じ。)」と、第四⼗⼀条の三、第四⼗⼀条の五第⼀項、第四⼗⼀条の⼗三第五号、第四⼗⼀条の⼗五第⼀項並びに第四⼗⼀条の⼗⼋第⼀号及び第四号中「第四⼗⼀条の登録」とあるのは「第六⼗条第⼆項本⽂の登録」と、第四⼗⼀条の四中「別表第⼀」とあるのは「別表第⼆」と、第四⼗⼀条の⼗第⼆項中「マンション管理⼠」とあるのは「管理業務主任者」と読み替えるものとする。」と定められています。

登録事項の変更の届出等(第六十二条)

登録事項変更の届出義務(第六十二条1項)

マンション管理適正化法第六十二条1項では「第五⼗九条第⼀項の登録を受けた者は、登録を受けた事項に変更があったときは、遅滞なく、その旨を国⼟交通⼤⾂に届け出なければならない。」と定められています。

登録事項変更届出時の管理業務主任者証の提出(第六十二条2項)

マンション管理適正化法第六十二条2項では「管理業務主任者は、前項の規定による届出をする場合において、管理業務主任者証の記載事項に変更があったときは、当該届出に管理業務主任者証を添えて提出し、その訂正を受けなければならない。」と定められています。

管理業務主任者証の提⽰(第六十三条)

マンション管理適正化法第六十三条では「管理業務主任者は、その事務を⾏うに際し、マンションの区分所有者等その他の関係者から請求があったときは、管理業務主任者証を提⽰しなければならない。」と定められています。

指⽰及び事務の禁⽌(第六十四条)

国⼟交通⼤⾂による指示(第六十四条1項)

マンション管理適正化法第六十四条1項では「国⼟交通⼤⾂は、管理業務主任者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該管理業務主任者に対し、必要な指⽰をすることができる。」と定められています。

管理適正化法六十四条1項一~三

⼀ マンション管理業者に⾃⼰が専任の管理業務主任者として従事している事務所以外の事務所の専任の管理業務主任者である旨の表⽰をすることを許し、当該マンション管理業者がその旨の表⽰をしたとき。

⼆ 他⼈に⾃⼰の名義の使⽤を許し、当該他⼈がその名義を使⽤して管理業務主任者である旨の表⽰をしたとき。

三 管理業務主任者として⾏う事務に関し、不正⼜は著しく不当な⾏為をしたとき。

国⼟交通⼤⾂による事務の禁⽌措置(第六十四条2項)

マンション管理適正化法第六十四条2項では「国⼟交通⼤⾂は、管理業務主任者が前項各号のいずれかに該当するとき、⼜は同項の規定による指⽰に従わないときは、当該管理業務主任者に対し、⼀年以内の期間を定めて、管理業務主任者としてすべき事務を⾏うことを禁⽌することができる。」と定められています。

登録の取消し(第六十五条)

管理業務主任者の登録取り消し事項(第六十五条1項)

マンション管理適正化法第六十五条1項では「国⼟交通⼤⾂は、管理業務主任者が次の各号のいずれかに該当するときは、その登録を取り消さなければならない。」と定められています。

管理適正化法六十五条1項一~四

⼀ 第五⼗九条第⼀項各号(第五号を除く。)のいずれかに該当するに⾄ったとき。

⼆ 偽りその他不正の⼿段により登録を受けたとき。

三 偽りその他不正の⼿段により管理業務主任者証の交付を受けたとき。

四 前条第⼀項各号のいずれかに該当し情状が特に重いとき、⼜は同条第⼆項の規定による事務の禁⽌の処分に違反したとき。

管理業務主任者証未交付者の登録取り消し事項(第六十五条2項)

マンション管理適正化法第六十五条2項では「国⼟交通⼤⾂は、第五⼗九条第⼀項の登録を受けている者で管理業務主任者証の交付を受けていないものが次の各号のいずれかに該当するときは、その登録を取り消さなければならない。」と定められています。

管理適正化法六十五条2項一~三

⼀ 第五⼗九条第⼀項各号(第五号を除く。)のいずれかに該当するに⾄ったとき。

⼆ 偽りその他不正の⼿段により登録を受けたとき。

三 管理業務主任者としてすべき事務を⾏った場合(第七⼗⼋条の規定により事務所を代表する者⼜はこれに準ずる地位にある者として⾏った場合を除く。)であって、情状が特に重いとき。

登録の消除(第六十六条)

マンション管理適正化法第六十六条では「国⼟交通⼤⾂は、第五⼗九条第⼀項の登録がその効⼒を失ったときは、その登録を消除しなければならない。」と定められています。

報告(第六十七条)

マンション管理適正化法第六十七条では「国⼟交通⼤⾂は、管理業務主任者の事務の適正な遂⾏を確保するため必要があると認めるときは、その必要な限度で、管理業務主任者に対し、報告をさせることができる。」と定められています。

⼿数料(第六十八条)

マンション管理適正化法第六十八条では「第五⼗九条第⼀項の登録を受けようとする者及び管理業務主任者証の交付、有効期間の更新、再交付⼜は訂正を受けようとする者は、実費を勘案して政令で定める額の⼿数料を国に納付しなければならない。」と定められています。

管理業務主任者の登録手数料:4,250円
※2024年3月時点

国⼟交通省令への委任(第六十九条)

マンション管理適正化法第六十九条では「この節に定めるもののほか、試験、指定試験機関、管理業務主任者の登録、講習、登録講習機関その他この節の規定の施⾏に関し必要な事項は、国⼟交通省令で定める。」と定められています。

まとめ

本記事の管理業務主任者はいかがでしたでしょうか。

管理業務主任者の資格は、マンション管理業者にとって必要不可欠な資格であることがご理解頂けたのではないかと思います。

しかし、管理業務主任者試験はマンション管理士試験ほど合格率は低くはありませんが、難関資格といっても過言ではない難しい試験です。

そのため試験に合格するためにはそれ相応の試験対策をして臨むことが要求されます。

また、管理業務主任者の試験勉強で学ぶことは、管理組合活動にとっても非常に有益なことを多く学ぶことができるため、管理業者で働く人だけではなく、分譲マンションを購入して管理組合員となる方達にも試験勉強をすることだけでもお勧めです。

最後に、過去10年間の管理業務主任者の合格率を記載しますので、ご参考にして頂き、ぜひ資格取得にチャレンジしてみて下さい。

本記事も読んでいただきどうもありがとうございました。

過去の管理業務主任者試験合格率

2014年度 21.9%
2015年度 18.9% 
2016年度 19.4%
2017年度 23.9%
2018年度 23.2%
2019年度 21.7%
2020年度 21.7%
2021年度 22.5%
2022年度 23.8%
2023年度 21.0%

過去10年間平均合格率 :21.8%

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