管理組合の役員報酬、いくらが妥当?担い手不足を防ぐ設計ポイント
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現在、多くの分譲マンションが抱える深刻な悩みの一つが、「管理組合役員の担い手不足」です。
役員が不在、あるいは形骸化してしまったマンションでは、適切な管理・修繕が行われず、最終的には資産価値の下落や住環境の悪化を招きます。
本記事では、この問題を解消し、積極的な理事会活動を促すための切り札となる「役員報酬の導入」について解説します。
目 次
Toggle役員が不足する3つの構造的要因
なぜ、役員のなり手が見つからないのでしょうか。そこには現代のマンションが抱える3つの大きな要因があります。
① 組合員の高齢化
築年数が経過したマンションほど、居住者の高齢化が進みます。輪番制で順番が回ってきても、身体的な理由や健康上の不安から活動が困難なケースが少なくありません。
結果として就任を拒否せざるを得なかったり、引き受けても「名ばかり役員」となってしまったりする悪循環が生まれています。
② 管理への無関心と「外部居住オーナー」の増加
誰かがやってくれるだろう」という他人任せの意識に加え、より深刻なのが「非居住オーナー(賃貸運用)」の増加です。
【投資目的のオーナー】
自身の利回りを優先し、管理への労力投入を嫌う傾向があります。
【海外投資家】
連絡自体が困難で、総会の議決権行使すらままならないケースが増えています。
これらは担い手不足だけでなく、合意形成そのものを阻害する大きな要因となっています。
③ 本業との両立が困難(ボランティア性の限界)
昨今の人手不足の影響で、現役世代の組合員は本業で多忙を極めています。
マンション管理は専門知識を要する重労働でありながら、実態は「無報酬のボランティア」であることがほとんどです。
「働いた分だけ対価が得られる本業」を優先するのは、生活者として当然の判断といえるでしょう。
解決策としての「役員報酬」の導入
ボランティア精神に頼る管理体制が限界を迎えている今、活動実績に応じた役員報酬の支給は非常に有効な対策です。
・「報酬があるならやってみよう」という有志を募りやすくなる。
・ 就任依頼の際、心理的なハードルを下げ、合意を得やすくなる。
・「報酬を得ている」という責任感が、積極的な参加を促す。
役員報酬を支給するには、根拠となるルール作りが必要です。
【STEP1:管理規約の確認・改定】
国土交通省の「標準管理規約(2025年10月改訂版)」第37条第2項でも、役員報酬の支給は規定されています。
まずは自マンションの規約を確認しましょう。
【STEP2:細則の制定】
支給額、支給条件(理事会への出席回数など)、上限額などを定めた「役員報酬支給細則」を作成します。
【STEP3:総会での承認】
細則の制定および毎期の予算計上について総会合意形成をとります。
役員報酬はいくらが妥当か?
役員報酬の支給を本格的に導入する際、「いくらに設定すべきか」で悩む管理組合は少なくありません。
国土交通省の公表データとしては、やや古いものの、次のような参考値があります。
マンション総合調査結果における役員報酬に対する結果(平成30年度マンション総合調査より)
1.役員報酬支払い状況
支払なし:73.3%
全員に支払っている:23.1%
2.役員報酬の支払い金額
①各役員一律支給の場合:3,900円/月
②各役員一律支給でない場合
・理事長:約9,500円/月
・理事 :約3,900円/月
・監事 :約3,200円/月
ここで注意すべきなのは、上記の数値がそのまま「適切な金額の目安」になるわけではない、という点です。
役員に就任し、積極的に活動してもらうには、活動負担や責任に見合った、納得感のある報酬額を設定することが重要です。
その金額は一律ではなく、管理組合ごとの実情によって異なります。
たとえば、年間数千円の支給でも立候補者が十分に集まる管理組合であれば、その水準は実態に合っているといえます。
一方で、年間数万円を設定しても担い手が集まらない場合には、報酬額の水準が実態に対してなお不十分である可能性もあります。
もっとも、報酬額を引き上げる場合は管理組合の財務に影響するため、管理費会計とのバランスを踏まえた慎重な判断が必要です。
場合によっては、管理費改定の検討が必要になることもあります。
このように、適切な役員報酬額は「固定値」ではなく、各管理組合の実態に即して設定すべきものです。
また、一度決めた金額を固定化するのではなく、担い手の状況や活動実態を踏まえて定期的に見直していくことが求められます。
報酬が「精神的な盾」となり、モチベーションを維持する
理事会活動を積極的に行うほど、住民からの苦情や反対意見にさらされる機会も増えます。
ルール違反の是正など、マンションのために動いている役員が、無報酬のなかで精神的に疲弊してしまうケースは後を絶ちません。
「正当な対価(報酬)」があることは、こうした精神的な負担に対する一定のケアとなり、役員のモチベーションを維持する重要な要素となります。
「過去に例がないから」と否定するのではなく、今の時代に合わせた仕組みのアップデートが必要です。
「外部管理者方式」という選択肢の検討
もし相当な報酬を支給しても、なお担い手が不足する場合や、高度に専門的な判断が必要な場合は、マンション管理士などの専門家に役員(管理者)を委託する「外部管理者方式」も有力な選択肢です。
昨今の新築マンションでは、「管理業者管理者方式」と呼ばれる、管理業者が管理組合の管理者に就任する方式を当初から採用するケースも増えています。
委託費用が発生することや利益相反の可能性が高まるなどのデメリットもありますが、組合員の負担を大幅に軽減しながらプロの品質で管理を維持できる可能性が高まるメリットがあります。
まとめ:資産価値を守るための「投資」と考えよう
本記事のポイントを整理します。
まず、管理組合役員の担い手不足は、組合員の高齢化、管理への無関心、本業との両立困難といった複合要因によって生じています。
従来の「無報酬・ボランティア前提」の運営だけでは、安定した管理体制を維持しにくい時代になっています。
こうした状況への対策として、役員報酬の導入・見直しは有効です。
報酬は、就任時の心理的ハードルを下げるだけでなく、活動を継続するうえでの責任感やモチベーションの維持にもつながります。
また、役員報酬の妥当な金額に一律の正解はありません。
国の調査値は参考になりますが、そのまま当てはめるのではなく、各管理組合の財務状況、役員の業務負担、担い手の確保状況を踏まえて、実態に合った水準を設定することが重要です。
さらに、一度決めた金額を固定化せず、毎年の運用実績に応じて見直していく視点が欠かせません。
制度を導入する際は、管理規約上の根拠、細則での支給基準の明確化、総会での予算承認という手順を踏み、透明性の高い運用を行うことが大切です。
それでも担い手不足が解消しない場合には、外部専門家の活用(外部管理者方式)も含めて、管理体制そのものを再設計することが現実的な選択肢になります。
マンション管理は、暮らしの質と資産価値を守るための継続的な経営です。
役員報酬を単なるコストとしてではなく、将来の管理水準を維持するための必要な投資として、前向きに検討していきましょう。
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