分譲マンションでは、一棟のマンションの住戸(部屋)を区分けして販売します。
このように住戸を区分して所有する際の、各区分所有者の権利やマンション全体の管理方法などを定めた法律を区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)と呼びます。
この記事では、区分所有法における共用部分についての理解を深めることができます。
共用部分の種類(第2条4項/第4条)
共用部分とは、廊下、階段、エレベーター、管理事務室など区分所有者などが共同して使用する部分のことです。
大きくは「法定共用部分」と「規約共用部分」に分かれます。
この2つの違いについて次のようにまとめてみます。
・廊下やエントランス及びエレベーターなど、本来的に共用部分であるもの
・登記はできない
・管理事務室や集会室または別棟にある集会所など本来的には共用部分ではなく専有部分としてなり得る部分で、規約によって共用部分となるもの
・登記できる(登記をしなければ第三者に対抗できない)
また、区分所有者など全員に供されている共用部分であるか否かで「全体共用部分」と「一部共用部分」にも分かれます。
これは実際に共同で使用されているかどうかではなく、共同で使用できる状態にあるかどうかで、「全体共用部分」か「一部共用部分」が決まります。
この2つの違いについても次のようにまとめてみます。
・構造上、区分所有者全体で共用することができる部分(実際に全員で使用されているかどうかではない)
例:廊下、エントランス、階段、エレベーターなど
・構造上、一部の区分所有者のために存在する共用部分
例:居住者または店舗専用のエントランス、トイレ、エレベーターなど
共用部分の持分の割合(第14条)
各区分所有者の共用部分の持分の割合は、「専有部分の床面積の割合(広さ)」によると区分所有法で定められています。
この面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積(真上から光をあてた時に影になる部分の面積)で算定します。
しかし、共用部分の持分は、規約で別段の定めをすることができるとされており、各区分所有者の持分割合を均等にしたり、内側線ではなく中心線で算定したりすることも可能です。
また、付属の建物(集会所や倉庫など)を除く床面積を有する一部共用部分がある場合は、その共用部分を共用する各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、それぞれの区分所有者の専有部分の床面積に算入することになります。
共用部分の用法(第13条)
共用部分の各区分所有者の使用方法は、区分所有法では用法に従って使用することができるとされています。
法定共用部分であれば共用部分の構造や位置などにより、規約共用部分であれば管理規約や使用細則によって定められた用法に従って使用することとなります。
これは、共用部分の持分割合によって回数や時間など制約されるのは合理的ではないと考えられているためです。
例えば、共用部分の持分割合によってエレベーターなどの使用回数や時間が制限されるのは適切ではないというようなことです。
共用部分の持分の処分(第15条)
共用部分の持分は、その有する専有部分の処分に従うこととなります。
これが共用部分の持分の従属性と呼ばれ、専有部分である住戸を売却すると共用部分の共有持分も一緒に売却されるというものです。
これは、専有部分である住戸などを所有していても、廊下やエントランスなどを使えなければ全く意味がなく合理的ではないため、専有部分と共用部分の共有持分とを一体化させているのです。
そして、共用部分の共有者は、原則として自己の専有部分と分離して共用部分の持分のみを処分することができません。
これを「分離処分禁止の原則」と呼びます。
しかし、区分所有法では、次にあげる2つの別段の定めがある場合は、分離処分の例外とされています。
① 規約によって他の区分所有者または管理者を共用部分の所有者とする場合(管理所有)
② 規約で共用部分の持分割合を変更する場合
一部共用部分の管理(第16条)
一部の区分所有者のみに属する一部共用部分の管理は、原則として一部共用部分を共有する区分所有者のみで行います。
しかし、区分所有者全員で管理を行わなければいけない例外が2つあります。
その例外については、次のとおりです。
次の1)2)の一部共用部分は区分所有者全員で管理することとなります。
1)区分所有者全員の利害に関係するもの
2)区分所有者全員で一部共用部分の管理を行う旨の全体の規約の定めがあるもの
※全体の規約の定めに対して、一部共用部分を共用すべき区分所有者の1/4を超える者、又はその議決権の1/4を超える議決権を有する者が反対した場合は、規約を定めることができません。
共用部分の保存・管理・変更(第17条/第18条)
区分所有法では、共用部分の管理に関する行為を「保存行為」、「管理行為」、「変更行為」の3つに分類しています。
それぞれの行為の詳しい説明を次の通りにまとめてみます。
保存行為とは、共用部分の点検や破損した部分の小さい修繕など、比較的軽度のものか、緊急性を要する維持行為のことです。
保存行為は、各区分所有者が単独で行うことができますが、特定の区分所有者のみが行えるなど規約で別段の定めをすることもできます。
管理行為とは、保存行為と変更行為を除いた行為(狭義の管理行為)のことです。
例えば、共用部分の使用方法を定める行為や、共用部分の火災保険などの損害保険契約を締結することなどがあげられます。
管理行為を行うためには、原則として集会の普通決議(区分所有者および議決権の各過半数の賛成)が必要ですが、理事長が決定するなど規約で別段の定めをすることもできます。
変更行為とは、共用部分に変更を加える行為のことです。
また、変更行為は「軽微変更」と「重大変更」の2種類に分類されます。
①軽微変更
・共用部分の形状または効用の著しい変更を伴わないもの
・集会の普通決議が必要
②重大変更
・共用部分の形状または効用の著しい変更を伴うもの
・集会の特別決議(区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による集会の決議)が必要
※区分所有者の定数のみ規約で過半数まで減ずることができます
共用部分の保存行為、管理行為、変更行為について理解できたでしょうか。
ここで1点だけ管理行為および変更行為の注意点をお伝えします。
共用部分の管理行為および変更行為が専有部分の使用に特別な影響(受忍限度を超える影響)を及ぼす時には、その専有部分の区分所有者の承諾を得なければいけません。(占有者の承諾は不要)
このことをおさえておいて下さい。
共用部分の負担及び利益収取(第19条)
共用部分の各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分に任じ、共用分から生ずる利益を収取するとされています。
負担としては、「固定資産税」、「都市計画税」、「下水道負担金」などの公租公課や管理のための費用があげられます。
利益としては、共用部分の一部を賃貸した場合などの賃貸料などがあげられるでしょう。
原則として負担も利益も共用部分の持分割合によりますが、規約による別段の定めをすることもできます。
管理所有(第20条)
原則として、全体共用部分は区分所有者全員の共有に属します。
また、一部共用部分は共同で使用している一部の区分所有者の共有に属することになります。
しかし、例外があり、規約で別段の定めをすることにより特定の者(管理者または区分所有者に限る)が共用部分の所有者となる「管理所有」をすることが認められています。
管理所有にすることのメリットは、管理所有者が共用部分の一定の管理を行えるため、集会決議なしで共用部分の管理を迅速に実施できることなどがあげられます。
管理所有による管理の対象は共用部分(規約共用部分を含む)に限定され、規約共用部分ではない付属施設及び専有部分や敷地は管理所有の対象とはなりません。
また、管理所有にすることによって全体共用部分が一部共用部分に変わるわけではありません。
各区分所有者の共用部分の持分を管理所有者に形式的に譲渡するに過ぎず、登記をすることもできません。
管理所有することは、規約に定めることで公示されることとなります。
したがって、各区分所有者の区分所有権に係る共有持分に変動は生じません。
次に、管理所有の権限(権利や義務など)についてまとめましたのでご参照下さい。
管理所有者は、区分所有者全員(一部共用部分については、これを共用すべき区分所有者)のためにその共用部分を管理する義務を負います。
また、その管理を実施する場合には、それらの区分所有者に対して相当な管理費用を請求することが認められています。
♦管理所有者の権限(集会決議なしで実施可能なこと)
・共用部分の保存行為:〇
・共用部分の管理行為(狭義の管理行為):〇
・共用部分の軽微変更:〇
・共用部分の重大変更:×
共用部分に関する規定の準用(第21条)
共用部分に関する規定は、原則として共用部分以外のものには適用されません。
しかし、建物の敷地や共用部分以外の付属施設(これらに関する権利を含む)が区分所有者の共有に属する場合には、次の第17条~19条までの規定は、その敷地又は付属施設に準用されることになります。
第17条:共用部分の変更
第18条:共用部分の管理
第19条:共用部分の負担及び利益収取
まとめ
区分所有法における共用部分について理解できたでしょうか?
とても難しいことも多く、すぐには理解できないかもしれませんが、興味のある方は少しづつ理解を深めていただければと思います。
本記事も読んでいただきどうもありがとうございました。