区分所有法

区分所有法(敷地利用権について)

分譲マンションでは、一棟のマンションの複数の住戸(部屋)を区分けして販売します。

このように住戸を区分して所有する際の、各区分所有者の権利やマンション全体の管理方法などを定めた法律を区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)と呼びます。

この記事では、区分所有法における敷地利用権について知ることができます。

法定敷地と規約敷地

当然のことですが、戸建て、マンション問わず建物は土地の上に建てられます。

そして区分所有マンションでは、住戸など専有部分を所有するために土地を利用する権利「敷地利用権」というものが必要となります。

分譲マンションなどの建物の敷地は区分所有法上、「法定敷地」と「規約敷地」の2種類に分かれます。

次に法定敷地と規約敷地について詳しく説明していきます。

法定敷地(第2条5項)

法定敷地とは、建物が所在する土地のことです。

よりわかりやすくお伝えすると、マンション(建物)が物理的に建っている土地のことです。

所在とは、地上、地下を問わずに建物が存在することを意味します。

したがって、建物が地下部分で突き出している場合、その突き出している地上の土地が建物が隣接する別の土地であったとしても法定敷地となります。

ここであげている土地とは、不動産登記簿上の一筆の土地(一つの土地)のことを表しています。

・一筆の土地の一部のみに建物が建っている場合でもその土地全体が法定敷地となります。

・一筆の土地上に複数の建物が所在する場合、その土地はそれぞれの建物の法定敷地となります。

・2つ以上の土地にまたがって建物が所在する場合、いずれの土地もその建物の法定敷地となります。

規約敷地(第2条5項/第5条1項)

規約敷地とは、区分所有者が建物及び建物が所在する土地と一体として管理又は使用をする庭、通路その他の土地で、規約により建物の敷地となったものをいいます。

そのため、法定敷地でないこと(建物が所在していないこと)も規約敷地となる条件であることは言うまでもありません。

例えば、建物と公道を挟んだ隣の土地を駐輪場や駐車場などとして規約により規約敷地にすることができます。

みなし規約敷地(第5条2項)

元々は法定敷地だった敷地が、ある理由により法定敷地の条件を満たさなくなってしまった後に、自動的に規約敷地とみなされるものを「みなし規約敷地」と呼びます。

みなし規約となる場合には次の2つの具体例があります。

みなし規約とみなされる具体例

① 建物の一部滅失
災害など何らかの理由により建物の一部が滅失することによって建物のない法定敷地の条件を満たさない土地となった場合には、みなし規約とみなされます。
よりわかりやすく説明すると、甲地と乙地の2筆の土地にまたがって建てられている建物があったが、建物の一部滅失により乙地側の建物が全て滅失した場合などです。
建物の一部滅失により乙地側には建物が全て無くなってしまったため、法定敷地の条件は満たさないが、元々は法定敷地だったため、みなし規約とみなされるものです。

② 敷地の分割(分筆)
法定敷地だった敷地の一部が敷地の分割(分筆)によって建物が所在しない土地となった場合に、みなし規約とみなされます。

敷地利用権

敷地利用権の持分割合(第22条2項)

区分所有者相互間の敷地利用権の持分割合については、区分所有法上は定めがありません。

そのため、民法の「共有」の規定に従うこととなり、特約がない限りは平等と推定されます。

また、敷地利用権の持分割合を規約で変更することもできませんが、共有者全員の合意での特約によれば変更することができます。

1人の区分所有者が数個の専有部分を所有する場合(分譲業者が専有部分の全部を単独で所有している場合も含む)は、規約に別段の定めがない限り、各専有部分の床面積の割合に応じて敷地利用権の割合が決まります。

つまり、分譲マンションでは、初めに分譲業者が専有部分の全部を単独で所有することが一般的であるため、敷地利用権は専有部分の床面積の割合となることがほとんどだと考えられるでしょう。

分離処分の禁止(第22条1項)

原則として、敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することはできません。

その他の権利とは、「地上権」、「使用借権」、「賃借権」などがあげられます。

また、規約に別段の定めがあるときは、分離処分することができます。

すなわち、専有部分と敷地利用権とを分離して処分することを認める規約を設定すれば分離処分ができるということです。

分離処分の無効の主張の制限(第23条)

原則として、分離処分の禁止に違反する専有部分又は敷地利用権の処分については無効となります。

しかし、その無効を善意(その事実を知らないこと)の相手方には主張することはできません。

ただし、不動産登記法の定めるところにより「分離して処分することができない専有部分及び敷地利用権であること」を登記すれば、善意の相手方に主張することができます。

敷地利用権の分有

区分所有建物が敷地上にある場合で、区分所有者が敷地を共有しておらず、各区分所有者ごとに分けて所有していることを「敷地利用権の分有」といいます。

具体例としては、タウンハウス(棟割り長屋)型で各区分所有者の専有部分である建物が建っている敷地を各区分所有者がそれぞれ単独で所有する状態があげられます。

先述しました専有部分とその専有部分に係る敷地利用権の分離処分が禁止されているのは、「敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合」です。

そのため、敷地利用権が分有されている場合には、分離処分の禁止の規定は適用外となり、専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができます。

また、敷地が分有されている場合には、他にもいくつか注意点がありますので、次にその注意点をまとめてみます。

登記について

敷地が分有されている場合は、専有部分と敷地利用権が一体化されていません。
そのため、専有部分と敷地利用権を処分する際には、登記も別々に行う必要があります。

管理について

敷地が分有されていても建物が区分所有建物であり、2以上の区分所有者が存在する場合には、管理組合が当然に成立します。
しかし、敷地が分有されている場合は、管理組合が当然にそれらの敷地を管理することはできません。
それらの敷地を管理組合が管理するためには、管理組合がそれら敷地を管理する旨の規約を定める必要があります。

民法第255条の適用除外(第24条)

民法239条2項および959条より、単独で専有部分を所有する区分所有権を放棄したり、相続人、特別縁故者がなく死亡したりした場合は、その専有部分は、国に帰属することが定められています。

一方、民法255条では、「共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する」と定められています。

上記のとおりに民法に従うと、敷地利用権が区分所有者全員の共有(又は準共有)であった場合、専有部分は国に敷地利用権は他の敷地利用権の共有者に帰属することになり、分離処分されたことになってしまいます。

この分離処分を防ぐために、区分所有法第24条では、民法255条を適用除外とすることが定めれられているのです。

その結果、専有部分と敷地利用権の共有持ち分のどちらも国に帰属することになり、分離処分がされないようになっています。

まとめ

敷地利用権について理解できたでしょうか?

敷地利用権に限ったことではありませんが、区分所有法や民法などの法律をすぐに理解することは難しいですね。

深く理解できる時は、実際にそのような問題に直面した時など、必要に迫られた時ではないでしょうか。

ここでは、マンションの敷地についても区分所有法で決められていることを頭の片隅にでもおいて頂ければ幸いです。

本記事も読んでいただきどうもありがとうございました。

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