区分所有法

第1回 2026年4月1日施行 区分所有法改正【第一章 建物の区分所有 第一節 総則】のポイント

約20年ぶりとなる大幅な区分所有法改正が、2024年5月に公布され、2026年4月1日に施行されます。

今回の改正では、区分所有者に新たな義務や管理上のルールが加わりました。

本コラムでは、【第一章 建物の区分所有 第一節 総則】の改正条文を全文掲載し、その内容と管理運営への影響を解説します。

区分所有者の責務

新設条文:第五条の二

第五条の二
区分所有者は、第三条に規定する団体の構成員として、建物並びにその敷地及び附属施設(同条後段の場合にあつては、一部共用部分)の管理が適正かつ円滑に行われるよう、相互に協力しなければならない。

📝解説
これまで区分所有法では、「区分所有者の権利や禁止事項」についての定めはありましたが、「区分所有者としてどうあるべきか」という前提的な責務について明文化されていませんでした。

今回の改正で、この「第五条の二」が新たに設けられたことで、すべての所有者がマンション全体の管理に協力する責任があることが法律上も明示されることになりました。

「誰かに任せる」「自分は関係ない」といった姿勢ではなく、全員が当事者意識を持つことが法の趣旨と言えます。

区分所有者の権利義務等

改正条文:第六条2項

第六条2項
区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分若しくは自己の所有に属しない共用部分を使用し、又は自らこれらを保存することを請求することができる。この場合において、他の区分所有者が損害を受けたときは、その償金を支払わなければならない。

📝解説
この第六条は一部内容の整理が行われていますが、趣旨は従来とほぼ変わっていません。

今回の改正条文は第2項で、「他人の専有部分や共用部分を使用・保存する必要があるときは、一定の条件でそれが認められる」という点です。

たとえば、配管工事でどうしても他人の住戸を通さなければならない場合など、この規定に基づいて協力を求めることができます。

もちろん、損害を与えた場合は償金の支払い義務があります。

国内管理人

新設条文:第六条の二

第六条の二
区分所有者は、国内に住所又は居所(法人にあつては、本店又は主たる事務所。以下この項及び第三項において同じ。)を有せず、又は有しないこととなる場合には、その専有部分及び共用部分の管理に関する事務を行わせるため、国内に住所又は居所を有する者のうちから管理人を選任することができる。

2 前項の規定により選任された管理人(次項及び第四項において「国内管理人」という。)は、次に掲げる行為をする権限を有する。
一 保存行為
二 専有部分の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
三 集会の招集の通知の受領
四 集会における議決権の行使
五 共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して負う債務又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して負う債務の弁済

3 区分所有者は、第一項の規定により国内管理人を選任した場合において、管理者があるとき、又は管理組合法人が存立するときは、遅滞なく、管理者又は管理組合法人に対し、国内管理人を選任した旨並びに国内管理人の氏名又は名称及び住所又は居所を通知しなければならない。

4 区分所有者と国内管理人との関係は、第二項に定めるもののほか、委任に関する規定に従う。

📝解説
これまで、海外在住の区分所有者が多いマンションでは、連絡が取れない・総会に出席できないなどの問題がありました。

このような事態に対応するために、「国内管理人」を選任できる制度が新たに創設されました。

海外に居住する予定がある方は、日本国内に代理人(管理人)を立てることを推奨されることになります。

この国内管理人は、総会の通知の受け取りや議決権の行使、共用部分の管理に関する弁済など、幅広い権限を持つことになります。

今後、規約で選任を義務付けるマンションも出てくる可能性がありますので、該当する方は注意が必要です。

次回のコラムでは、「第一章 第二節 共用部分等」の改正内容をご紹介していきます。
条文の正確な理解は、健全な管理運営の第一歩です。

本記事該当の区分所有法(2026年改正版)現行・改正比較表(PDF)
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