区分所有法

区分所有法(管理者)

分譲マンションでは、一棟のマンションの住戸(部屋)を区分けして販売します。

このように住戸を区分して所有する際の、各区分所有者の権利やマンション全体の管理方法などを定めた法律を区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)と呼びます。

この記事では、区分所有法における「管理者」について知ることができます。

管理者の選任及び解任(第25条)

区分所有法第25条1項では「区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によつて、管理者を選任し、⼜は解任することができる。」と定めれています。

もしかすると、マンションの管理組合の理事などに就任したことのある方は「管理者」という言葉にピンとこないかもしれません。

簡単にお伝えすると、区分所有法上の管理者は理事長のような存在だと理解して下さい。

実は、区分所有法において「理事長」や「理事会」などは存在せず、規約で定めることによりはじめて理事長や理事会などがつくられることになるのです。

また、区分所有法上の管理者を置くかどうかは任意であり、義務ではありません。

そのため、管理者を置く場合は、規約に別段の定めがない限り、集会の決議によって管理者を選任することになります。

逆に管理者を解任する場合にも集会の決議が必要となります。

区分所有法上の管理者への就任には資格制限はなく、誰でもなることができます。また、人数も制限がなく、任期も決められていません。
但し、規約で資格の制限や人数、任期を定めることはできます。

各区分所有者による管理者の解任請求(第25条2項)

区分所有法第25条2項には「管理者に不正な⾏為その他その職務を⾏うに適しない事情があるときは、各区分所有者は、その解任を裁判所に請求することができる。」と定められています。

したがって、集会の決議で管理者の解任が否決されたとしても、各区分所有者は自ら管理者の解任を裁判所に請求できるわけです。

管理者の権限(第26条)

管理者の共用部分における権限等(第26条1項)

区分所有者法第26条1項では、「管理者は、共⽤部分並びに第⼆⼗⼀条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四⼗七条第六項において「共⽤部分等」という。)を保存し、集会の決議を実⾏し、並びに規約で定めた⾏為をする権利を有し、義務を負う。」と定められています。

わかりやすく次のように3つに分けて説明してみます。

共⽤部分と当該建物の敷地及び附属施設の保存

管理者は、集会の決議がなくても共用部分や敷地、付属施設の破損などに伴う小修繕などの保存行為や、そのための費用の支払いを単独ですることができます。

集会決議の実⾏

管理者は、集会で決議された事項について実際に執行しなければなりません。

規約で定めた⾏為をする権利と義務

管理者は、規約によって定められた管理者の権利を行使することができます。また、定められた義務は遂行しなければなりません。

区分所有者の代理(第26条2項)

区分所有者法第26条2項では、「管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第⼗⼋条第四項(第⼆⼗⼀条において準⽤する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険⾦額並びに共⽤部分等について⽣じた損害賠償⾦及び不当利得による返還⾦の請求及び受領についても、同様とする。」と定められています。

このことから、管理者は、管理組合が締結した損害保険に基づく保険金やその他管理組合に対する損害賠償金の請求や受領をすることができます。

しかし、損害保険契約を管理者が締結することはできず、区分所有法では集会の決議が必要とされています。

標準管理規約上は、「区分所有者は、管理組合が共用部分等の損害保険の契約を締結することを承認する」とされており、集会(総会)の決議は不要とされています。
ただし、現実には、管理組合の収支予算に損害保険料を計上して総会の承認を得ることが適切でしょう。

管理者の代理権に加えた制限(第26条3項)

区分所有者法第26条3項では「管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。」と定められています。

よって、規約や集会の決議によって管理者に特別に加えた代理権の制限があったとしても、区分所有者ではない善意(知らなかった)の第三者には、そのことを対抗することはできません。

管理者の原告と被告(第26条4項/5項)

区分所有者法第26条4項では「管理者は、規約⼜は集会の決議により、その職務(第⼆項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告⼜は被告となることができる。」とされています。

そして、5項では「管理者は、前項の規約により原告⼜は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第三⼗五条第⼆項から第四項までの規定を準⽤する。」と定められています。

これは、訴訟において集会の決議又はあらかじめ規約で定めておけば、管理者が原告又は被告になることができるというもので、規約の定めにより管理者が原告又は被告になった場合には、遅滞なく区分所有者にそのことを通知しなればいけませんが、集会の決議による場合は通知する必要はないということです。

管理所有(第27条)

区分所有者法第27条では「管理者は、規約に特別の定めがあるときは、共⽤部分を所有することができる。」と定められています。

このことを「管理所有」と呼びます。

管理所有につきましては、以前の投稿記事【区分所有法(共用部分について)】で詳しく述べています。

是非そちらの記事もあわせてご欄下さい。

管理者の委任の規定の準用(第28条)

区分所有者法第28条では「この法律及び規約に定めるもののほか、管理者の権利義務は、委任に関する規定に従う。」と定められています。

「委任に関する規定」とは、民法の委任に関する規定を意味しています。

民法の委任に関する条文は、「第10節 第643条~第656条」にて下記のことが定められています。

ここでは、詳しくは説明しませんが、ご興味のある方、より深く委任について知りたい方は調べてみて下さい。

民法 第10節 委任

第643条(委任)
第644条(受任者の注意義務)
第644条の2(復受任者の選任等)
第645条(受任者による報告)
第646条(受任者による受取物の引渡し等)
第647条(受任者の金銭の消費についての責任)
第648条(受任者の報酬)
第648条の2(成果等に対する報酬)
第649条(受任者による費用の前払請求)
第650条(受任者による費用等の償還請求等)
第651条(委任の解除)
第652条(委任の解除の効力)
第653条(委任の終了事由)
第654条(委任の終了後の処分)
第655条(委任の終了の対抗要件)
第656条(準委任)

区分所有者の責任等(第29条)

区分所有者法第29条1項では「管理者がその職務の範囲内において第三者との間にした⾏為につき区分所有者がその責めに任ずべき割合は、第⼗四条に定める割合と同⼀の割合とする。ただし、規約で建物並びにその敷地及び附属施設の管理に要する経費につき負担の割合が定められているときは、その割合による。」と定められています。

これは、区分所有者の代表者である管理者の責任は、各区分所有者も共用部分の持分の割合と同じ割合で責任を負うことを定めたものです。

しかし、規約で負担の割合が定められている時にはその割合によることになります。

また、第29条2項では「 前項の⾏為により第三者が区分所有者に対して有する債権は、その特定承継⼈に対しても⾏うことができる。」とも定められています。

そのため、専有部分である住戸を購入し、区分所有者となった特定承継人は、購入前の事項であったとしても管理者の責任を決められた割合で負う義務があるのです。

まとめ

今回は区分所有法における管理者について学んで頂きました。いかがでしたでしょうか。

冒頭でも述べた通りに多くの管理組合では、管理者という言葉は馴染みが薄く、理事長という言葉が一般的でしょう。

しかし、最近の新築マンションでは、理事など役員のなり手不足の問題によりマンション竣工時から理事を置く理事会制度を廃止して、今回学んで頂いた区分所有法上の管理者を置く「管理者方式」を採用する管理組合が増えてきています。

理事会方式が良いのか?管理者方式が良いのか?はどちらもメリット、デメリットがあり一概には言えません。

この2つの違いについては、以前に記事を投稿していますのでご興味のある方は下述の「あわせて読みたい」の記事をご欄下さい。

本記事も読んでいただきどうもありがとうございました。

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