分譲マンションでは、一棟のマンションの住戸(部屋)を区分けして販売します。
このように住戸を区分して所有する際の、各区分所有者の権利やマンション全体の管理方法などを定めた法律を区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)と呼びます。
この記事では、区分所有法における「建物の⼀部が滅失した場合の復旧等」について知ることができます。
建物の⼀部が滅失した場合の復旧等(第61条)
建物の⼀部滅失による復旧の定義(第61条1項)
区分所有法第61条1項では「建物の価格の⼆分の⼀以下に相当する部分が滅失したときは、各区分所有者は、滅失した共⽤部分及び⾃⼰の専有部分を復旧することができる。ただし、共⽤部分については、復旧の⼯事に着⼿するまでに第三項、次条第⼀項⼜は第七⼗条第⼀項の決議があつたときは、この限りでない。」と定められています。
建物の価格の1/2以下に相当する部分が滅失:小規模滅失
建物の価格の1/2超に相当する部分が滅失:大規模滅失
区分所有法第62条1項(建替え決議)
集会においては、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地若しくはその⼀部の⼟地⼜は当該建物の敷地の全部若しくは⼀部を含む⼟地に新たに建物を建築する旨の決議(以下「建替え決議」という。)をすることができる
区分所有法第70条1項(団地内の建物の⼀括建替え決議)
団地内建物の全部が専有部分のある建物であり、かつ、当該団地内建物の敷地(団地内建物が所在する⼟地及び第五条第⼀項の規定により団地内建物の敷地とされた⼟地をいい、これに関する権利を含む。以下この項及び次項において同じ。)が当該団地内建物の区分所有者の共有に属する場合において、当該団地内建物について第六⼗⼋条第⼀項(第⼀号を除く。)の規定により第六⼗六条において準⽤する第三⼗条第⼀項の規約が定められているときは、第六⼗⼆条第⼀項の規定にかかわらず、当該団地内建物の敷地の共有者である当該団地内建物の区分所有者で構成される第六⼗五条に規定する団体⼜は団地管理組合法⼈の集会において、当該団地内建物の区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、当該団地内建物につき⼀括して、その全部を取り壊し、かつ、当該団地内建物の敷地(これに関する権利を除く。以下この項において同じ。)若しくはその⼀部の⼟地⼜は当該団地内建物の敷地の全部若しくは⼀部を含む⼟地(第三項第⼀号においてこれらの⼟地を「再建団地内敷地」という。)に新たに建物を建築する旨の決議(以下この条において「⼀括建替え決議」という。)をすることができる。ただし、当該集会において、当該各団地内建物ごとに、それぞれその区分所有者の三分の⼆以上の者であつて第三⼗⼋条に規定する議決権の合計の三分の⼆以上の議決権を有するものがその⼀括建替え決議に賛成した場合でなければならない。
復旧費用の償還請求(第61条2項)
区分所有法第61条2項では「前項の規定により共⽤部分を復旧した者は、他の区分所有者に対し、復旧に要した⾦額を第⼗四条に定める割合に応じて償還すべきことを請求することができる。」と定められています。
区分所有法第14条(共⽤部分の持分の割合)
(区分所有法第14条1項)
各共有者の持分は、その有する専有部分の床⾯積の割合による。
(区分所有法第14条2項)
前項の場合において、⼀部共⽤部分(附属の建物であるものを除く。)で床⾯積を有するものがあるときは、その⼀部共⽤部分の床⾯積は、これを共⽤すべき各区分所有者の専有部分の床⾯積の割合により配分して、それぞれその区分所有者の専有部分の床⾯積に算⼊するものとする。
(区分所有法第14条3項)
前⼆項の床⾯積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の⽔平投影⾯積による。
(区分所有法第14条4項)
前三項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
集会の決議(第61条3項)
区分所有法第61条3項では「第⼀項本⽂に規定する場合には、集会において、滅失した共⽤部分を復旧する旨の決議をすることができる。」と定められています。
第一項本文の規定する場合の規定とは「建物の⼀部滅失による復旧」についての規定のことです。
建物の⼀部滅失による復旧の決議は、原則として普通決議(区分所有者及び議決権の各過半数)ですることができます。
規約による別段の定め(第61条4項)
区分所有法第61条4項では「前三項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。」と定められています。
規約により「建物の⼀部滅失による共用部分の復旧は集会の決議によってのみ行えるものとする」とし、区分所有単独での復旧は認めないような規定を制定することも可能です。
集会の決議要件(第61条5項)
区分所有法第61条5項では「第⼀項本⽂に規定する場合を除いて、建物の⼀部が滅失したときは、集会において、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数で、滅失した共⽤部分を復旧する旨の決議をすることができる。」と定められています。
これはつまり、「建物の価格の1/2超に相当する部分が滅失」した場合の共用部分の復旧のことを示しています。
建物の価格の1/2以下に相当する部分が滅失した場合と異なり、建物の価格の1/2超に相当する部分が滅失した場合は区分所有者が単独で共用部分を復旧することは認められません。
しかし専有部分の復旧については、各区分所有者が単独で行うことができます。
集会の議事録(第61条6項)
区分所有法第61条6項では「前項の決議をした集会の議事録には、その決議についての各区分所有者の賛否をも記載し、⼜は記録しなければならない。」と定められています。
決議賛成者に対する買取請求権(第61条7項)
区分所有法第61条7項では「第五項の決議があつた場合において、その決議の⽇から⼆週間を経過したときは、次項の場合を除き、その決議に賛成した区分所有者(その承継⼈を含む。以下この条において「決議賛成者」という。)以外の区分所有者は、決議賛成者の全部⼜は⼀部に対し、建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。この場合において、その請求を受けた決議賛成者は、その請求の⽇から⼆⽉以内に、他の決議賛成者の全部⼜は⼀部に対し、決議賛成者以外の区分所有者を除いて算定した第⼗四条に定める割合に応じて当該建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。」と定められています。
区分所有法第14条とは前記した「共⽤部分の持分の割合」についての規定のことです。
この買い取るべきことを請求する権利のことを「買取請求権」と呼びます。
買取請求権を行使できるのは、決議反対者ではなく「決議に賛成した区分所有者以外の区分所有者」と規定されていることをおさえて下さい。
つまり、反対した区分所有者だけでなく、不参加や不明、無効票等となった区分所有者も含まれるということです。
買取指定者の決定(第61条8項)
区分所有法第61条8項では「第五項の決議の⽇から⼆週間以内に、決議賛成者がその全員の合意により建物及びその敷地に関する権利を買い取ることができる者を指定し、かつ、その指定された者(以下この条において「買取指定者」という。)がその旨を決議賛成者以外の区分所有者に対して書⾯で通知したときは、その通知を受けた区分所有者は、買取指定者に対してのみ、前項前段に規定する請求をすることができる。」と定められています。
買取指定者の指定通知(第61条9項)
区分所有法第61条9項では「買取指定者は、前項の規定による書⾯による通知に代えて、法務省令で定めるところにより、同項の規定による通知を受けるべき区分所有者の承諾を得て、電磁的⽅法により買取指定者の指定がされた旨を通知することができる。この場合において、当該買取指定者は、当該書⾯による通知をしたものとみなす。」と定められています。
決議賛成者の責任(第61条10項)
区分所有法第61条10項では「買取指定者が第七項前段に規定する請求に基づく売買の代⾦に係る債務の全部⼜は⼀部の弁済をしないときは、決議賛成者(買取指定者となつたものを除く。以下この項及び第⼗五項において同じ。)は、連帯してその債務の全部⼜は⼀部の弁済の責めに任ずる。ただし、決議賛成者が買取指定者に資⼒があり、かつ、執⾏が容易であることを証明したときは、この限りでない。」と定められています。
買取指定者の責任は決議賛成した区分所有者が連帯して責任を負うということです。
決議賛成者以外の区分所有者に対する書面による催告(第61条11項)
区分所有法第61条11項では「第五項の集会を招集した者(買取指定者の指定がされているときは、当該買取指定者。次項において同じ。)は、決議賛成者以外の区分所有者に対し、四⽉以上の期間を定めて、第七項前段に規定する請求をするか否かを確答すべき旨を書⾯で催告することができる。」と定められています。
最低4か月以上の期間の猶予を定めて、決議賛成者以外の区分所有者に対して買取請求権を行使するか否かを書面で催告することができます。
電磁的方法による催告(第61条12項)
区分所有法第61条12項では「第五項の集会を招集した者は、前項の規定による書⾯による催告に代えて、法務省令で定めるところにより、同項に規定する区分所有者の承諾を得て、電磁的⽅法により第七項前段に規定する請求をするか否かを確答すべき旨を催告することができる。この場合において、当該第五項の集会を招集した者は、当該書⾯による催告をしたものとみなす。」と定められています。
買取請求権の消滅(第61条13項)
区分所有法第61条13項では「第⼗⼀項に規定する催告を受けた区分所有者は、同項の規定により定められた期間を経過したときは、第七項前段に規定する請求をすることができない。」と定められています。
最低4か月以上の期間の猶予を定めて買取請求権を行使するか否かを書面で催告された決議賛成者以外の区分所有者は、その期間を過ぎた時には買取請求権を行使することができなくなります。
その結果、買取請求権を行使することができなくなった決議賛成者以外の区分所有者は、共用部分の持分の割合に応じて復旧の費用を負担することとなります。
他の区分所有者に対する買取請求権(第61条14項)
区分所有法第61条14項では「第五項に規定する場合において、建物の⼀部が滅失した⽇から六⽉以内に同項、次条第⼀項⼜は第七⼗条第⼀項の決議がないときは、各区分所有者は、他の区分所有者に対し、建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。」と定められています。
建物の価格の1/2超に相当する部分が滅失した日から6ヵ月以内に「建替え決議」又は「団地内の建物の⼀括建替え決議」が行われない時は、各区分所有者は他の区分所有者に対して、建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべき買取請求権を行使できます。
買取請求に伴う裁判所の権限(第61条15項)
区分所有法第61条15項では「第⼆項、第七項、第⼋項及び前項の場合には、裁判所は、償還若しくは買取りの請求を受けた区分所有者、買取りの請求を受けた買取指定者⼜は第⼗項本⽂に規定する債務について履⾏の請求を受けた決議賛成者の請求により、償還⾦⼜は代⾦の⽀払につき相当の期限を許与することができる。」と定められています。
「復旧費用の償還請求」や「買取請求」をされた人はすぐに費用を支払うことが困難な場合も多いでしょう。
そのため、裁判所はこれら費用の請求をうけた人の請求によって費用支払いの相当の期限を設ける(許与する)ことができます。
まとめ
本記事の「建物の⼀部が滅失した場合の復旧等」についていかがだったでしょうか。
マンションの1/2が滅失するような状態となると、見た目はかなりの損傷になると想像できますが、区分所有法上は、1/2以下の滅失は小規模滅失と認定されます。
このような状態になると、復旧費用もかなりの金額になると予想され、管理組合の合意形成をとるのは困難になっていくでしょう。
特に1981年5月31日までに建築確認を実施して建設されたマンションでは地震に弱い旧耐震建物である可能性も高くなり、大震災が発生した時には大きな被害が発生する可能性も高くなります。
そのようなマンションでは、地震保険も高額となり、地震保険だけでは費用をカバーできるとも思えません。
耐震補強などを実施して事前に大震災に備えることを検討していくことが大切です。
本記事も読んでいただきどうもありがとうございました。
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