これからのマンション修繕を考える ~従来の常識にとらわれない修繕とは?~
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マンションを長く良好な状態に維持していくためには、建物や設備を適切に修繕していくことが欠かせません。
そのため、多くのマンションでは長期修繕計画を作成し、修繕積立金を積み立て、一定の周期で大規模修繕工事を実施しています。
こうした仕組みは、これまでマンションを維持管理していくうえで大きな役割を果たしてきました。
しかし私は、これからのマンション修繕については、これまでの経験や事例、従来の「常識」を参考にしながらも、それだけにとらわれず、一つひとつのマンションの実情に合わせて考えていく必要があるのではないかと考えています。
目 次
Toggleマンション修繕を取り巻く環境は変わっている
その大きな理由の一つが、マンションを取り巻く環境の変化です。
近年は建築資材価格だけでなく、人件費も上昇しています。
国土交通省が公表した2026年3月適用の公共工事設計労務単価も、全国全職種の単純平均で前年度比4.5%上昇し、14年連続の引上げとなっています。
もちろん、公共工事の労務単価とマンションの修繕工事費は同じものではありませんが、建設業界全体で人件費の上昇が続いていることを示す一つの指標といえます。
長期修繕計画を数年前に作成したマンションでも、当時想定していた金額では同じ工事ができなくなっているケースは、今後さらに増えていくことが考えられます。
そのたびに、
「工事費が上がったので修繕積立金を値上げしましょう」
という対応だけを続けていくことが、本当に唯一の方法なのでしょうか。
もちろん、必要な修繕を実施するために修繕積立金を適正な水準へ引き上げることは重要です。
しかし、それと同時に、
「そもそも、この修繕方法や修繕周期自体を見直す余地はないのか?」
と考えてみることも必要ではないでしょうか。
国土交通省のガイドラインは大切な「基準」ですが、すべてのマンションが同じではありません
国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインでは、大規模修繕工事について一般的に12~15年程度の周期が示されています。
また、管理計画認定制度では、長期修繕計画の計画期間を30年以上とし、その残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれていることなどが認定基準とされています。
こうしたガイドラインや基準は、管理組合が長期修繕計画や修繕積立金を検討するうえで非常に重要なものです。
一方で、国土交通省のガイドライン自体も、マンションにはさまざまな形態、形状、仕様、立地条件があり、それらの条件に応じた長期修繕計画とすることを前提としています。
つまり、ガイドラインは重要な指針ではありますが、
「すべてのマンションが同じ年数、同じ方法で修繕しなければならない」
というものではありません。
「大規模修繕工事をする」ことから考え始めなくてもよいのではないか
一般に大規模修繕工事では、足場を設置し、外壁補修、塗装、シーリング、防水など複数の工事をまとめて行います。
複数の工事を同時に行えば、足場などの仮設設備を共用できるため、効率的に工事を実施できるという大きなメリットがあります。
一方で、現在では施工技術や材料も進歩しています。
高耐久な材料を使用することで修繕周期を延ばしたり、全面足場だけでなくロープアクセスなどを利用して必要な部分だけを補修したりする選択肢もあります。
実際、国土交通省の「マンションストック長寿命化等モデル事業」でも、「大規模修繕の周期延長につながる耐久性の高い新材料を用いる改修工事」が先導的な取組の例として挙げられています。
そう考えると、
「そろそろ大規模修繕の時期だから、何を工事するか考える」
のではなく、
「現在、このマンションのどこに、どのような修繕が必要なのかを調べ、その結果として必要な工事を選択する」
という順番で考えてもよいのではないでしょうか。
本当にすべての工事をまとめる必要があるのか
修繕をまとめることには、施工効率や仮設費などの面でメリットがあります。
一方で、一度の工事金額が非常に大きくなるという側面もあります。
近年、大規模修繕工事の発注については、競争性や透明性を確保することの重要性も高まっており、国土交通省も大規模修繕工事等の発注の適正化について情報提供や相談窓口の周知を行っています。
国土交通省「マンションの大規模修繕工事等に係る発注等の適正化」
そのため、
「大規模修繕だから全部まとめて発注する」
だけでなく、外壁補修、防水、シーリング、鉄部塗装などについて、建物の劣化状況を確認しながら、小規模・中規模な修繕として必要な時期に実施する方法についても、マンションによっては検討する価値があると思います。
もちろん、小分けすれば必ず工事費が安くなるわけではありません。
発注回数が増えたり、仮設費が重複したり、施工会社間の責任区分や保証が複雑になったりする可能性もあります。
大切なのは、
「まとめること」と「分けること」のどちらかを最初から正解と決めないこと
ではないでしょうか。
長期修繕計画も30年より先を考えてみる
長期修繕計画についても同じことがいえます。
国土交通省のガイドラインでは、計画期間は30年以上かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上とされています。
しかし同じガイドラインには、修繕積立金をできるだけ一定額とするため、計画期間をさらに長期間として、多額の修繕工事を包含することも考えられると記載されています。
マンションでは築30年を超えた頃から、給排水管、エレベーター、サッシなど、大規模修繕工事とは別の大きな更新工事が必要になることもあります。
そうであれば、30年間だけを見るのではなく、
40年、あるいはそれ以上の期間を見渡して、「このマンションをどう維持していくのか」を考える
ことにも意味があると思います。
ただし、長期間になればなるほど、将来の工事内容や工事費を正確に予測することは難しくなります。
だからこそ、一度作った長期修繕計画を固定するのではなく、定期的に見直していくことが重要です。
国土交通省も、建物や設備の劣化状況、修繕工事費の変動などを踏まえ、5年程度ごとの調査・診断と長期修繕計画の見直しを求めています。
修繕積立金も「いくら集めるか」だけで考えない
修繕積立金についても、
「将来不足するから値上げする」
という視点だけではなく、
「いつ、何に、どれだけのお金が必要なのか」
を長期修繕計画と合わせて考える必要があります。
さらに、金利環境が変化している現在では、多額の修繕積立金をどのように安全に保管・運用するのかという視点も、これまで以上に重要になってくると考えています。
修繕積立金は管理組合にとって大切な資産です。
投資によって積極的に利益を求める資金ではありませんが、
安全性と流動性を十分に確保したうえで、長期修繕計画と資金の運用を連動させる
という考え方についても検討する価値があるでしょう。
「新しいことをする」ことが目的ではありません
ここまで読むと、
- 従来の大規模修繕工事はやめるべきだ
- 12~15年周期は間違っている
- 長期修繕計画は必ず40年以上にするべきだ
という話に聞こえるかもしれません。
しかし、私が言いたいのはそういうことではありません。
全面足場を設置して複数の工事をまとめて行う方が合理的なマンションも当然あります。
12~15年程度で大規模修繕工事を行うことが適切なマンションもあります。
修繕積立金を引き上げる必要があるマンションもあります。
一方で、18~20年程度まで修繕周期を延ばせるマンションや、小中規模の修繕を組み合わせた方が適しているマンションもあるかもしれません。
重要なのは、
「これまでそうしてきたから」
「他のマンションもそうしているから」
「一般的にこの周期だから」
という理由だけで決めないことです。
これからのマンション修繕を考える
マンションは一つとして同じものではありません。
建物の構造や形状、使用されている材料、立地環境、劣化状況、管理状況、修繕積立金の残高、区分所有者の構成など、それぞれ条件が異なります。
さらに施工技術や材料、金融環境、社会情勢も変化していきます。
だからこそ、これからのマンション修繕では、これまでの経験や事例、国のガイドラインなどを大切な参考としながらも、それだけにとらわれることなく、
一つひとつのマンションの実情に合わせて、新たな発想も取り入れながら、最も適した方法を考えていくこと
が求められているのではないでしょうか。
このシリーズでは、今後、次のテーマについて一つずつ考えていきます。
- そもそも大規模修繕工事は必要なのか
- 大規模修繕工事は12~15年ごとに必要なのか
- 工事をまとめて発注することが本当に最適なのか
- 長期修繕計画は30年で十分なのか
- 修繕積立金は貯めておくだけでよいのか
従来の方法を否定するためではなく、
「自分たちのマンションにとって、本当にこれが一番よい方法なのか?」
と一度考えてみる。
そこから、これからのマンション修繕を考えることが始まるのではないかと思います。
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