マンションを購入して所有すると、管理組合のあるマンションであればそのマンションに居住していても、いなくても強制的に管理組合員の一員となります。
また、積極的に立候補して理事を引き受けるような組合員がいないマンションでは、理事を1~2年毎の持ち回りで行う輪番制を採用しているところも多く、組合員の誰もが理事に就任する可能性があります。
そして、いざ自身が理事に就任する時がきたあかつきには、どうしたら良いか戸惑ってしまう人も多いことでしょう。
本記事を読むことで、理事に就任したらまず何をすればいいのか、まったくマンションの管理知識や、理事経験が無い人でも理事活動について知ることができます。
理事会は業務担当と経営企画部などをかけ合わせたような存在
理事という言葉は、マンションの管理組合に限らず色々な組織の中で聞いたことがあると思います。
また、理事という言葉を聞くと、何をする人かは良くわからないとしても、何となく偉い人で何かを決めていく人なのだろうという漠然とした印象はあるのではないでしょうか。
マンションの管理組合の理事は管理組合の総会において役員としてまずは選任されます。
そして、その選任された役員の中から理事会の決議を経て理事の役職が決まります。
理事の役職の種類としては、理事長、副理事長、会計担当理事、理事などがあります。
また、理事ではない役員である監事は総会で監事として直接選任されます。
理事達は理事会をつくり、管理組合の総会で決まったことに従って管理組合の業務を担当していくことや、事業計画案など立案して管理組合の総会へ議案をあげていく業務担当部署と経営企画部などをかけ合わせたような存在です。
そして、理事会で決議して選任される理事長は管理組合の管理者となり、管理組合を代表して業務を統括し、管理規約や使用細則などで定められた事項にもとづいて業務を遂行していきます。
因みに理事ではない監事は、管理組合の業務や財産の状況及び理事に不正行為などがないかを監査することが主な役割で、理事会に出席して意見を述べることはできますが、理事会での決議(賛成、反対の表明)に加わることは基本的にできません。
このように理事会は管理組合の業務担当部署として重要な役割を担っており、理事会の活動しだいによってそのマンションの管理状態が決まっていくと言っても過言ではないでしょう。
建物管理会社に何でも強引に対応させてはいけない
多くの管理組合ではお金を支払ってマンションの建物及び設備の保守、点検から日常管理までを建物管理会社に委託しています。
そのため、お金を支払っているのだからという理由で、契約範囲外のことでも24時間365日管理会社の担当者に連絡して強引に対応させたり、もし従わないとクレームや罵声を浴びせるようなモンスター組合員やモンスター理事なども存在します。
委託する建物管理会社はあくまでも管理組合の補助的な役割を担い、管理委託契約で締結された内容に従って業務を遂行してもらう存在であることをしっかりと認識してください。
事あるごとに何でも強引に建物管理会社に対応させようとするような管理組合とは採算があわず、管理委託契約を更新しなかったり、途中で解約する建物管理会社も実際に増えてきています。
今後の日本国内において、多くのマンションの老朽化が進んでいき、今まで以上に建物管理が重要になっていくことは間違いありません。
また、日本国内の慢性的な人手不足の影響もあって多くの管理組合では、いかに健全な建物管理会社へ管理を委託していくことができるのかが将来にわたってマンションの適切な管理の維持・向上を図っていくための重要なポイントとなり、そのような建物管理会社から選ばれる管理組合になることが求められていきます。
あくまで管理組合と建物管理会社の関係は管理委託契約で締結された関係です。
契約内容をしっかりと履行していないことに対してクレームをあげることは大切ですが、契約範囲外の事項に関しては、建物管理会社と協議して必要であれば管理組合から別途費用を支払って対応してもらうべきものです。
建物管理会社へ強引に何でも対応させてはいけません。くれぐれも気をつけてください。
何でも建物管理会社の言いなりにならない
管理組合がマンションの管理を建物管理会社へ委託する理由は、建物管理会社はマンション管理の専門的な知識を持った組織であり、自身のマンションを適切に管理、維持してくれる安全、安心感があるからでしょう。
しかし、建物管理会社は管理組合の組合員による理事会活動などの管理活動とは異なり、管理組合より委託費用をいただいて事業としてマンション管理を行っています。
そのため建物管理会社は採算が合わないマンションからの管理委託は受けませんし、できることなら管理組合からできるだけ多くの委託費用をいただいて利益を確保していきたいとも思っています。
このことは建物管理会社に関わらず、どの企業でも従業員の生活を守っていくためにも必要不可欠なことであり、企業としては当然のことで否定されるものではありません。
しかし、前項において「建物管理会社へ強引に何でも対応させてはいけない」ことを述べましたが、それとは反対に「何でも建物管理会社の言いなりにならない」ことも非常に大切です。
2022年3月末時点でのマンション管理業者の登録数は国土交通省より1,934社あると公表されています。
残念ながらそれらの建物管理会社の中には委託費用が高額でありながら専門的な知識も不足していて、いい加減なことを言ったり、管理規約を逸脱するようなことまで推奨してくる悪質と思われるような建物管理会社も存在します。
私も実際に理事に就任したばかりのマンションにおいて、管理を委託していた建物管理会社がずさんな業務を実施していたことがわかり、他の理事達と協議のうえ、その建物管理会社との委託契約を解約したこともありました。
その結果、新しい建物管理会社へ委託することにより管理の品質も向上して委託費用も大幅に削減することができ、1年で100万円以上、大規模修繕を想定する15年間で試算すると2,000万円以上もの委託費用を削減することが実現できました。
このことにより、将来的には余儀なくされるであろう修繕積立金の値上げを低減することも実現できたのです。
悪質とまでは言えませんが、委託費用については利益を確保するために他のマンションと比較すると高額な委託費用をとっている建物管理会社も多く見受けられます。
また、メーカーが推奨しているという理由だけで設備交換などの実施提案をしてくるようなことも度々あります。
実際に設備交換を実施する必要があったとしても、その妥当性をしっかりと納得いくまで確認することや、管理組合(理事会)が主体となって他社からの相見積りの取得をするなどして、理事会でしっかりと検証して決めていくことが大切です。
何でも建物管理会社の言いなりにはならない。こちらも覚えておいてください。
建物管理会社とは異なる第三者の専門家を活用する
前項では、何でも建物管理会社の言いなりにならずに理事会側でしっかりと検証して決めていくことが大切とお伝えしました。
しかし、理事メンバーの中にマンション管理の知識に精通している人がいない限り、間違っているのか?適正なのか?を見極め、判断していくことは難しいのが現実でしょう。
そのような管理組合では委託している建物管理会社とは異なるマンション管理の専門知識と経験を持った第三者のマンション管理士などの専門家を活用することが有効です。
国土交通省がマンションの標準ルールの雛形として作成した標準管理規約にも管理組合の管理費を使用して専門的知識を有する者を活用することが規定されており、推奨されています。
残念なことに管理を委託している建物管理会社の担当者はこのことを知っていながらも教えてくれる、提案してくれることは少ないでしょう。
特に悪質と思われる建物管理会社にとって第三者のマンション管理士などの専門家は天敵でしかありません。
業務改善を指摘されることはもちろんのこと、最悪は建物管理会社の変更を提案されてしまうことも大いに考えられるからです。
一方、管理組合側にとっては管理費から相談(コンサル)費用を支払ってでも、この第三者の専門家を活用することにより管理改善や、年間数百万円(マンションの規模によっては数千万円)という管理費などのコスト削減を実現する可能性も十分に考えられます。
但し、マンション管理士などマンション管理の資格としては最高峰の資格を保有している専門家でも、資格試験に合格するためだけの知識は持っていても、実務経験に乏しく、現実の問題には対応する能力は持ち合わせていないなどの可能性もあるので注意が必要です。
大切なことは、マンション管理士などの資格よりも、現実のマンションの問題をしっかりと把握し、それを改善する提案力があり、何よりも親身になって支援してくれそうな信頼のできる第三者の専門家に相談することをお勧めします。
また、理事たちの前ではもっともらしいことを言い、良い改善提案をするものの、改善実施の際には自らは動かず、建物管理会社へ丸投げしてしまうようなマンション管理士なども存在すると聞いたことがあります。
そのような口先だけのマンション管理士では、建物管理会社の担当者が疲弊してしまうだけです。このようなマンション管理士にもくれぐれも注意が必要です。
マンション管理の専門的知識を持っている理事がいない管理組合では、委託している建物管理会社とは異なる信頼できる第三者の専門家を見つけて活用していくことが健全で適切なマンション管理を実現していくためのポイントになります。
すぐにでも実践していくことをお勧めします。
理想と現実
管理組合の理事に就任したら知っておきたい最後の5つ目は、管理組合の理想と現実を知ることです。
これまで建物管理会社への委託やマンション管理士などの第三者の専門家の活用について話をしてきましたが、一般的に適切なマンションの管理を維持・向上していくための大前提として過去から言われ続けているのは、「マンション管理の主体は管理組合であり、組合員全員が高い管理意識をもって活動する」というものです。
これは、どんなに素晴らしい建物管理会社に委託し、素晴らしいマンション管理士を活用したとしても管理組合や理事会が管理活動に無関心で、他人任せにしているようなマンションでは的確なマンション管理を実現することは難しいことを意味していると私は理解しています。
確かに組合員全員が高い管理意識を持って活動すれば素晴らしいマンションになること間違いないでしょう!
しかし、残念ながらこのような管理組合は理想に過ぎず、現実はそう簡単ではありません。
あたりまえのことですが、組合員一人ひとりの考え方、職業、家族構成、生活スタイルなど多くのことが異なっていきます。
そのため、管理組合の活動に対しても意識の高い人、お金で他人に全て任せたい人、無関心な人、活動したいと思っていてもできない人などなど・・・様々な考え方を持つ組合員がでてくることが自然です。
そして、全ての組合員に対して上述した理想を求めることは相当な労力と時間をかけたとしても実現することは非常に困難と言わざるを得ないのではないでしょうか。
そこで管理組合が現実的に取り組むべきことは、マンション全体の実態を知り、実態に即したマンションの管理方法、管理組合体制を構築することです。
そうすることで将来にわたって適切にマンションを管理することができ、居住者の適切な暮らしと利便性、マンションの資産価値の維持・向上が実現できる可能性が格段にあがっていくでしょう。
まとめ
本記事のおさらいをします。
・理事達は理事会をつくり、管理組合の総会で決まったことや、規約・細則などで定められた事項に従って管理組合の業務を担当していく
・事業計画案など立案して管理組合総会へ議案をあげていく業務担当部署と経営企画部などをかけ合わせたような存在
・理事会の活動しだいによってそのマンションの管理状態が決まっていく
・管理を委託する建物管理会社はあくまでも管理組合の補助的な役割を担う存在
・契約範囲外の事項に関しては、建物管理会社と協議して必要であれば管理組合より別途費用を支払って対応してもらう
・これからは健全な建物管理会社から選ばれる管理組合になることが求められていく
・マンション建物管理会社が自社の利益を追求していくことは必然
・建物管理会社の中には委託費用が高額で専門知識もない悪質と思われる会社も存在する
・何でも建物管理会社の言いなりにならずに管理組合、理事会側で納得いくまで確認や検証することが大切
・建物管理会社とは異なるマンション管理の専門知識と経験を持った第三者のマンション管理士などの専門家を活用することは有効
・実務経験に乏しく、現実の問題には対応する能力は持ち合わせていないなどのマンション管理士も存在する
・現実のマンションの問題をしっかりと把握し、改善する提案力があり、親身になって支援してくれる信頼のできる専門家に相談する
・口先だけのマンション管理士では、建物管理会社の担当者が疲弊してしまう
・管理組合の理想は組合員全員が高い管理意識をもって活動すること
・現実の組合員は管理組合の活動に対して意識の高い人、お金で他人に全て任せたい人、無関心な人など様々な考え方を持つ
・全ての組合員に対して上述した理想を求めることは相当な労力と時間をかけたとしても実現することは非常に困難
・管理組合が現実的に取り組むべきことは、マンション全体の実態を知り、実態に即したマンションの管理方法、管理組合体制を構築すること。そうすることで将来にわたって適切にマンションを管理することができ、居住者の適切な暮らしと利便性、マンションの資産価値の維持・向上が実現できる可能性が格段にあがっていく
本日も読んでいただき、どうもありがとうございました。