区分所有法

区分所有法(管理組合法人の設立等)

分譲マンションでは、一棟のマンションの住戸(部屋)を区分けして販売します。

このように住戸を区分して所有する際の、各区分所有者の権利やマンション全体の管理方法などを定めた法律を区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)と呼びます。

この記事では、区分所有法における「管理組合法人の設立等」について知ることができます。

設立等(第47条)

設立要件(第47条1項)

区分所有法第47条1項では「第三条に規定する団体は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で法⼈となる旨並びにその名称及び事務所を定め、かつ、その主たる事務所の所在地において登記をすることによつて法⼈となる。」と定められています。

管理組合は次の2つの条件を満たすことにより法人化することができます。
①区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による集会の決議(法⼈となる旨並びにその名称及び事務所を定める決議)
②その主たる事務所の所在地において登記をすること

※法人化することによって「〇〇マンション管理組合法人」などの団体名義で敷地内の付属施設等の区分所有者の共有不動産を登記することもできるようになります。

(区分所有法第3条)
区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を⾏うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。⼀部の区分所有者のみの共⽤に供されるべきことが明らかな共⽤部分(以下「⼀部共⽤部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。

称号(第47条2項)

区分所有法第47条2項では「前項の規定による法⼈は、管理組合法⼈と称する。」と定められています。

管理組合法人の登記(第47条3項)

区分所有法第47条3項では「この法律に規定するもののほか、管理組合法⼈の登記に関して必要な事項は、政令で定める。」と定められています。

政令とは「組合等登記令」のことです。
管理組合法人の設立の登記に関しては第2条で定められています。

第2条(設立の登記)
(第2条1項)
組合等の設立の登記は、その主たる事務所の所在地において、設立の認可、出資の払込みその他設立に必要な手続が終了した日から二週間以内にしなければならない。

(第2条2項)
前項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
一 目的及び業務
二 名称
三 事務所の所在場所
四 代表権を有する者の氏名、住所及び資格
五 存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由
六 別表の登記事項の欄に掲げる事項

※上記六の「別表の登記事項の欄に掲げる事項」は管理組合法人の場合は「共同代表の定めがあるときは、その定め」となります。

第三者への対抗(第47条4項)

区分所有法第47条4項では「管理組合法⼈に関して登記すべき事項は、登記した後でなければ、第三者に対抗することができない。」と定められています。

反対に管理組合法人の相手方から無効を主張し、理事個人に対して効果が及ぶことを主張することは管理組合法人の登記前でも可能となります。

管理組合法人の効力(第47条5項)

区分所有法第47条5項では「管理組合法⼈の成⽴前の集会の決議、規約及び管理者の職務の範囲内の⾏為は、管理組合法⼈につき効⼒を⽣ずる。」と定められています。

管理組合法人になる前の管理組合での集会の決議事項、規約及び管理者の職務範囲内の業務は、管理組合法人になっても引き継がれることになります。

区分所有者の代理(第47条6項)

区分所有法第47条6項では「管理組合法⼈は、その事務に関し、区分所有者を代理する。第⼗⼋条第四項(第⼆⼗⼀条において準⽤する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険⾦額並びに共⽤部分等について⽣じた損害賠償⾦及び不当利得による返還⾦の請求及び受領についても、同様とする。」と定められています。

管理組合法人の場合、区分所有者を代理するのは管理組合法人の理事ではなく管理組合法人」自体です。

(区分所有法第18条4項)
共⽤部分につき損害保険契約をすることは、共⽤部分の管理に関する事項とみなす。

(区分所有法第21条)
建物の敷地⼜は共⽤部分以外の附属施設(これらに関する権利を含む。)が区分所有者の共有に属する場合には、第⼗七条から第⼗九条までの規定は、その敷地⼜は附属施設に準⽤する。

代理権に加えた制限(第47条7項)

区分所有法第47条7項では「管理組合法⼈の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。」と定められています。

原告と被告(第47条8項)

区分所有法第47条8項では「管理組合法⼈は、規約⼜は集会の決議により、その事務(第六項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告⼜は被告となることができる。」と定められています。

原告と被告の通知(第47条9項)

区分所有法第47条9項では「管理組合法⼈は、前項の規約により原告⼜は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合においては、第三⼗五条第⼆項から第四項までの規定を準⽤する。」と定められています。

区分所有者に通知するのは、規約により原告又は被告となった場合のみで、集会の決議の場合には通知の必要はありません。

(区分所有法第35条2項)
専有部分が数⼈の共有に属するときは、前項の通知は、第四⼗条の規定により定められた議決権を⾏使すべき者(その者がないときは、共有者の⼀⼈)にすれば⾜りる。

(区分所有法第35条3項)
第⼀項の通知は、区分所有者が管理者に対して通知を受けるべき場所を通知したときはその場所に、これを通知しなかつたときは区分所有者の所有する専有部分が所在する場所にあててすれば⾜りる。この場合には、同項の通知は、通常それが到達すべき時に到達したものとみなす。

(区分所有法第35条4項)
4 建物内に住所を有する区分所有者⼜は前項の通知を受けるべき場所を通知しない区分所有者に対する第⼀項の通知は、規約に特別の定めがあるときは、建物内の⾒やすい場所に掲⽰してすることができる。この場合には、同項の通知は、その掲⽰をした時に到達したものとみなす。

破産法(第47条10項)

区分所有法第47条10項では「⼀般社団法⼈及び⼀般財団法⼈に関する法律(平成⼗⼋年法律第四⼗⼋号)第四条及び第七⼗⼋条の規定は管理組合法⼈に、破産法(平成⼗六年法律第七⼗五号)第⼗六条第⼆項の規定は存⽴中の管理組合法⼈に準⽤する。」と定められています。

【⼀般社団法⼈及び⼀般財団法⼈に関する法律】
第四条(住所)
一般社団法人及び一般財団法人の住所は、その主たる事務所の所在地にあるものとする。
第七十八条(代表者の行為についての損害賠償責任)
一般社団法人は、代表理事その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。

【破産法】
第十六条(法人の破産手続開始の原因)
(第十六条一項)
債務者が法人である場合に関する前条第一項の規定の適用については、同項中「支払不能」とあるのは、「支払不能又は債務超過(債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態をいう。)」とする。
(第十六条二項)
前項の規定は、存立中の合名会社及び合資会社には、適用しない。

管理者に関する規定の不適用(第47条11項)

区分所有法第47条11項では「第四節及び第三⼗三条第⼀項ただし書(第四⼗⼆条第五項及び第四⼗五条第四項において準⽤する場合を含む。)の規定は、管理組合法⼈には、適⽤しない。」と定められています。

(区分所有法第33条1項)
規約は、管理者が保管しなければならない。ただし、管理者がないときは、建物を使⽤している区分所有者⼜はその代理⼈で規約⼜は集会の決議で定めるものが保管しなければならない。

管理組合法人では管理所有はできません。

理事(第47条12項)

区分所有法第47条12項では「管理組合法⼈について、第三⼗三条第⼀項本⽂(第四⼗⼆条第五項及び第四⼗五条第四項において準⽤する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定を適⽤する場合には第三⼗三条第⼀項本⽂中「管理者が」とあるのは「理事が管理組合法⼈の事務所において」と、第三⼗四条第⼀項から第三項まで及び第五項、第三⼗五条第三項、第四⼗⼀条並びに第四⼗三条の規定を適⽤する場合にはこれらの規定中「管理者」とあるのは「理事」とする。」と定められています。

管理組合法人に区分所有者法上の管理者はいなくなるため、管理組合法人に適用するために管理者の条文内容を置き換える必要があるというわけです。

(区分所有法第33条1項)
規約は、管理者が保管しなければならない。ただし、管理者がないときは、建物を使⽤している区分所有者⼜はその代理⼈で規約⼜は集会の決議で定めるものが保管しなければならない。

(区分所有法第42条5項)
第三⼗三条の規定は、議事録について準⽤する。

(区分所有法第45条4項)
第三⼗三条の規定は、書⾯⼜は電磁的⽅法による決議に係る書⾯並びに第⼀項及び第⼆項の電磁的⽅法が⾏われる場合に当該電磁的⽅法により作成される電磁的記録について準⽤する。

(区分所有法第34条1項)
集会は、管理者が招集する。

(区分所有法第34条2項)
管理者は、少なくとも毎年⼀回集会を招集しなければならない。

(区分所有法第34条3項)
区分所有者の五分の⼀以上で議決権の五分の⼀以上を有するものは、管理者に対し、会議の⽬的たる事項を⽰して、集会の招集を請求することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。

(区分所有法第34条5項)
管理者がないときは、区分所有者の五分の⼀以上で議決権の五分の⼀以上を有するものは、集会を招集することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。

(区分所有法第35条3項)
第⼀項の通知は、区分所有者が管理者に対して通知を受けるべき場所を通知したときはその場所に、これを通知しなかつたときは区分所有者の所有する専有部分が所在する場所にあててすれば⾜りる。この場合には、同項の通知は、通常そ
れが到達すべき時に到達したものとみなす。

(区分所有法第41条)
集会においては、規約に別段の定めがある場合及び別段の決議をした場合を除いて、管理者⼜は集会を招集した区分所有者の⼀⼈が議⻑となる。

(区分所有法第43条)
管理者は、集会において、毎年⼀回⼀定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。

公益法人等(第47条13項)

区分所有法第47条13項では「管理組合法⼈は、法⼈税法(昭和四⼗年法律第三⼗四号)その他法⼈税に関する法令の規定の適⽤については、同法第⼆条第六号に規定する公益法⼈等とみなす。この場合において、同法第三⼗七条の規定を適⽤する場合には同条第四項中「公益法⼈等(」とあるのは「公益法⼈等(管理組合法⼈並びに」と、同法第六⼗六条の規定を適⽤する場合には同条第⼀項中「普通法⼈」とあるのは「普通法⼈(管理組合法⼈を含む。)」と、同条第⼆項中「除く」とあるのは「除くものとし、管理組合法⼈を含む」と、同条第三項中「公益法⼈等(」とあるのは「公益法⼈等(管理組合法⼈及び」とする。」と定められています。

公益法人とは「法人の形態の一。その目的が祭祀、宗教、慈善、学術、技芸、その他公益のみに存し営利に存しない法人をいう。設立に当たり、主務官庁の許可が必要とされることから、その利用が限定的である。」とされている。(大辞林より引用)

【法人税法】
(第⼆条第六号)
公益法人等 別表第二に掲げる法人をいう。

(第三⼗七条4項)
第一項の場合において、同項に規定する寄附金の額のうちに、公共法人、公益法人等(別表第二に掲げる一般社団法人、一般財団法人及び労働者協同組合を除く。以下この項及び次項において同じ。)その他特別の法律により設立された法人のうち、教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして政令で定めるものに対する当該法人の主たる目的である業務に関連する寄附金(出資に関する業務に充てられることが明らかなもの及び前項各号に規定する寄附金に該当するものを除く。)の額があるときは、当該寄附金の額の合計額(当該合計額が当該事業年度終了の時の資本金の額及び資本準備金の額の合計額若しくは出資金の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える場合には、当該計算した金額に相当する金額)は、第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入しない。ただし、公益法人等が支出した寄附金の額については、この限りでない。

(第六⼗六条1項)
内国法人である普通法人、一般社団法人等(別表第二に掲げる一般社団法人、一般財団法人及び労働者協同組合並びに公益社団法人及び公益財団法人をいう。次項及び第三項において同じ。)又は人格のない社団等に対して課する各事業年度の所得に対する法人税の額は、各事業年度の所得の金額に百分の二十三・二の税率を乗じて計算した金額とする。

(第六⼗六条2項)
前項の場合において、普通法人(通算法人を除く。)若しくは一般社団法人等のうち、各事業年度終了の時において資本金の額若しくは出資金の額が一億円以下であるもの若しくは資本若しくは出資を有しないもの又は人格のない社団等の各事業年度の所得の金額のうち年八百万円以下の金額については、同項の規定にかかわらず、百分の十九の税率による。

(第六⼗六条3項)
公益法人等(一般社団法人等を除く。)又は協同組合等に対して課する各事業年度の所得に対する法人税の額は、各事業年度の所得の金額に百分の十九の税率を乗じて計算した金額とする。

消費税法(第47条14項)

区分所有法第47条14項では「管理組合法⼈は、消費税法(昭和六⼗三年法律第百⼋号)その他消費税に関する法令の規定の適⽤については、同法別表第三に掲げる法⼈とみなす。」と定められています。

消費税法についてはこちら(e-Govポータル)

名称(第48条)

名称の決まり(第48条1項)

区分所有法第48条1項では「管理組合法⼈は、その名称中に管理組合法⼈という⽂字を⽤いなければならない。」と定められています。

名称使用の禁止(第48条2項)

区分所有法第48条2項では「管理組合法⼈でないものは、その名称中に管理組合法⼈という⽂字を⽤いてはならない。」と定められています。

管理組合を法人化した場合は必ず○○マンション管理組合法人という文字(管理組合法人)を使用し、反対に法人化していない場合は絶対に管理組合法人という名称を使用してはいけません。

財産⽬録及び区分所有者名簿(第48条の二)

財産⽬録(第48条の二1項)

区分所有法第48条の二1項では「管理組合法⼈は、設⽴の時及び毎年⼀⽉から三⽉までの間に財産⽬録を作成し、常にこれをその主たる事務所に備え置かなければならない。ただし、特に事業年度を設けるものは、設⽴の時及び毎事業年度の終了の時に財産⽬録を作成しなければならない。」と定められています。

区分所有者名簿(第48条の二2項)

区分所有法第48条の二2項では「管理組合法⼈は、区分所有者名簿を備え置き、区分所有者の変更があるごとに必要な変更を加えなければならない。」と定められています。

管理組合法人で備え置き、変更することを義務付けられているのは、居住者名簿ではなく区分所有者名簿です。

まとめ

本記事の区分所有法における管理組合法人の設立等についての記事はいかがでしたでしょうか。

管理組合法人の設立にはいろいろと手間がかかり、複雑でもあります。

また、本記事では詳しく記載していませんが法人税などの税金に関しても管理組合法人化することにより異なってきますので、もしもご自身の管理組合で法人化したいというような時にはメリット、デメリットをよく理解して検討することが大切です。

本記事も読んでいただきどうもありがとうございました。

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