マンションの管理人の仕事というと、会社を退職した高齢者がゆったりと働くというイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。
しかし、実際のマンション管理人の仕事はゆったりと仕事できるマンションもあれば、非常に忙しくて体力的にもきつい仕事をしなくてはいけないマンションもあります。
この違いの要因は様々ありますが、マンションの大きさやグレードなどによっても違いがでてきます。
また、実際に自身が管理人として働く場合の管理人の理想の仕事スタイル、管理人を雇用する建物管理会社(担当者)が管理人に対して求める理想の仕事スタイル、マンション居住者及び管理組合(理事会)が求める管理人の理想の仕事スタイルというのも違ってくるのです。
本記事では、立場によってどのように管理人に求める理想の仕事スタイルが異なるのかを理解することができます。
そして、管理人の理解を深めることにより、昨今での管理人のなり手不足に対応し、マンションの適切な日常管理につなけげることができるでしょう。
管理人自身が求める理想の仕事スタイルとは?
マンションの管理人として実際に働いている人は一昔前までは会社を退職した60代以上の方が多かったのですが、昨今では、日本政府主導で推進している会社の雇用延長の影響もあり、70代以上の方が主流になってきています。
私はこれまで現役で管理人として働いている100名以上の方とマンションの現場で直接に接してきています。
そして、非常にありがたいことにその管理人の方達から様々なプライベートも交えた貴重なお話しをして頂き、多くの管理人の方達がどのような思いで管理人の仕事をしているのかも理解できるようにもなりました。
多くの管理人の方たちは学生や主婦などのアルバイト、パートとは異なり金銭を得ることを第1の目的として働くと言っていた方は意外と少なかったです。
私がお会いした70代の管理人の方の中に「5年間ほど管理人をしているが自分の管理人としての時給がいくらなのかも、給与明細すらみたことがない」という話をされていた方がおり、非常に驚いたのを覚えています。
その方は退職前の仕事は世界を飛び回っていて上場会社の役員まで務められていたとのことで、老後の生活資金には困っていなかったため管理人としての賃金には全く興味はなく、健康と社会交流のために自分のペースで仕事ができる管理人の仕事をしているのだとお話しされていました。
その他の管理人の方たちの中にも退職前は大企業で役員まで務められた方や世界中を飛び回っていたという方が複数人いました。
そのような方たちも家にいるだけでは不健康なので、健康と社会との接点を持つためにゆったりと管理人の仕事をしているとおっしゃっていたのも印象的でした。
また、管理人の方の中には、ゆったりというよりも社会貢献の一環の位置づけで管理人の仕事をしているという方もおられました。
そのような管理人の方たちは雇用主である建物管理会社やそのマンションの居住者、管理組合の理事など、誰からもお願いされたわけでもないにも関わらず、そのマンションを良くしていきたい、居住者の方達のお役に立ちたいと思い、積極的にマンション内の改善活動をしていました。
例えば、回収業者が回収してくれない大きな不燃ゴミがゴミ庫内に放置されていた場合には、管理人自らが不燃ゴミの解体作業をして回収業者が回収してくれる大きさまで解体する。
居住者がルールを守らない場合には自ら貼り紙を作って注意書面を掲示したり、居住者に直接注意をする。
または、居住者が快適に暮らせるような備品の購入や、マンションの管理運用に関わる改善などを建物管理会社の担当者に積極的に提案するようなこともされているともお聞きしました。
前述したようにマンション管理人として働く人は60代、70代の方で会社員の頃には大企業の管理職や役員を務められた方たちも多くいらっしゃいました。
そのため、企業の経営者側の目線でマンションの管理人も業務遂行するべきだと考え、言われなくても積極的に自分が良いと思ったことは進言して改善していくことが正しい働き方だと思っている方たちも多いのではないかと思いました。
そのような管理人の方たちから見れば雇用主の建物管理会社の上司は自分から見れば子供や孫と同じぐらいの年齢の人たちも多く、指示されるようなことを快く思えないし、指示されても素直には従いたくないというのが本音かもしれません。
むしろ自分の今までの経験を活かして建物管理会社の担当者である上司に仕事のやり方を教えていきたいとまで思っているように私は管理人の方たちと接していて度々感じました。
これまでお話ししてきた管理人の方たちとは逆に、後ろ向きな理由で管理人の仕事をしているという方にも出会ったことがあります。
それは、家で奥さんと一緒にいると険悪な雰囲気だったり、喧嘩になったりしてしまって家に居づらいという理由で管理人の仕事をしていたという方です。
そのような方たちの話をお聴きすると、何十年一緒に暮らしていても夫婦とは難しいものなんだとしみじみ感じたものです。
特に仕事人間だった旦那が定年退職を機に妻といつも家に一緒にいることは、夫婦両者にとって受け入れがたい状態なのではないのでしょうか。
このように管理人自身が理想とする仕事のスタイルは、お金が第1の目的ではなく、健康、社会交流、社会貢献(マンションの居住者の方たちのお役に立つ)、家に居づらいと言った一人ひとり目的が違い、自身のスタイル(目的)に合わせて働けることだと言えるのではないかと思います。
建物管理会社が求める管理人の仕事スタイルとは?
マンションの管理組合と管理委託契約を締結して管理人を各マンションに勤務させる建物管理会社の担当者は、その管理組合の管理業務や理事、居住者などからのクレームや要望に対して日々格闘しています。
それらクレームの中に管理人に対するクレームがあると、当然に建物管理会社担当者の業務が更に増えていくことになり、担当者は頭を抱えてしまいます。
そのため、建物管理会社の担当者は管理人に対しては、くれぐれもマンション内で問題を起こして居住者や理事などからクレームがこないようにと日々願っています。
また、クレームではなく、管理人発信のマンション内の改善提案なども居住者や理事に対しての建前上はともかく、本音では望んでいないことが多いのが実状かもしれません。
前章の管理人自身が理想とする仕事スタイルであげましたが、誰からもお願いされたわけでもないのにマンションの改善活動を積極的に実施していきたいと考える管理人の方たちが一定数いて、建物管理会社の担当者へ改善提案することを度々聞きました。
管理人は建物管理会社の担当者や居住者の方たち以上にそのマンションの管理状態をよく知っていると言っても過言ではありません。
居住者や管理組合の理事たちから見ればそれは非常にありがたいことですが、建物管理会社の担当者にとっては、正直ありがた迷惑と思ってしまうことも多いでしょう。
前述したように建物管理会社の担当者は日々の業務に奮闘しており、それだけでも時間が足りず、業務が全く回らない人も多いのです。
そのため、プラスアルファの提案などしたくないと思ってしまう担当者が多くなってしまうのは必然かもしれません。
したがって、建物管理会社の担当者が理想とする管理人の仕事スタイルは、決められたことを決められた通りにだけやってくれる人。それ以下でもそれ以上でもない人。という少し寂しい理想像となるのではないでしょうか。
居住者・管理組合員(理事)が求める管理人の仕事スタイルとは?
マンションの居住者や管理組合の理事、特に居住者の方たちは管理人にはとにかく快適に暮らせるマンションにして欲しいと思っています。
具体的には、館内外全て目につくところは徹底的に綺麗にして欲しい。
特にゴミ庫内などは常に清潔に整理していてもらいたく、分別されていないゴミや粗大ゴミの放置などがあると管理人に分別などして対応して欲しいとも思っています。
また、メールBOXへのチラシ配布者や不審者などへの注意などマンションの安全を常に保ってもらいたいとも思う居住者も多いでしょう。
そして、マンションをより良くするための改善活動なども積極的に建物管理会社の担当者と連携してやって欲しいとも思いますし、各居住者の騒音トラブル、共用廊下への私物放置、居住者間のトラブルなども管理人に報告相談して本人に注意して欲しいとさえ言ってくるような居住者の方たちもいます。
私も実際に管理人をしていて、居住者の方から相談を受けたこともあります。
しかし、管理人は決して居住者間のトラブルに関与するようなことをしてはいけません。
話は聴いても、その居住者の方へ肩入れはせずに常に居住者の皆さんに対して中立でなければならず、答えを出してはいけません。
鉄板のトークは「建物管理会社の担当に報告しておきます!」です。
理事の中にも管理人に対して居住者の方たちと同じように求めるような方たちが多くいらっしゃいます。
しかし、理事の方たちは管理人の業務範囲と範囲外をしっかりと把握して、ルールが守れない居住者がいる場合には、理事会として建物管理会社の担当者と連携して対応することが必要です。
したがって、多くの居住者・管理組合員(理事)が理想とする管理人の仕事スタイルは、とにかくマンションで快適に暮らせるように館内外を清潔に保ち、安全を確保し、居住者間のトラブルも解決して、マンションをより良くするための改善活動を建物管理会社の担当者と連携してやってくれる人。というスーパーマン的な管理人ということになるのではないでしょうか。
まとめ
それでは、本記事のポイントを簡単にまとめます。
健康、社会交流、社会貢献(マンションの居住者の方達のお役に立つ)、家に居づらいなど、一人ひとり目的の違う自分のスタイルに合わせて働けること
決められたことを決められた通りにだけやってくれる人。それ以下でもそれ以上でもない人
とにかくマンションで快適に暮らせるように館内外を清潔に保ち、安全を確保し、居住者間のトラブルも解決して、マンションをより良くするための改善活動を建物管理会社の担当者と連携してやってくれる人
本記事も読んでいただき、どうもありがとうございました。